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HFTの活動と情報的な株価 〜情報の伝達と処理の超低遅延化の効果の分析〜

 

辰巳 憲一*

 

1.はじめに

 

情報処理とネットワーク技術は日進月歩で進歩し,経済の様々な分野で超低遅延が実現した。その影響をもっとも受けているのは株式市場であろう。しかしながら,高頻度で取引・投資する行動に関する理論的実証的研究はそのスピード程には進んでいないように思われる。多くの誤解,間違った噂や早とちりが散見され,それを安易に拡散させる動きもある。
 板情報(厚み,depthの分布など)がどれだけ,どのように公表されれば,あるいは注文取扱い業者名が公表(あるいは一部の国でなされたような非公開化)されるようになれば,価格形成にどのような影響が起こるのか等のように研究するべき事柄は実に多彩であるが,マーケット・マイクロストラクチャー分野等の従来の研究対象は限られていた(多くの研究があるが例えば Rindi [2008] など参照)のは事実である。
 本稿は,情報の伝達と処理の超低遅延(スピード)化の効果を,その実態を解説した後,次の観点から分析する。情報の伝達と処理の超低遅延化によって,投資家間では,第一に投資頻度の乖離,第二に価格形成への影響度乖離,第三に取引の先回り,行列の横入りと置いてきぼり,第四に情報保有の非対称化,が生じる。それらの効果を,易しい理論で分析することにしよう。
 本研究はこの第一の課題に対しては,超低遅延・高速化の実態に基づき,投資期間の長さの経済的意味,情報伝播を担う価格の決定過程,などの分析に立ち入って取り組みたい。第二以降の研究課題は,ミリ秒単位という具体的な速度に基づく分析ではなく,スピードの速さが市場参加者の間で違うという点を前提に理論的に分析する。そして,その中でより高速で取引するのがHFTであるとみなす,ことになる。
 第二の課題については次のように取り組む。価格の情報伝達機能については,価格発見機能などという概念も既に提示されており,いくつか理論が存在する。最も重要で基本的な理論を参考にHFTの情報伝達機能の構造に立ち入って考察してみよう。具体的には,超短期の視野を持ち行動する投資家が情報を価格に織り込む尖兵である,という理論的定式化に矛盾がない 124 頁】 ことを示す。なお,HFTの実証分析の課題は辰巳 [2015c] に展開されている。
 第三は,日本で実際の投資プロセスで起こっている事柄を解明し,不正に近い行為は実際上行われていないのではないか,と主張したい。第四の問題を解明するにあたってはアカロフによるレモンの市場の分析技法を用いる。株式の投資期間には,10年を超えるような超長期のものからデイトレードのような短期のものまでがあり,従来から様々であった。しかしながら,従来,投資家同士は相互に無干渉で,平和に棲み分けていたように著者は思っている。最近,HFTは厳しく批判される場合があるが,その理由の一旦を以上の観点から考えてみることになる。

 

2.超低遅延の実現〜技術進歩

 

2−1 遅延の実態

経済学において遅れは,情報の時間的な流れに沿って,認知,分析,行動・執行の3つに分類されてきた。それに対して,次の遅れは,主として,対象物毎の遅れを推定計算したものである。

人間の遅延:250-500ミリ秒。スクリーンを見ている眼球から情報が入り,指が反応するまでの時間,である。

サーバー反応の遅延:5-50ミリ秒。この時間は,OS(オペレーション・システム),アプリ,ハードウェアそれぞれの遅延に分けられる。

ネットワークの遅延:10-30ミリ秒。用語解説を先取って用いると,コロケーションされていないサーバーが,データ・パケットを取引所のコア・サーバーまで送るのに要する時間,である(Kumar [2014] 参照。インドを例に取られた数字である)。この数字は時期,業者,国や取引所によって大きく異なる。

コロケーションがあれば,後述のように,遅延は遥かに短くなる。なお,コロケーションやプロキシミティは,業者・投資家のサーバーや通信機器を,取引所施設内あるいは同(データセンター等)ネットワークの端点に設置するサービスのことで,ある。
 取引所間でも,たとえ遠方であっても遅延は短くなっている。例えば,

日本取引所(JPX)とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME,米国イリノイ州オーロラ)間を結ぶネットワーク遅延時間は122ミリ秒以下。

ちなみに,以上と関連する時間間隔は,

まばたき:約100ミリ秒(0.1秒)。

最小約定時間間隔(日本):10ミリ秒以下。

音(/1m):3ミリ秒。

JPX コロ(all)からアローヘッドまでの接続時間:20マイクロ秒(0.02ミリ秒)。

ちなみに,瞼は人間の器官のなかで動作がもっとも速いと言われる。
 それゆえ,まばたき1回の時間間隔の間に,太平洋を超えて日米の間で情報が行き来する(ただし片道)。同じ時間で,価格は10回以上成立(約定)するのである。もし人間が対応することになれば500ミリ秒以上かかるので,新しい低遅延技術は5倍以上の速さを実現しているのである。
 HFTにおいて,パフォーマンスをあげ維持するために要求される1ミリ秒という時間間隔 125 頁】 を光と音の移動距離に換算してみると,真空中での光速は毎秒30万kmなので,光が往復できる距離は約150km 離れた場所までになる。音については,1m進むのに要する時間は3ミリ秒なので,33cmである。このような超高速度になると,サーバーやネットワークの機器性能だけでなく,サーバーから取引所までの地理的な距離をも意識しなければならなくなる。

 

2−2 取引所間ネットワーク

高頻度取引支援企業は,カスタマイズされた光ケーブル網を最初に導入し,その後は光速に近い速さで送受信できるマイクロ波,そしてミリ波通信と新たな技術を導入し続けてきた。これら3つのテクノロジーで全米の証券取引所が結ばれてきた。ナスダックはすでに,マイクロ波による無線ネットワークを顧客に提供している。それゆえ,ネットワーク間の違いは都市部では既にかなり小さくなってきているという指摘もある。
 アルゴリズムを駆使した取引を行うHFTにとって,ナノセカンド(1秒の10億分の1)の差が勝者と敗者を分ける,と言われる。超高速取引を行うトレーダーたちがさらに速い取引へと駆り立てられる中,米国軍用ジェット機が飛行中の交信手段として使うレーザーを利用する動きが出てきている。その例が,ニュージャージー州マファにあるニューヨーク証券取引所(NYSE)のデータセンターと35マイル(約56キロ)離れている,同じ州のカーテレットにあるナスダック市場のデータセンターを結ぶものである(Patterson [2014])。
 国際的には,2つの大洋に敷設された光ケーブルが米国と欧州,アジアの各市場を結んでいる。例えば,日本取引所(JPX)と米国イリノイ州オーロラにあるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の間を結ぶ,新たな超低遅延ネットワークが2014年3月末から開始されたが,遅延時間は122ミリ秒以下1)であると報道されている。

