注1)       資生堂の岩田喜美枝氏を塾長とする民間大手企業30数社の自発的組織で,2005-2008年の3年間活動した。

注2)     脇坂(2008)によると,使用した設問は,「これまであなた,あるいはあなたの周囲の方が育児・介護休業制度を利用したことがありますか」であり,厳密にいえば,職場のまわりのかぎらず,それ以外の知り合いなどの利用者を念頭においた回答を含んでいる可能性がある。本論文で使用するデータでは,「職場のまわり」に限られている。

注3)       男性の育児休業利用者21名の特徴をみる。公務員は2名であとは民間正社員であるが,製造業に8名で,あとは様々な業種,10300名企業に10名と多い。専門技術職が10名,学歴は大卒以上が12名ともっとも多いが,全体の分布とそれほど変わらない。配偶者(事実婚含む)のいない男性が4名いる。残り17名のうち妻が育児休業取得経験ある夫が8名,そうでない夫が9名である。妻が同じ会社(官公庁)の正社員のものが5名,別の会社の正社員4名,パート・アルバイト5名,無業2名である。育児休業取得経験のない,妻の就業状態は様々である。

注4)       アンケートでは週労働時間(残業含む)を尋ねたのだが,「1日の労働時間」を記入した回答が少なからずみられた。WEB調査のレイアウトと質問文に問題があったと思われる。男性正社員のなかの23.9%(女性正社員の32.3%)が週15時間未満の選択肢に回答している。ちなみに,これらを除くと,平均49.3時間(N1231 ,標準偏差 11,2時間)である。ゆえに本稿では労働時間のデータを使用しない。なお,この時間は5時間刻みの選択肢から選ぶが,中位値をとって算出した。

注5)       年収の係数の値(符号)と有意性をみると,すべて年収は1%水準で正で有意である。年齢については,ほとんどが負で有意である。

注6)       このほか,本文の表6にある年休の取りやすさなどの項目について,順序プロビット分析をすると,本人利用ダミーはすべて正で有意である。

注7)       このほか,本文の表6にある年休の取りやすさなどの項目について,順序プロビット分析をすると,まわり利用ダミーはすべて正で1%水準で有意である。

注8)       日本労働研究機構が2003年に企画した調査(育児個人調査;民間企業雇用者で「末子が未就学の雇用者男女」2047名への電子メール調査。有効回答が男性1042,女性1005)の結果は,選好が確定的でないことを示唆している。この調査で「仕事と子供の関係」でいくつかの選択肢から重複回答で該当するものを選ばせているが,そのなかで「子育ての経験が仕事に役立つことがある」としたものが,男性の25.0%,女性の27.7%が選択している。また「仕事の経験が子育てに役立つことがある」との回答が,男性の13.6%,女性の20.2%ある。「仕事→子育て」と「子育て→仕事」の双方の影響が少なからずある。いわゆるWLBの「ウィン-ウィン」関係である。

注9)       本稿で男性正社員についておこなった分析を,おなじように女性について5つのタイプで行った。仕事の感想については,やはり育児休業利用者がすべての項目においてトップである。ところが「まわりあり」は,ほとんどの項目で平均なみである。私生活については,「社外の人脈」と「地域活動」についてはトップであるが,「スポーツ」と「趣味」については平均を下回る。

注10)     育児休業取得に対する所得は,雇用保険制度の枠組みのなかの育児給付制度として40%保障される。内訳としては,育児休業中が30%(育児休業基本給付金),職場復帰後6ケ月間継続就業することで10%(育児休業者職場復帰給付金)である。平成1941日の改正雇用保険法施行により,期限付きで保障割合が50%に引き上げられている。平成19331日以降に職場復帰した人から平成22331日までに育児休業基本給付金に係る育児休業を開始した人に,休業前賃金の30%(育児休業基本給付金),職場復帰後に6か月以上雇われた場合,20%(育児休業者職場復帰給付金)を加算する。この10%上乗せは当初平成22331日までの予定であったが,当分の間延長されることが決定している。また,育児休業中は社会保険料の支払いが免除されるため,実質62%が保障される計算になる。なお平成2241日より,育児休業基本給付金と育児休業者職場復帰給付金は統合され,育児休業者職場復帰給付金が廃止される予定である。

注11)     9節における調査の整理は,増田(2010)によっている。

注12)     使用データの調査では育児休業の利用期間を尋ねていないが,9節でみた2つの調査からの推測である。