53頁】

 

新製品開発の成功と失敗

 

河野 豊弘
(学習院大学名誉教授)

 

 

新製品開発をそれによる製品構成の変化は企業の業績に大きな影響を与える。新製品の開発に成功・失敗の条件は何かを研究する。実態調査とケースによってモデルを検證する。

キーワード:新製品の種類,製品構成,成功要因,失敗要因,後発的新製品

 

 

 T 新製品の概念と重要性
 U 製品構成変化のインパクト
 V 成功する新製品の調査
 W 新製品開発の3つのプロセス
 X 後発的新製品の開発
 参考文献

 

T 新製品の概念と重要性

 

新製品は自社の製品群に新たに加えられた製品である。例えば写真フィルムの生産会社にとってデジタルカメラの生産・販売は新製品である。新製品の開発は企業の売上と利益の成長にとって不可欠の戦略である。時には企業に巨大な利益をもたらす。例えばエーザイの認知症治療薬「アリセプト」(実は認知症の進行を遅らせる)は年間1,000億円以上の売上を会社にもたらした。
 新製品には次のような種類のものがある。これら6種類の製品はすべて新製品である。

 

54 頁】

現在すでに多角化していれば大部分の製品は追加製品に入ってしまう。
 やや古いがカメラとフィルムの会社にとっての新製品の実例を示せば,次のような例があげられる。

 

@ 新製品とは自社の売上高に加えた新しいブランド名または新しい品目を持つ製品であり,簡単な改良品は除く。

A 新製品は既存製品のライフサイクルを延長,または異なるライフサイクルのものである。

B 創造的製品だけでなく,追随的製品も自社にとっては新製品である。

 

U 製品構成変化のインパクト

 

新製品の自社開発ではないが買収と売却とによって製品構成を大きく変えた例としてICI のケースがあげられる。

 

ICI(Imperial Chemical Industries)はコートールズなどと並んでイギリスを代表する優良企業であった。ICI は1926年4つの化学会社が合併して誕生した。そしてDuPont, IG Farben などと並ぶ大企業となり,以後英国の最強の企業,代表的企業となった。そして1992年には売上高120,100百万ポンド,利益565百万ポンドを得ていた。しかし1992年ごろより重化学部門の売却,ニッチ製品の買収などにより,2002年には製品構成をすっかり変えてしまった。
 先ずテトロンなどの繊維部門を売却し(UCB に),次いで最も利益の上がる薬品をスウェー 55 頁】 デンの会社に売却し,それはAstra Zeneca 社となり,世界有数の薬品会社となる。次いで2002年ごろまでに農薬,一般化学品,有機化学品,石油化学品,プラスチック部門などを売却し,代って化粧品などの家庭用品,食用油,澱粉,接着剤,香料などのニッチ製品を買収により製品構成とするに至った。株主報告書(annual report)も表面に大きく女性の顔をあげるようになった。
 そして2009年の現在ICI という会社は存在していない。それぞれの部門は売却されてしまった。何故ICI は消滅したのか。ICI は製品構成を第2表のように変えていった。先ずもっとも利益のあがる薬品部門をスウェーデンの薬品会社に売ってしまった。これはAstra Zeneca 社となり,世界有数の薬品会社となった。

 何故もっとも利益の得られる薬品部門を売ったのか。それは株主の短期的利益への圧力である。利益のある部門を売ることによって株価が上がる。次に何故テトロンや石油化学部門を売って澱粉や香料のようなニッチ製品を買収によって製品構成としたのであるか。それもやはり短期利益を追求する株主の圧力であったと考えられる。
 次に何故ICI のニッチ製品への切り換えは企業の存続に貢献しなかったのか。それはこれらのニッチ製品の競争力の基礎となる体質資源が無かったからである。これらは技術集約的製品ではなく,ブランド力,コスト競争力が問題となる製品であり,また差別化の困難な製品であった。これに対して,石油化学製品を温存する三菱化学(三菱ケミカルホルディングスの2009年の売上高は3.1兆円,営業利益1,200億円,研究開発費は1,100億円)やデュポンは研究開発を重視して,競争力を強め,成長を続けている。