 

2−3 日本の事情

2010年1月東京証券取引所に株式売買システム「アローヘッド」が導入されると同時にコロケーション導入が始まった。また,日中に存在したザラバ・マッチングの3秒の壁もなくなった。つまり,従来は約定処理に約3秒かかっていたものが,アローヘッド導入を期に一旦5ミリ秒(0.005秒)に短縮され,600倍速まったのである。

取次処理速度(板乗り速度)つまりアローヘッドの注文受付レスポンス:1ミリ秒以内。

それまでは,たとえ高速取引を試みても,ザラバにおいて3秒間隔のマッチングであったため,本来の優位性を発揮できなかった。ザラバ・マッチングの3秒の壁が撤廃され,高速取引の優位性が著しく高まったのである。
 なお,このアローヘッドが2015年9月には刷新され,処理能力は約2倍になり,注文応答にかかる時間は半分に縮んだ。

(1)コロケーション

東証の場合,売買システム等が設置されているプライマリーサイト内に,売買執行等のプログラムをインストールした取引参加者,情報ベンダー及びISV等の機器等を設置するサービ 126 頁】 スを提供しており,相場の気配情報の取得及び注文の送信にそれぞれ片道20マイクロ秒(0.02ミリ秒)程度までに短縮することが可能である。

JPX コロ(all)からアローヘッドまでの接続時間:20マイクロ秒(0.02ミリ秒)。

なお,コロケーションは使うがHFTではない,トレーディング・投資戦略がある。HFTはコロケーションを使うが,コロケーションを使うから必ずHFTであるという必然性はない。
 2014年には東証コロケーションを通じる取引のおよそ50%がHFT取引になっている(大墳 [2014] 参照)。注文件数の方が約定件数より,HFT取引比率が高い,のが特徴的である。やはり,HFTの注文の方が(キャンセルされ)約定されていない,のである。

(2)プロキシミティ

マニュアルの投資家向けにも高速化の手段が提供されている。東証の場合,東証ネットワークの入口であるアクセス・ポイントが設置されているデータセンター内に,売買執行等のプログラムをインストールした取引参加者,情報ベンダー及びISV等の機器等を設置するサービスを提供しており,東証市場へのレイテンシーが低い,片道260マイクロ秒(0.26ミリ秒)程度の環境を,コロケーション・サービスより安価に,提供している。

 

3.長期投資と短期投資の併存

 

3−1 短期投資と長期投資の違い〜問題意識

投資家のなかには,短期投資に集中する者と長期に集中する者が存在する。経済や金融の仕組みを理解して投資の武器にするのが投資家の常であるが,投資家が長短に分かれるのは経済の長期構造に注目するかどうかなのであろうか。
 債券投資分野では,特定の期間を選好する投資家が存在して,満期別市場が存在すると主張する市場分断仮説(market segmentation hypothesis)が提示され,よく知られている。満期別とは,短期から長期までをさらに細かく分けることを意味する。この仮説には,満期毎に完全に分離されているという厳密なレベルから,特定の満期年数について債券需要者が他の投資家から分離されているという緩いレベルまである。
 長短に関する世間の噂はいくつかある。「長期投資なら儲かる」とは,成長期に限った話であり,日本の平成不況期には成り立たない。経済安定期では,せいぜい「長期投資は無リスク(安全)」が期待するべきことである。それは,長期には平均に回帰する,からである。また,株式市場は長期的に企業価値を織り込んで行く,からである。新しい技術が次々と生まれ,新しい企業や製品が次々と創られれば,経済は成長し,企業成長に乗る長期投資が報われる。

 

3−2 短期と長期の投資家の違い

短期と長期の投資家は投資の頻度2)に違いがある。それでは,短期と長期の投資家の行動・特性の違いは何だろうか。

127 頁】

(1)収集情報の種類

超短期投資家が注目する情報はカメラで被写体を撮影するケースを例に説明するのがよいだろう。カメラでは,様々にシャッタースピードを変えると,高速で動き続ける被写体を撮影できる。例えば,1/2000秒のシャッタースピードを用いれば,連続する静止画像の流列として超高速で走行するレーシングカーを撮影できる。シャッタータイムもしくは露光時間とは,正確には,シャッター幕が開かれ光を取り入れる時間,レンズを通過した光にフィルムが露出する時間である。
 長時間露光する,つまり遅いシャッター速度で露光時間を長くすると,一瞬では写すことのできない暗いシーンや被写体の動きの軌跡,などが撮影できる。長時間露光撮影でどのような写真が撮れるか実際に見てみればわかるように,雨,ライト,水,などの時間の推移に沿った動きが記録され流れが撮れる。他方で,被写体の微細な構造は映らない。
 露光時間の差で,見えるものが違うのである。長短投資家は露光時間の差に例えてみることができるのではと思う。超短期はシャッタースピードを短くして静止画像を見ている。長期は動き,流れを見ているのである。
 例えから現実に戻ってみよう。一瞬先だけをみる株価の読みと,企業の成長や時代の変化を長くとらえる卓見とは別のものであるはずだ,とは相場に係わる人がよく言う言葉である。さらに,深く考察してみよう。
 株価予測のために収集する情報の種類の違いが長短投資家の間に存在する,ことがまず考えられる。長期投資をする際には,今後長期的に成長していく銘柄を選び,しかも,それを割安で購入することが重要になる。必要になる情報もそれに関連するものになる。誰も適格に予測することはできない(と考えて),株価の短期サイクルの天井も底も,長期投資家は予測することをしない,とみられている。
 長期投資家は,産業動向を調べ,新産業の勃興をいち早く知る必要がある。あるいは,特定企業のビジネス・モデルを把握し,成長余力をもっているか,改善できるかどうか,を知る必要がある。さらに特徴的なのは,これらの点が把握できれば数限られた銘柄に集中的に投資する。そして特徴的なのが買い持ち戦略が採られる点である。逆張り投資で有名なウォーレン・バフェットは,自分の定めた基準を満たす限り,永久に持ち続けることを前提として投資する,と報道されている。短期のアクティブ投資の成功はほとんど望めないのは事実であるが,5年を超える投資は,PEの成功ケースに見られるように,成功の余地を残している。
 長期投資家に注目される経済要因は,長期的に効果や影響が及ぶ様々な変数,ファイナンス分野の用語を使えば株価に直ちに織り込まれるわけではない変数,例えば,マクロ経済的には人口問題(少子高齢化,人口減を見据えた構造改革),税制など,さらにミクロ経済的には新市場,未開拓市場はどこにあるのかという視点,企業面ではコーポレートガバナンス(企業統治)改善,イノベーション(技術革新)力,などである。これらの観点から見た業種選択,企業選択が重要になる。
 ベテランの長期投資家も,これらの選択に失敗することが当然ある。実際上,ふつうの投資家が上手に長期投資するには,極意が必要である。時系列的には,当該銘柄の株価が安いと判断したら少しずつ何回かに分けて買う。株価上昇局面でも何回かに分けて保有株を売却する。横断的には,株価が安いと判断した複数銘柄を少しずつ分けて買う。そして株価が上昇してきた局面では選別しながらいくつか保有株を売却する,ような戦略が必要である。

