* 学習院大学経済学部教授。Information Networks and Financial
Intermediation ~ A Survey and Critical Comments (II). 内容などの連絡先:〒171-8588豊島区目白1−5−1学習院大学経済学部、TEL(DI): 03-5992-4382、FAX: 03-5992-1007、E-mail: Kenichi.Tatsumi @gakushuin.ac.jp
10) クロッシング・ネットワークの参考文献としては、小川(2007)だけを挙げておく。
11) クールノー市場とは寡占市場の一つのタイプであり、各企業が他企業の産出量を所与として、自己の利潤を最大化するようにその産出量を決定する。最大利潤は、限界収入と限界費用が等しく、前者の増加率が後者のそれより小さいときに達成される。すべての企業にとってこの条件が満たされたとき、ゲーム理論における非協力ゲームのナッシュ均衡の概念にも属し、市場はクールノー-ナッシュ均衡(Cournot-Nash
equilibrium)にあるという。クールノー-ナッシュ均衡解は競争解と独占解の中間になり、n企業へ拡張すれば競争解に収束する、という特徴がある。
12) 米国では、タイムシェア (timeshare)が売買され、持ち主の権利が法律で保全されている。タイムシェアとは、時分割とも訳されるが、リゾートマンションなどを所有または利用する際に、その期間の経費だけを負担する、バケーション•オーナーシップとも呼ばれるシステムである。1960年代の欧州のスキーリゾートが発祥地で、フランスのアルプス地方でスキーリゾートホテルの経営者が「部屋を借りるには及ばず。ホテルを買うべし」というキャッチフレーズで売り出したのがタイムシェアの始まりであると言われる。このシステムが1970年代に米国にわたり、盛んになった。当初は法的な規制が無く、開発業者(販売業者)が顧客から販売代金を回収したまま倒産するという事例もあった。その後フロリダ州などではタイムシェア法という州法によって規制されるようになり、買主の権利が法的に守られるようになった。(インターネット解説などを参照)
13) ビトナー(2008)がモーゲージ・ブローカーの姿と制度・規制を詳しく記述している。
14) 米国では、融資金額確定のために住宅建設の詳細な把握が必要になる請負住宅建設物件ではなく、必要融資額が比較的容易に特定できる分譲住宅や中古住宅の売買を中心にして、独立系モーゲージ・ブローカーが参入している。
米国では、信用力やクレジット•ヒストリーによってローン金利が変動する程度が、日本と違い、大きい。それもあってローン申請者は、ブローカーを通じてクロージングの1週間前までに自分の金利を確定する必要がある。また、ローンの審査基準は厳しいものからほぼ審査不要なものまで多種多様なため、モーゲージ・ブローカーは顧客のニーズを把握しながら電子取引ネットワークを活用して、どのプログラムを適用するか迅速に判断している。こうした行為や迅速な商品紹介が、モーゲージ・ブローカーの存在意義を高めている、といわれる。
日本にモーゲージ・ブローカーを導入できる可能性を探った、国土交通省「不動産流通業務のあり方研究会とりまとめ」総合政策局、平成15年3月31日では以上のような日米比較分析をおこなっている。
銀行にとっては、融資の営業活動をモーゲージ・ブローカーにいわばアウトソーシングしており、利益・費用面でもメリットがある、という点は銀行サイドから重要であろう。
15) 日本の金融機関などでは、「金融仲介機能の拡充」という言葉が使われることがあるが、これは単に証券業務ではなく銀行業務にリソ−スを向けるということに過ぎない。
16) そもそも、経済政策の資金源は税金と国債(これは将来の税金)で、地域間世代間あるいは企業部門と家計部門間の、業種間さらには企業間の単なる資金分配の変更に過ぎない。それゆえ、特に大きく、特に即効的な効果を期待できないように思える。これが新古典派的な捉え方である。
VCより小規模な存在にエンジェルがあり、エンジェルを優遇するエンジェル税制と呼ばれる仕組みがある。しかしながら、税制優遇額は少額すぎる。それ以外に多くの限界がある。例えば、その投資対象は資本金3億円未満ベンチャーに限られるが、バイオベンチャーはこの資本金基準をはるかに超える規模になるのが普通になっている。
17) 全貌を知るために複数の公開資料に基づき詳しく内容を紹介しておこう。出資できる金額は5万円から2000万円である。希望する投資金利は年率4%から15%の間で1%刻みで指定できる。借り手の信用リスク指標をみて、同時にどの程度リスクのある相手に貸したいか提示する。その後社内システムが、貸し手の提示した金利と信用リスクを組み合わせ、妥当な借り手を選ぶ。
借り手として利用する場合、審査を経たうえで、10万円から300万円の範囲で資金を調達できる。借入金利は実質年率6.03%から17.95%、借入期間は36ヵ月で、返済方法は固定金利の分割返済型である。取引の安全性を確保するため、借入枠の範囲内で自由に利用できるリボルビング型のカードローンは採用していない。
運営会社のExCoが、本人確認、信用調査、資金の受け渡し、債権管理・回収を一貫して手がける。同社は貸し手から営業者報酬を、借り手から融資手数料を受け取って収益を上げる。具体的には貸し手から毎月の約定返済前の貸付金残高の0.125%に相当する金額を月ごとに受け取るほか、借り手から借入金額の3%相当額を借り入れ実行時に受け取る(http://www.exchange.co.jp/)。
ソーシャル・レンディングは2005年に英国で始まって以来、個人間融資に関しては(2009年時点で)世界約20ヵ国でサービスが提供されており実行額は約400億円である、との報道がなされている。米国では2006年からプロスパー・マーケットプレイス社が「プロスパー」というサイトを運営している。日本でも2007年には、SBIホールディングスがこのプロスパーと提携しSBIプロスパーを設立した。他に、maneoもサイトの運営に名乗りを挙げた。事業開始には金融庁の許可が必要である。
18) ページランク、ハブ度とオーソリティー度を手短かに解説すると次のようになる。
ページランク(PageRank)とは、ホームページの価値の指標であり、ウェブ上にあるPageの重要度を示す最低が0で、最大が10の数値でグーグル社の商標(PageRankTM)でもある。被リンク数が多いほどページランクの上昇に貢献する。ここで被リンクとは、他のサイトから自分のサイトに対して張られるリンクのことで、バックリンクとも呼ばれる。
多くのページからリンクが張られていれば評価は高くなる。また、単に被リンク数の多寡のみではなく評価の高いページからのリンクは高く評価する。同時に、総リンク数が少ないページからのリンクは高く評価し、総リンク数が多いページからのリンクは低く評価する。
Kleinberg(1999)はWeb上のページの質を計る基準としてハブ度、オーソリティー度という尺度を定義した。ハブ度が高いということは質(オーソリティー度)の高いページを数多くリンクしていることになり、それだけ質の高い中心となるページであることをあらわす。同様に、オーソリティー度が高いということは中心としての質(ハブ度)の高いページから多くリンクされていることを表し、より権威あるページであることを表すのである。具体的には、ハブ度はそのノードがリンクしているノードのオーソリティー度の合計であり、オーソリティー度はそのページをリンクしているノードのハブ度の合計である
その後の一般のネットワークに適用可能な概念の開発と分析は、ページランクを拡張ないし修正する方向とその他の方向に分けて考えられる。