 

V 成功する新製品

 

成功する新製品は一般的に「驚きと感動を与える製品」又は「やさしく(環境に),うれしい製品」であると言われている。即ち,今迄無かったもの,消費者の要求と強く合致するものである。具体例をあげれば,古くは「おしん」(NHK 番組,視聴率52%),ウォークマン,カシオミニ(計算機),ホカロン(使いすてカイロ,鉄粉と触媒による酸化による)。また最近ではトヨタのプリウス,ホンダのフィット,サムソンの携帯電話などがあげられる。新製品の成功要因を調査した。次はその調査結果である。

56 頁】

 

第3表調査によれば,新製品の成功のためには先ず経営戦略が正しく設定され,将来のニーズと自社の能力の適合する経営戦略,とくに製品構成についての戦略が設定される必要がある。このためにはトップの支持や推選が欠かせない。また特定の製品を推選するプロダクトチャンピオンの居ることが望ましい。プロダクトチャンピオンとはトップに近いランクの人で新製品の開発を推進する人である。新製品開発によって,自己の能力の価値が低下する人や配分が変わることにも抵抗する。新製品を買うと考えられる購買層は誰か,それがどのように反応するかを調査する。
 リニア・モデルで発売すると成功は不確実である。リニア・モデルとは発想→生産→販売というモデルである。
 自社の能力に適合した製品,研究開発,生産,販売の能力に合った製品であることが必要である。前述のICI のケースはこれが重要であることを示す。
 次に製品の差別化を行い,特色をもつことが必要である。これらの製品を生み出すためには自社の研究開発能力,生産技術,マーケティングの能力の高いことが必要である。これらの問題について以下に研究する。

 

W 3つの開発プロセス

 

新製品開発には3つのやや異なった開発プロセスのモデルがある。@技術集約的製品,たとえば複写機や医薬品では技術的なテストが重要である。Aマーケティング集約的製品,たとえば化粧品やマヨネーズでは市場テストが重要である。B試行錯誤型の製品,たとえばファッション衣料品では市場のフィードバックによって製品を変えつつ最適製品を見つけることが可能である。 

 

(A)技術集約的な新製品開発のプロセス

このモデルの新製品開発に成功したケースとして,キャノンの小型複写機PC10,PC20の開発のプロセスを第4表に示す。

 

開発方針

キャノンの小型複写機PC10,PC20は1982年に発売され,世界で最も売れた複写機であった。 57 頁】 キャノンでは長期計画の審議のプロセスで,「大型のカメラの一種」である複写機は1965年より発売し,1979年にはすでに売上高の35%を占めていた。さらに1980年ごろ,小型複写機に進出することが方針として決定された。

 

 

この新製品開発に成功した諸要因は次の諸点である。

 ・開発部門と生産部門との協力がよかった。

 ・若い技術者がたくさんのアイデアを出し,それらが取り入れられた。

 ・プロダクトチャンピオンの田中ひろし複写機開発部長が,トップと若い技術者とのコミュニケーションを容易にした。

 ・594の特許を得るほどに独創的な研究を行った。

 ・開発チームの熱意によって3年で完成した。

58 頁】

 

(B)マーケティング集約的な新製品開発のプロセス

食品,化粧品,衣料品などのマーケティング集約的商品では,狭義の機能よりも感覚的満足やその製品の持つ社会的意味のほうが大切であり,味,色,香り,デザイン,包装,ネーミングなどの商品化が重要になってくる。また耐久消費財でも,ライフサイクルの成長後期や成熟期になるとそれらの商品化が重要になってくる。自動車,カメラ,テレビなどは基本的な性能のほかに,スタイル,大きさ,色など狭義のデザイン,すなわち商品化が重要になってくる。
 商品化において基本的な原理は,競争相手との差別化と市場細分化である。とくに大衆の時 59 頁】 代から分衆の時代となり,年齢ごとに要求が異なり(たとえば若者は味噌汁よりもコーヒー),または使用状況ごとに要求が異なる(たとえば職場で着る服と,日曜日に着る服と異なる)ときには市場細分化が重要になり,ニッチの探索が可能になる。
 商品化の過程での成功の要件は,仮説を立てて,それをテストしながら,ねらった市場に適する製品を開発することである。それはテストの連続である。