128 頁】

一方,短期投資をする際には,損切りラインと利益確定ラインを明確にして取引に臨むことが重要になる。市場のムードなどを把握しておくことも重要になる。なお,長短の区分をファンダメンタルズ分析かテクニカル分析かというような分析方法で分ける場合もある。この分類法は,この場合ファンダメンタルズ分析を広く採り過ぎている嫌いがあるが,ここまでの記述と整合的である。
 これらの考察の結果,株価と価値に依存する投資戦略が長期,株価の変化に依存する投資戦略が短期,であるという分類がなされることがあるが,必ずしも適切な分類ではないことも理解できよう。
 ちなみに,例えば規制変更,新規株式公開(IPO)やレバレッジド・バイアウト(LBO)などの資本市場イベントから生じる収益機会に投資するタイプは比較的短期になる。Brogaard, Hendershott and Riordan [2014]は,このようなセミ・ストロング型効率的市場仮説を検証するタイプのイベントに対して,HFTが強く反応していることを,1秒単位の計測モデルで示した。

(2)投資のために投入する時間

投資判断にどれだけの時間を費やす(ことができる)のかという点でも長短の違いを指摘できるかもしれない。短期投資の場合は,時間の投入が必要になる。例えば,経済指標の発表や突然のニュース報道に合わせて,あるいは分足チャートを見ながら成り行き注文を入れたりするなど,パソコンの前に張付いている必要がある。これらの手順を,アルゴリズムを使って,すべてを任せても,何十分に一度以上の頻度で確認する必要がある。長期投資の場合は,しかしながら,毎秒どころか,日々の相場でさへ,その上下変動に対して一喜一憂しなくて済む。

(3)資金余裕

長期投資では,キャッシュでの利益が投資後当面の期間得られない。もし保有資産を売却してしまえば長期投資は終了する。そのため,長期的視点を維持するためには資金的な余裕が求められる。短期の市場動向に惑わされなくてもよいが,資金面では忍耐が必要になる。
 他方,短期投資は,手っ取り早く稼げ,売買が頻繁で,短期の資金不足問題は回避しようとすれば不可能ではない。

(4)利益源泉〜ゼロサム・ゲームかどうか

直前のポイントと多少関連するが,取引の利益の源泉がどこにあるかの差異が重要である。
 短期売買は誰かの利益の裏で誰かが損をする,傾向がある。それゆえ,ほとんどゼロサム・ゲームである。その結果,短期投資家の間での競争は非常に激しいものとなる。ちなみに,流動性を求める投資家が多少損をして証券を売ることになっても,彼・彼女には流動性という便益がそれを上回って入手出来ている。この点に関するHFTの機能は辰巳 [2015a] で展開している。
 それに対して,長期投資は程度の差はあれ,係わった誰もが利益を得るということが起こり得るのである。その利益の源泉は,企業成長,経済成長である。短期投資家同士のゲームはゼロサムだけであるが,長期はゼロサムだけでない。時間の経過とともに,企業利益の上昇などによってファンダメンタルズの改善が起こり得る,のである。
 この差をもたらす原因として1つ考えられるものがある。短期には,証券の価格に影響を及ぼす要因の数や影響の程度が限られるから,であろう。しかしながら,長期にはすべての事柄が十分な程度証券価格に影響する,のである。しかしながら,この考えはあくまで1つの仮説に過ぎず,実証分析が必要である。

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セミ・ストロング型の効率性検定という形で,先行研究が既に1つある。Brogaard, Hendershott and Riordan [2014] の1秒モデルでは,図表1のマクロ民間部門に掲げた変数群を,アナリスト予測平均を超えるか下回るかでポジティブ・ニュースとネガティブ・ニュースに2分し,サンプル銘柄99から成る価値加重ポートフォリオの価値リターン,HFTの需給それぞれの注文高について,ニュース公表10秒前後の推移をプロットとしている。

 

 

その結果は,これらマクロ・ニュースに対して,HFTは機敏に反応し,リターンは動く,ということであった。ちなみに,サンプル期間には209回のマクロ・ニュースがあり,例えば10:00の発表予定時間ではなく,10:10などの実際の発表時間が使われる。
 反応が10秒も続くことに関して,Brogaard, Hendershott and Riordan [2014] は反応の遅れに時間がかかり過ぎることを心配しているが,イベントスタディではふつうの結果である。むしろ問題は,ニュース変数に関して,上記の理由で2分するだけで,効果が現れる期間の長さを考慮することがなされていない,方にあるように思われる。
 筆者が長期に分類した変数群の特徴は,それらの効果の大きさを見極めるには長い時間の経過を待たなければならない点にある。分析対象となったすべてのニュースの経済効果が10秒ですべて織り込まれる,とは考えられない,のである。
 売買取引に関係する様々な情報について,それが影響する期間,その効果が発現する期間の長い順に並べると次の図表2のようになる。

 

 

130 頁】

経済制度変革,企業の経営変革,長期経済指標によって,経済のファンダメンタルズの変化を判断できる。過去の株価情報の一部は現在の株価に織り込み済であるが,その情報は株価のトレンドなどの発見に利用される。経済政策(短期),短期経済指標,はその短期版を提供する。企業の財務情報は,企業のバリュエーション(企業価値判断)に利用される。板情報などの注文状況・売買情報は,最適な売買執行の判断に利用される。

(5)利益源泉〜再投資リスクの大小

短期投資のリスクのなかで長期投資と比較して顕著になるものは,再投資リスクであろう。今期パフォーマンスの高い投資をしていても,多くの場合それを持続できないことが多い。次期の投資機会では,不遇になる可能性がある。他方,長期投資では相対的に高いパフォーマンスを持続できる機会がある。
 この差を複利効果という言葉で表現しても,よいかもしれない。それを用いると,短期投資は複利効果がないが,長期投資には複利効果があるのである。

 

3−3 棲み分けとそれをもたらす原因

従来,頻度に対して投資家は棲み分けしている証拠がある。長期の視点で投資する投資家は,長期に影響する日々のイベントには反応するが,そうでないと判断されるイベントはやり過ごす。例えば,年金基金は日経平均構成銘柄の変更に対応して売り買いすることはない,と言われる。
 我々(スローな人間)には,音波と超音波が動物の間で棲み分けられているように,HFTとは棲み分けできるというイメージが,まだ,出来上がっていないように思われる。それゆえ,投資の世界の棲み分けを分析することは重要であるように思われる。棲み分けされる原因あるいは棲み分けできない要因には,次のようなものが考えられる。

(1)調達資金と運用契約の特性

調達資金の長短特性によって長短投資が棲み分けられる。加入者の退職時まで原則として資金の引き出しがなく,長期に渡って資金運用ができる年金とその他の一般投資,の区別がよく知られた典型的な例になる。
 しかしながら,投資を職業とするプロの投資家は四半期,半年,1年ごとに成果を問われ,短期にパフォーマンスをあげる必要がある。この運用委託契約の仕組みも同時に考慮するべき重要な要因になる。つまり,年金運用をこのようなプロ投資家に委託し,短期間ごとに評価し,パフォーマンスによっては運用者を変更する可能性もある場合には,年金投資も短期的な視野しか持たなくなってしまうことは注意するべきであろう。

(2)投資対象の特性

投資対象独自の特性によって長短投資が棲み分けられるという現象もありえる。
 投資商品であるFXは為替レート変動に敏感(と言うより為替レートそのもの)であるのに対して,外貨預金は為替レート変動に鈍感で,利率はやや長めの変動を組み込むに過ぎない。FXと外貨預金は投資家の期間ニーズに応じて使い分けられている可能性がある。
 値動きの穏やかな優良銘柄は短期投資に向かない,という諫言も例になる。短期投資の場合,理論価格を出し,市場価格と比べて高いか安いかを判断し,割安なら買う。それゆえ,流れに逆らって売買取引をするという逆張り,つまり「市場は間違って価格付けしている」と考えられる銘柄に投資,することになる。

131 頁】

他方,長期投資は「優良企業の成長にかける」という視点で投資する。それゆえ,長期に渡って資産を形成する投資目的に対する手段として,短期投資を利用するにはリスクが高すぎる。

(3)投資戦略の異質性

もし2人の投資家の戦略がまったく同じだとすると,高速に取引しようと目論む,あるいは遅れを避けたがる,かもしれない。誰よりも速く,裁定機会を見つけ,誰よりも速く,売買を執行してもらわなければ,競争相手の投資家に先を越されてしまうからである。
 他方,2人の投資戦略が違うのなら,投資家は相互に同じように,高速,無遅延で投資する必要性は少ない。必要な心配りは,投資戦略が外部に不必要に漏れないようにすることだけである。

(4)情報力や分析力

長期投資が有利な理由としては,@売買回数を控えて手数料や税金などの取引コストを最小化している,A売り買いのタイミングを判断する必要がない,などの点がある。後者Aは,情報を持たず,分析力がない投資家にとってはもってこいの投資方法なのである。

(5)参入障壁

HFTを始めるとしても,必要になるものは投資技術とIT(それを整備する資金を含む)であろう。多くの研究で,これらが,HFTに対する参入障壁となっていると考えられている。この参入障壁を打ち破るには,既存の業者,あるいは大手業者の方が有利であることが指摘される。参考文献は辰巳[2015a]などを参照のこと。

 

3−4 非可逆的な裁定

(1)超過リターンの源泉

超過リターンの源泉は何だろうか。超短時間の区間においては,経済イベントは頻繁に起こらず,超短期の株価の変動が投資家のリターンの源泉のほとんどになる,ように思われる。しかしながら,長期の区間においては,様々なイベントが起こり,中長期の変動を生み出している。それを適切に捉えることによって,超過リターンが得られる。
 長短投資家が共に買い持ち戦略をするという前提をおいて次に議論してみよう。イメージを持ち易くするために,5分投資家と10秒投資家という用語を用いてみる。

(2)長短投資家の関係

5分投資家は,10秒間隔の期間に存在する超過リターンを取りにいけない。取りに行くことは諦めている。あるいは費用上,規制上,できない。しかしながら,逆はありえて,10秒投資家は,5分間隔期間に存在する超過リターンは十分高ければただ待つだけで取りにいける。
 それゆえ,特定期間間隔のリターンが,他の期間間隔のリターンに対して相対的に上昇しても,十分に裁定が働かないまま放置されることがありえるように思う。
 5分投資家は,10秒投資家に対して,イライラする可能性があるとすれば,その理由はリターンが競合するからであろう。5分間(10秒間隔が30回)に株価が100だけ一様に変化するとすれば,10秒投資家が最初の10秒だけでなく,次の10秒でも,さらには次の10秒でも,10秒投資家が結局5分間リターンの29/30あるいはそれ以上を得ることになってしまう。途中で何かが起こる不確実性を考慮すると,リターンをより確実に先取りできるメリットは大きいのである。
 10秒投資家が,5分投資家の行動に対して,関心を持つとしたら,何のためであろうか。そ 132 頁】 れは株価への影響であろう。年金の株式売買は,短期的に,株価に大きな影響を与えるのは事実で,短期投資家は無関心でおれない,のである。

 

4.価格の情報性

 