 

(C)試行錯誤的新製品の開発

新製品開発には,ファッション衣料のように需要予測が困難でしかも開発費用が比較的少なく,しかし売れ残りの損失が大きい製品では,試行錯誤的な開発モデルが適する。その具体的な例として,F社の例をあげる。同社はこれまで黒色を多く使ったボーイッシュな婦人衣料で成功してきた。他の大手メーカーがパリやローマでの流行を意識して10か月近く前からデザインと生産準備を開始し,結局は売れ残り品を安売りして処分するのに対して,同社はシーズンの1〜2か月前に予測して開発,生産し,それを売り出し,売れればすぐに増産し,売れなければまた情報を集め,新しいコンセプトを形成して,デザインし,生産・発売する。
 生産部門は持たないが,協力工場は必要ならば24時間操業して10日以内に納入する体制をとっている。約220の直売店と多くのデパートに販売コーナーを持っており,流通経路も短い。このような受注生産に近い形をとっているために,製品の約75%は定価で売れる。床面積当たりの売上高も大きく製品の回転も速いので,百貨店も喜んで売り場を提供している。
 このような短いサイクルタイムによる生産は,開発に長期間と大きく支出を伴うハイテク製品には難しい。しかし開発の初期には似たプロセスをもっている。

 

X 後発的新製品の開発の成功条件

 

2番手で参入する新製品の場合には(1)差別化と(2)細分化と(3)コスト競争力とで既存製品に対する優位性をもち,又は正面からの競争を回避する必要がある。

 

1.差別化

(1.1)宅急便のケース

クロネコヤマトの宅急便(ヤマト・ホールディングス 2010年の売上高1.2兆円,営業利益680億円)がその例に当たる。かつて小包郵便は,郵便局(郵政公社)の独占であった。然し現ヤマトは郵便サービスとの差別化によって成功した。即ち,小包は「(郵便局に)持ってこい」から取りに行く,「紐でしばること」から袋でもよい,「9時から5時まで」から24時間受付(コンビニエンスストアの利用)などによる差別化によって成功した。同社はまた自動車運転手にも複合的サービスを行わせている。例えば荷物の収集や代金の受け取りなど。そして従業員の教育をよく行っている。また情報システムも充実しており,ある荷物が今どこにあるかも判るシステムとなっている。

 

(1.2)ホンダのハイブリッド・カー“インサイト”のケース

自動車業界にとって最大の問題は石油資源の枯渇と環境問題とである。これに対応するために考えられているのは,(1)長期的には電気自動車または燃料電池車であり,(2)これに至 60 頁】 る中間的プロセスとしてジーゼル車(排気を改良したもの)又はハイブリッド車とである。ハイブリッド車は電池の研究にもなるという意味で電気自動車の開発を助ける。ハイブリッド車で先行したのはトヨタのプリウスである。プリウスは2007年に300万円で売り出されたが,1週間で11万台売れた。トヨタはこれによってハイブリッド車の世界のリーダーとなった。
 ホンダは2年遅れて追随し,2009年2月にハイブリッド車“インサイト”を発売し,1か月18,000台を売る成功製品となった。後発の自動車として成功するためには(1)性能がすぐれていること,(2)コスト即ち価格が相対的に低いことが求められる。このために次のような方針をたてた。(1)1リットル当り走行距離は30km 以上とすること(普通車はせいぜい1リットル当り10km である)。(2)ハイブリッド車であることがすぐわかるようなデザインとすること。(3)コストを下げるために,フィットなどの量産車の部品を徹底的に使うこと。(4)年産20万台以上を目指すことなどを決めた。開発のために要素技術の専門家30人を集めて開発チームが組まれた。ホンダの場合にはいつも開発チームは開発・生産・営業からのメンバー(DPS)による。ハイブリッドエンジンには4つの類型がある。