4−1 先行研究

Grossman and Stiglitz (以下GSと略) [1976] は,情報的(informative)な価格の分析,価格の情報性(price informativeness)の分析を初めて体系的に行った。そのメカニズムは次のようである。
 一人でも正しい情報を持っている市場参加者が売買すれば,価格はその影響をうける。ある悪い情報を手に入れた人が該当する商品を売れば価格は下がる。そして,価格が下がれば何か悪い情報があるという理解が市場でなされることになる。それゆえ,(コストをかけて)情報を取得しない人も価格を見ておれば,その情報の(ただし,後述のように大まかな)内容がわかる。正しい情報を持っている多くの市場参加者が売買すればするほど,価格はより敏速により大きく変化し情報的になる。
 もし正しくない情報で売買すれば,しばらくすれば(短期的には,必ずしもそうならないが)価格が付いてこない(下がると思っても下がらない)ことが広くわかるようになる。
 この理論において特に興味があるのは,価格が極めて情報的になった時,一人の市場参加者が情報収集をやめても全体にはほとんど変化がない。情報収集コストをかけなくても同じ効果が得られることが判明する,ことであろう。そうなれば,どの市場参加者も情報を集めなくなる。これがGrossman-Stiglitzパラドックスと呼ばれる現象である。

 

4−2 理論展開

株式投資のための情報は1つしかないと仮定しよう。そして,多くの理論的研究が仮定するように,投資規制が無い,流通市場の分析に限ろう。理論展開は次のようになる。
(1)需要と供給によって価格が決まる。そのようにして価格は情報を伝えることができるとする。つまり,価格は情報の代表値である,という表現ができる,とする。
(2)市場の参加者には情報 I を「持つ者」と「持たない者」の2種類がいる。両者の純需要関数は価格 P と情報 I に依存し,同じ関数形 X(P, I)で表されるとする。
(3) s は情報を持つ者の数が全体に占める比率,したがって,(1- s)は情報を持たない者の比率であるとする。情報を持たない者の純需要関数はX(P, 0)となる。それゆえ,純需要量の市場合計は,sX(P, I) +(1- s) X(P, 0)で表される。
(4)市場均衡が成立するならば,0 = s X(P, I) +(1- s) X(P, 0)となる。この式を内生変数Pで解くと,純需要関数の形を与件として,P は I と s の関数として得られる。
(5)それゆえ,価格Pが情報 I を織り込み,それが情報を保有しない投資家に伝達するようになる。情報を持つ者の比率 s が増える程,価格の情報伝達能力が上がる。
(6)情報 I を持つ者の行動が価格に影響を与えることになるならば,時間の経過とともに,情報を持たない者(1- s)は I と均衡価格 P の関係に気が付き,均衡価格 P を観察するだけで情報 I を推測できるようになる。
(7)価格が情報を伝達するようになると,市場参加者は情報を収集するインセンティブをな 133 頁】 くす。したがって,いずれ s = 0となってしまう。しかしながら,s = 0の時,価格は情報を正確に伝えることができない。その時の価格はこのモデルでの均衡価格ではない。(以上)
 なお,規制などによって価格が動かない場合,情報が複数ある場合,上の議論は厳密に成り立たない。これらの点以外にもこの議論が成り立たない場合があることを次に説明しよう。

 

4−3 議論

情報収集・分析する者のその行為に対して報酬を提供する仕組みがモデルに入っていない点がGS論文の理論上の欠点である。均衡は,情報収集・分析活動する投資家にはそのコストに見合う報酬を,情報活動しない投資家のリターンから提供する形で,成立する必要があるのである。
 この分析において,価格が織り込んでいる情報は,企業内情報からマクロ情報までを含む,売り手から買い手までが関心を持つ,統合された様々な情報であるべきである。他方,市場参加者が売買にあたって調べる情報には,個別の様々な情報が含まれる。その場合,価格だけを見ていて,価格がどの要因のために変化したかを知るのは一般に困難であり(それを分析するために専門的にエコノミストがいる),価格変化に対応して具体的にどう行動するべきかどうかはさらに難しい決定になる。この点においても,GS [1976] の分析と現実の間に大きなギャップがある。
 価格は様々な情報を織り込んでいるので,価格が変わったからといってどの要因によるものなのか,価格だけを見ていてわかるわけがない。それゆえ,価格が動けば更に情報を集めなくてはならない場合さへある。エコノミストの意見を真剣に聞くことにもなる。それゆえ,上のGrossman-Stiglitzパラドックスは実際上成立しないわけである。

 

5.価格の情報伝達機能

 

5−1 理論展開

5−1−1 短期情報の伝達

株式投資のための情報は1つ(既述のように,その限界を認めた上)で,投資規制が無い,流通市場の分析に限って,短期投資家と長期投資家がいる市場での価格の情報伝達機能を分析してみよう。理論展開は次のようになる。
(1) t 期の価格 Ptは t 期の情報 Itをどのように長期投資家に伝えることができるか,分析する。そして,p=log P とする。
(2)市場には短期と長期の投資家が参加し,短期投資家の投資期間は(t-1 , t),長期投資家の投資期間は(t-1-i , t+j),とする。i, j ≥ 0。証券に対する純需要は,価格ではなくリターン,そして情報に依存する,とする。それぞれのリターンは次のようになる。

rt = pt - pt-1,
rt(i, j) = pt+j - pt-1-i

後者の記号を使うと,短期投資家のリターンは rt(0, 0)と表せる。
(3)短期と長期の投資家それぞれに複数の参加者がいる。短期投資家だけが情報収集し,情報を持つ者となり,長期投資家は情報を持たない者となる,と仮定する。
(4)投資家の純需要量の合計はX(rt, It)で表される,とする。長短投資家の純需要量合計は 134 頁】 それぞれ,X(rt(0, 0), It)と X(rt(i, j), 0)になる。
(5)i, j > 0 として,今期,市場均衡が成立するならば,X(rt(0, 0), It)= 0となる。この式を内生変数rt(0, 0)あるいはptで解くと,rt(0, 0)あるいはptは純需要関数の形を与件として Itの関数として得られる。
(6)このようにして,価格それゆえリターンが情報Itを織り込むようになる。
(7)そして長短リターンは次のような関係を持つ。

rt(i, j) = rt(i, 0) + ・・・ + rt(2, 0) + rt(1, 0) + rt(0, 0) + rt(0, 1) + rt(0, 2) + ・・・ + rt(0, j)

それゆえ,価格それゆえリターンが情報 It を短期投資家から(情報を持たないと仮定した)長期投資家に伝達するようになる。
(8)長期投資家が今期売買することとなる j = 0 の時は次のようになる。s は情報を持つ短期投資家の数の比率,したがって,(1 - s) は情報を持たない長期投資家の数の比率であるとする。情報を持たない者の純需要関数はX(rt(i, 0), 0) となる。それゆえ,純需要量の合計は,sX(rt(0, 0), It)+(1 - s) X(rt(i, 0), 0)で表される。市場均衡が成立するならば,0 = sX(rt(0, 0), It) +(1 - s)X(rt(i, 0), 0)となる。この式を内生変数 Ptで解くと,純需要関数の形を与件として,Ptは It と s の関数として得られる。(以上)

 

5−1−2 長短期2つの情報の伝達

株式投資のための情報は2つあり,それぞれに対して短期と長期の投資家それぞれが収集・分析し,その結果異なる投資行動に顕示される,としよう。それらを1つの価格の時系列がどのように伝達するのか,投資規制が無い,流通市場の分析に限って,分析してみよう。理論展開は次のようになる。
(1) t期の価格Ptは,t期の短期情報 It をどのように長期投資家に伝えることができるか,t期の長期情報 IIt をどのように短期投資家に伝えることができるか,分析する。そして,p=log Pとする。
(2)市場には短期と長期の投資家が参加し,短期投資家の投資期間は(t-1, t),長期投資家の投資期間は(t-1-i , t+j),とする。i, j ≥ 0。証券に対する純需要は,価格ではなくリターン,そして情報に依存する,とする。それぞれのリターンは次のようになる。

rt = pt - pt-1,
rt(i, j) = pt+j - pt-1-i

後者の記号を使うと,短期投資家のリターンは rt(0, 0)と表せる。
(3)短期と長期の投資家それぞれに複数の参加者がいる。短期情報を収集し,情報を持つ者となるのは,短期投資家だけで,長期投資家は情報を持たない者となる。そして,長期情報を収集し,情報を持つ者となるのは,長期投資家だけで,短期投資家は情報を持たない者となる,と仮定する。
(4)純需要量の合計はX(rt, It)で表される,とする。長短投資家の純需要量合計はそれぞれ,X(rt(0, 0), It)と X(rt(i, j), IIt)になる。
(5)i, j > 0として,今期市場均衡が成立するならば,X(rt(0, 0), It) = 0となる。この式を内生変数rt(0, 0)あるいはptで解くと,rt(0, 0)あるいはptは純需要関数の形を与件として It の関数として得られる。
(6)このようにして,価格それゆえリターンが短期情報 It を織り込むようになる。

135 頁】

(7)そして長短リターンは次のような関係を持つ。

rt(i, j) = rt(i, 0) + ・・・ + rt(1, 0) + rt(0, 0) + rt(0, 1) + ・・・ + rt(0, j)

それゆえ,価格それゆえリターンが情報 It を短期投資家から(情報を持たないと仮定した)長期投資家に伝達するようになる。
(8)j = 0 の時は次のようになる。s は短期投資家の数の比率,したがって,(1 - s)は長期投資家の数の比率であるとする。長期投資家の純需要関数はX(rt(i, 0), IIt)となる。それゆえ,純需要量の合計は,sX(rt(0, 0), It) +(1 - s) X(rt(i, 0),IIt)で表される。市場均衡が成立するならば,0 = s X(rt(0, 0), It) +(1 - s)X(rt(i, 0), IIt)となる。この式を内生変数 Ptで解くと,純需要関数の形を与件として,Ptは It,IItと s の関数として得られる。(以上)

 

5−2 議論

情報を持つ者の行動だけが価格に影響を与えることになるならば,情報を収集しないと決めた投資家は情報と均衡価格の関係に気が付き,均衡価格だけを観察すれば情報を推測できるようになる。価格が情報を伝達するようになると,市場参加者は情報を収集するインセンティブを持たなかったことが正しい選択であったことを確認することになる。これらの点は前節のとおり成立している。
 市場分断仮説とは,期間別市場間で裁定が行われない,または裁定が不完全なため,取引価格が個々の市場の需給に規定される,という考え方であった。上の小節で展開したプロセスで起こっていることは,長期投資家がいつでも特定の短期期間間隔に参入して価格形成に参加することがないという意味で,異時点市場間の裁定が不完全なため,取引価格が個々の時点の市場の需給に規定される,ということである。
 そして,長期情報は長期投資家が売買をした時のみ,価格に織り込まれる,ことになる。それゆえ,長期投資家の売買は市場への影響が大きい。しかしながら,この命題をこう言い切るには,短期投資家は長期投資家の行動を予測して売買することはない,という仮定が前提となる。現実の経済では,この仮定は満たされないと考えるべきであろう。実際は,長期投資家が市場へ参加する影響は注目され,参入の可能性を超えて売買の規模を探る動きさえある。
 なお,価格・リターンの情報伝達速度に関する計測方法は,良し悪しは別にして,既に提案されている。HFTの市場参加によって価格・リターンが何れ位伝達度を上げたかを計量的に知るためには現在このような方法しかないように思われる。巻末の付録でそれを批判的に解説しておこう。

 

6.HFTと個人投資家〜利害対立

 

6−1 HFTは投資家の発注情報を利用している?