 @ シリーズ方式…エンジン→バッテリー→モーター→車輪。直線的なモデルである。

 A マイクロ式。ブレーキをかける代わりに発電機を使う。

 B パラレル式。エンジンとモーターとを適宜使い分ける。ホンダのインサイトに採用された。

 C シリーズ・パラレル式。エンジンとモーターとを最適の動力利用となるように配分する。プリウスに採用されている。最も燃料効率がよいが高価につく。

ホンダのハイブリッド車には前記のようにパラレル式が採用された。これはコストと重量を 考慮した上での決定であった。
 燃料の効率を上げ,1リットル当りの走行距離をのばすためには

(1)車体を軽くする。

(2)空気抵抗を減少させる。

同時に乗り心地をよくするためには,

(1)社内の空間が広く,快適であること。

(2)エンジンその他の音が静かであること。

(3)路面からの突き上げを吸収して音や振動を吸収していること。

などが必要である。ここで相互の対立要因を解決する必要がある。
 車体が小さい vs 室内が快適,
 流線型で屋根が低い vs 室内を広く,
 軽くするためにアルミニュームやプラスチックを使う vs 安くつくる,
 車体が小さく軽い vs スムースな乗り心地
 先ず車体が小さく,屋根が低いために室内が狭く快適でなくなることに対しては,せいぜいダッシュボードを美しく,メーターも美しいものとするように工夫した。次に乗り心地をよくするために次のような工夫をした。

(1)後方のサスペンションの上に38kg のエンジン・モーター,蓄電池などが乗るために,S字カーブなどを走る時に後部が左右にゆれる。この問題に対しては,後部の剛性を少し上げて,変形を少なくし,サスペンションが正確に作動するようにした。これによって走り心地がよくなった。

61 頁】

(2)防音のために,ガラスに防音性のあるガラスを用い,また屋根も防音性のある材料を使うようにした。後部の荷物室が狭く,例えば釣竿が入らないので,内部の板を外側にえぐるようなプレスをした材料を使った。

次に燃料効率をよくするために,エアコンの効率を上げる。このために,外気をとりいれ内気循環をよくする。燃料の消費量を減少させるために,加速時に過剰にならないようにコントロールするエコモードを設定する。
 かくしてインサイト1号車は2009年1月に1号車が完成し,189万円で売り出された。そして発売後1か月で18,000台売れた。
 インサイト発売後,トヨタのプリウスもこれに対抗して,数十万円の値下げをし,上級装備車でも200万円をきる価格をつけてこれに対抗した。
 以上のケースは後発新製品として先行製品に対して差別化によって成功したケースと言える。即ち価格による差別(やや安い),スタイルによる差別(小型車),性能による差別(1リットル30km)で成功したケースと言える。日産自動車はむしろ電気自動車を目指している。しかしどこにでも行ける(ガソリンスタンドがあれば)というガソリン・エンジンやジーゼルエンジンと同様の優位性をもつハイブリッドエンジンはブルドーザーなどの建設機械にも使われ始めている(小松製作所のケース。このケースは筆者の観察と井元康一郎“プリウスvs インサイト”,2009年,小学館による)。

 

3.細分化―三菱重工の小型旅客機MRJ の計画のケース

飛行機については,アメリカのボーイング,ヨーロッパのエアバスが世界の大型飛行機の市場を2分しており,また中型機についてはカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエル社とが市場を2分している。ボンバルディアの競争力の源泉は次の通りである(筆者は同社を訪問調査した)。(1)同社はかつてスノーボートの生産から始め,次いで鉄道車両の生産を行い,車両についての基礎的技術を保有していた。次いで飛行機の設計と生産と実験の技術と設備とを開発して飛行機に参入したが,別にカナダの先行飛行機会社を買収して能力の吸収をも行った。(2)自社ですべての生産を行うよりも提携を利用する。同社はジェット・エンジンはGE から調達し,胴体は三菱重工に生産を委託している。これによって能力の拡大をはかっている。(3)世界各地に操縦士の訓練センターと,飛行機の修理,保守のセンターとを持っている。三菱重工が中小旅客機に参入するとすれば,このような要件を満たす必要がある。(航空機の需要,とくに中距離の地域間飛行機の需要は高まっており,座席数60〜100の小型機の需要は今後20年間で5,000機を超えると予想されている)。

(補論)差別化の他のケース―LG エレクトロニクスのチョコレート・フォーンのケース

 チョコレート・フォーンとは韓国のLGElectrics 社(韓国の白物家電のメーカー,中国,インドで高い占有率をもつ)から発売された小型の携帯電話である。この電話機(以降,ケータイと称する)は小型で愛らしく,2005に売り出されたが,2008年には世界中での売上高の累計は16百万台に達するヒット製品となった。
 製品コンセプトをカスタマーのニーズに合わせた新製品開発には,(1)消費者の表現されたニーズに合わせるアプローチと,(2)潜在的なニーズ(latent needs)を探索してそれに合 62 頁】 わせるアプローチとがある。このケースは後者のアプローチであり,このためにチームにデザイナーを加え,市場調査を行った。この結果,外観や外形(大きさなど)が次第に重要になっていることがわかった。それまで発売したCyon ブランドは売れなくて困っていた。買い手のニーズを調べた結果,次のことがわかった。

 ・ケータイは生活の一部であって,

 ・眠る時にもそばに置く。

 ・外出のときにはいつも持って歩く。

 ・単なる道具ではなく,持つことはプライドを生む可能性を持っている。

 ・今までは機能を重視しすぎた。

 ・新製品は個性的で贅沢品となることを目指す必要がある。

そこで次のような方針を決めた。

 ・ボタンはプッシュ式ではなく,タッチ式とする。

 ・色は黒として高級感をもたせる。

 ・ステレオのヘッド・フォンを並売する。

 ・音楽録音のために2GB のメモリーをつける。これで500の歌の録音ができる。

この開発チームは2004年の後半には90人のチームからなり,約1年かけて開発した。最初の9か月は専らデザインに専念し,それに合わせる機能設計を行った。
 デザイン研究の結果,色は黒とし,不必要な直線やかざりを除いた。そして外観をスリムとするためにすべてのボタンは黒い蓋の裏に隠され,この蓋に“さわる”と蓋が開くという神秘性を持たせた。この開発は秘密のうちに進められ,主なデザインは3人しか知っていないよういした。デザインをシンプルにするためにカメラのモデュールは除かれた。カメラはレンズなど電話機を大きくするからである。またデジタル放送の能力も捨てた。しかしインターネットからの音楽のダウンロードの能力はむしろ強化した。マーケティングにおいては,贅沢さ,小さく可愛らしさを強調した。しかしマーケティング部門は今までの製品にない特色,たとえばタッチボタン式などに抵抗した。Chocolate Phone という名称も思い切ったネーミングであった。これらの決断はモバイル部門の長のSeungkwon Ann によってなされた。
 Chocolate Phone は2006年世界中の各国で販売された。ヨーロッパではデザインを強調した。アメリカでは音楽機能を重視するために回転キーとヘッド・フォンをつけた。さらに500の歌を記録するために2GB のメモリーをつけ,色々のダウンロードを可能とした。
 この開発は消費者の感情 (emotion)を知るために,デザイナーの直感 (insight) が重要な役割を演じた。またデザイナーの単純さを意図する直感はシステマテッィクな市場調査によってでなかった。このケースはデザイナーの感性のほかに,トップや関係部門を説得することも重要な要因であった。
 デザインに合わせるために新しい技術開発も必要であった。例えば薄くするためにタッチセンサーの技術の開発が必要であった。またこのような新しいアプローチで成功するためにはトップのサポートも必要であった。このケースの成功要因は次の諸点であった。
(1)消費者志向の考え方
  その考え方の開発関係者の共有
(2)開発のエキスパートの確保
  その担当者の市場への直観力とコミュニケーションの能力
63 頁】
(3)デザインコンセプトを実現する技術力の確保
(4)新しいアイデアを実現するためのトップの支持
 (このデータはSeongkeun Jang 他によるDesign-oriented New Product Development, Research-technology Management, March-April 2009, p.35-48による)

 

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