(1)不確かな印象の検証

他の投資家の発注情報にアクセスし,その情報をHFTが利用して利益を得ているのではないかという疑念を持たれている由報道されることが多い。この問題を次に考えよう。HFTが情報伝達や処理のスピードの格差を利用して,他の投資家の売買注文執行前に有利に取引を先行し,利益を稼いでいるのではないか,という問題である。
 日本の個人トレーダーの一部は,次のような注文状況の動きが実際にあるという感触を持っ 136 頁】 ており,HFTへの疑念を抱いている。つまり,(ある不明なブログの問題提起を参照すると)「HFTが行われているような主力株の取引において,個人トレーダーは注文板を見て発注するが,その注文がすぐ取り消されることが多く,結果として高く買ったり,安く売らされる。」すぐ取り消される注文はいわゆる見せ玉になったというわけである。
 このようなことが現実に起きるには,どのようなことが前提となるか,以下で考えてみよう。取引所が他の投資家の指値注文情報をHFTに流す,ような言語道断な行動は日本では考えられないので,この可能性は最初から除外することにしたい。ちなみに,言語道断な行動とは,情報を漏らす(耳打ちする)という行動を採っていなくても,情報を開示(見つけようとすれば多少時間が掛かっても発見できる形態での開示を)する行動である。あるいは情報を入手できる通信ネットワークを構築するだけでも,犯罪にも等しい行動になる。
 ある個人投資家は,希望する売買の反対側に注文残があることを確認し,発注することとなったとしよう。そして,
 (i)当該個人投資家の売買注文が,ある時刻に,注文板に乗る,
 (ii)適当な時間が経過して,売買の反対側の注文に付き合わされて売買が執行される,
としよう。この(正常な)プロセスのなかで,上で指摘された状況が生じるためには,次の2つの可能性が起こる必然があると考えられる。
 (a)HFTが反対側の該当する注文を出しており,HFTは(i)の注文を確認した後,(i)から(ii)へ時間が経過する間に,当該反対注文を取り消す。
 (b)HFTが,(i)の注文を確認し,個人の(i)の注文が板に乗るより前に先んじて同じ注文を出して個人が確認していた反対側注文と売買執行させる。
 超低遅延化によって,これらのことは技術的には確かに可能になった。これらのことが万一もし実際に行われておれば,個人トレーダーの懸念が現実となる(現実となっている)可能性もある。このような疑念が持たれれば,確かに「個人トレーダー層を主力株売買から遠ざけ,値動きの良いという条件付きであるが,中小型株に向かわせている」と指摘する一部の市場関係者の主張は正しい。
 しかしながら,次の2つの理由で(a)と(b)はほとんど起りえない。
@個人投資家に損失を与えるために,わざわざ攻撃的なキャンセルをするわけではない場合がまず考えられる。
 当該HFTがもし次の順位に位置する気配値で注文を既に出していたとするならば,自身にとってより有利なその気配に誘導するためにキャンセルする可能性が考えられる。しかしながら,この行動・現象については,その証明はデータの制約があるため難しいが,注文残が少ない小規模市場や低流動性株では,起こりえる。主力株や大規模市場では注文のキューが長く,キャンセルするとキューの次の順位の他のトレーダーが出している注文と付け合わされる(自身はキューの最後になる)ことになるので,HFTの戦略(a)は成功しないことになる。
 なお,時間優先を維持したままの注文変更(時間優先維持変更)は,東証では,同じ指値のまま注文数量を削減する場合には可能である。それゆえ,利益を多少犠牲にするつもりならば,注文数量を減らして待ち行列の同じ位置に留まることはできる。
A規模の大きい市場では,注文の行列は長く,行列の横入りのような,注文の順番が代わることは制度上認められていないので,後者(b)はありえない。競合相手の取引の先回りが出来ても,行列の横入りは出来ない。

137 頁】

しかしながら,注文残が少ない小規模市場や低流動性株では,ありえる。先回りすれば,誰もいない行列の先頭に並べるからである。しかし,それは議論の出発点で置いた前提である主力株と矛盾するので,議論の結論は妥当しないことになる。

(2)日本の事情

東証では,成行注文と指値注文という基本的な2つの注文種類に,寄付条件,引け条件,不成条件,IOC条件の4つの条件3)を付けることができる注文だけが受け付けられる。これらは,価格優先・時間優先の原則に基づき,東証のマッチング・エンジンであるarrowheadで処理される。
 結果として時間優先の原則を崩すような執行待ち行列の順位変更(キュー・ジャンピング)の問題は生じない。そもそも,米国で存在するような,原則を崩す要因となるような,注文は受けたが板に表示しないタイプ(非表示注文),受けた注文とは違う気配に注文を仮置きするタイプ(プライス・スライド)は無い。
 東証では,最低限必要であると考えられる,非常にシンプルなオーダー・タイプしか導入されておらず,それらは誰もが容易に理解できるものとなっている(大墳 [2014])。これをもって,より公正かつ秩序ある市場を維持することとなっている。
 ちなみに,日本においては証券会社が顧客向けのサービスとして複雑なオーダー・タイプを提供しているが,市場間競争が激しくなった米国では,取引所自身が提供するようになっている。

 

6−2 HFTと情報保有の非対称性

超低遅延化が情報格差を自然と生むことになる。その結末をレモン(中古自動車)の市場の分析(Akerlof [1970])に基づいて考察してみよう。
 ここで取り扱う情報は,株式発行企業の個別の詳細情報やマクロ経済に関する情報であり,流通市場参加者の間の情報格差が問題になる4)。Bongaerts and Achter [2014] も同様な問題意識 138 頁】 を持って分析している。しかし,彼らは低遅延と情報処理を区別するとともに,たとえ情報が遅れて届く投資家であっても,もし情報処理能力が高ければ遅れを挽回し,情報保有の非対称は起こらず,不利になることはない,と捉えている。

(1)情報の非対称性と情報勝者〜勝者の呪い

GSと並んで情報の経済学における2大金字塔を形成する,もう1つのアカロフ教授の理論を用いてHFTを分析してみよう。売り手が持つ個別の内部情報を主として取り扱い,買い手との間でその情報の保有に格差があることを問題にする研究は,価格付けに際して,「勝者の呪い」と呼ばれる現象が生じることを明らかにして研究者の間で大きな関心を呼んだ。勝者となるのは,正しい情報を持っている市場参加者である。
 株式流通市場における投資家間の情報保有の非対称性は,情報の非対称性の代表的分析の1つであり,レモン(中古自動車)の市場の分析に対比される。
 価格が需給で決められる仕組みから始めよう。簡単化のため,2つの銘柄を2人の投資家が各1つ発注するとしよう。2つの会社は価値の高い会社と価値の低い会社であるとする。発注に参加する者は情報を持っている者と情報を持っていない者であるとする。情報とは企業に係る情報と企業環境に係る情報である。

 

 

取引参加者は相互に独立で,それぞれが持っている私的情報を互いに知らない,そして共謀や結託はないと仮定する。それぞれの発注行動は相互に知らない,と仮定する。例え知ることが出来ても機会主義的に行動しないとする。それを,モラルを持つと表現する。
 また,発注に参加しないという決定は許されないと仮定する(情報を持っている者が発注に参加しないという事実は重要な情報になってくる)。各人の予想される発注行動と結果は図表3のようになる。ここでは,情報を持っていない発注者は,高くも低くもない平均的な気配を付ける,という前提をおいている。
 もし売買の相手が存在するとした場合の結果を図表3の各枠の下段にまとめた。この場合, 139 頁】 情報を持っていない発注者は,最良気配かその近辺に指値注文が出せない,ということである。良い銘柄を約定できず,悪い銘柄には(高い買い物をし)不利な約定をさせられ,損失を蒙る。IPOではこれを勝者の呪い(winners’ curse)と呼んだ。

(2)約定のスピードアップ〜フリーズと相手の発注内容もわかってしまう場合のHFT独自の結論

次にHFT独自の市場環境を前提に考察してみよう。それぞれの発注行動は相互に知らない,のではなく,情報を持っている者は情報を持っていない者の発注行動は知っていると仮定する。それを,モラルを持たないと表現する。結果は図表4にまとめた。

 

 

この結果,いずれにしても前小節のように市場を潰すことに変わりないが,約定価格は銘柄本来の価値に近くなる可能性がある。

(3)情報非対称的なトレーダー間での売買

以上の分析から少し離れ,情報を持っている者とそうでない者との間でしか売買が行われないという世界を次に想定してみよう。一方が買い手になれば他方が売り手にならなければ売買は成立しない。高い価値の銘柄の場合情報を持っているHFTトレーダーが買い手になる。当然高い指値を出すこともいとわない。情報を持っていないトレーダーが自身の方針を変えなければ,約定はない(図表5参照)。しかしながら,情報を持っていないトレーダーは,その指値の高さに魅かれて売りに回るかもしれない。そうして初めて約定する。
 他方,低い価値の銘柄の場合,情報を持っているHFTトレーダーが売り手になる。情報を持っていないトレーダーは,その指値を変える意図はないかもしれないが,売り手が低い指値で迫れば買い応じるかもしれない。
 情報を持っていないトレーダーが,市場に出た売買反対側の指値を見て行動を変える場合を以上で考察した。そうではなく,その指値を変える意図はまったくないとすればどうであろうか。この場合,売買が成立しない,それゆえ誰も売れない・買えない状態になり,株式市場はフリーズ(freezes)するようになる。フリーズとは,市場の誰もが指値注文を出す意欲をなくすことである。このような状況が続けば,情報を持っていない発注者だけでなく情報を持つ発注者も,いずれ赤字を出してしまうか,市場から退出する。その結果,市場には情報を持っている参加者だけが残る。
 現実の市場のように発注参加者の数が多数であるとして,これに続く結末を考えてみると,市場は小さくなってしまい,なくなってしまうか,残った者の間で更に厳しい発注が行われる 140 頁】 か,のどちらかになる。残った者の間での発注競争も,情報保有の量と質の厳しい戦いで,それらが相対的に劣るものは情報を持っていない者と同じ運命を辿る。それゆえ,いずれにしても,市場はなくなる。

 

 

(4)考察

本分析は,より適切な指値で注文が出せるかどうかという指値決定競争において,一般投資家はHFTに負けてしまう,ことを明らかにする。その結果,一般投資家は約定できないケースが増えてしまい,いずれ注文を出さなくなってしまう恐れがある。
 確かに,一般投資家が対一般投資家との指値競争では約定できるケースはあるが,それでも約定できる確率は平均50%にすぎない。注文を出し続ける誘因としては弱い。
 この議論の結論は,Brogaard, Hendershott and Riordan [2014] の導入した記号HあるいはN(これらはそれぞれHFTあるいはNonHFTの略である)を使えば,売り買いの取引の少なくとも片方がNonHFTであるケース,いわゆるNN,HNあるいはNH取引に対して当てはめることができる。
 つまり,Nに係る取引はフリーズしてしまうのである。しかしながら,HH取引だけには適用されない。この結果,市場はいずれHFTだけの世界になってしまう。
 また,HFTは直前の約定時刻からの次の約定までの経過時間を測る約定時間間隔を短くするのではなく,フリーズを起こすことによって,約定しにくくしてしまう。その結果,HFTが参加している市場では約定時間間隔が必ず短くなる,とは限らないのである。

(5)様々な要因を考慮すれば

この議論は,発注時間に差がある場合でも,あるいは銘柄の種類に係らずどのような銘柄でも,同じ結論が成り立つのであろうか。順に考えてみよう。
 仮にすべての投資家が同じ指値で注文できるとしても,より短時間で発注できる(執行までの時間が短い)HFTは断然有利である。それゆえ,上の結論は変わらない。このケースではすべての注文に対して執行を一定時間だけ待った後一斉に行えば市場参加者間の公平性を保てることになる。しかしながら,具体的にどれだけの時間待てばよいかについては効率性と公平性という相反する2つの観点からの検討が必要になる。
短期では値動きの少ない,長期投資が適当な(往々にして優良である)銘柄については,どうであろうか。もしHFTがこの銘柄に関する情報を追っていなかったとすれば,HFTが情報 141 頁】 勝者になることはない。その結果,上の結論は成立しなくなる。

 

7.まとめ

 

取引所や大手証券会社の幹部が,HFTは株価や株式市場に対して中立的である,と表明している。それには,HFTは1日中にポジションをスクエアにするからであるという説明があるのみで,十分な理論的説明がないばかりか,実証データも示されていない。
 本稿で見てきたように,HFTの役割は功罪相半ばする。一方で,価格の情報性を上げ,情報伝達スピードを上げる,という大きな役割をHFTは果たす。
 他方で,低遅延化すると,情報を持って行われる,それゆえ経済的理由でなされる注文のフローを吸収する流動性需要(者)が無くなる。そして市場は硬直化(フリーズ)する。情報伝達スピード上昇からもたらされる情報保有の非対称性は,情報を持たない投資家を益々生むことになる。彼らは約定できない事態に直面し,レモンの市場のような不利な価格で取引されるからだけではなく,フリーズという現象が起こり,いずれ市場から退出する恐れはある。しかしながら,この結論はすべての銘柄に妥当するわけではないことにも注意するべきであろう。

 

付録: 情報伝達速度の計測法展望

 

計量技法の一端を次に見ておこう。情報の伝達速度を計測することは一般に容易いことではないが,Hou-Moskowitz [2005] の研究から始まった価格の反応の遅れを計測する試みが参考になる。
 ちなみに,この技法は,オプションの取引所取引導入が信用取引規制の制約に対してどうような影響を与えたか,導入時前後で効果の大きさを比較する研究(参考文献は省略)などの分析で実際に使われている。

(1)価格の反応の遅れの計測

情報伝達速度は,次の基本モデルと完全モデル,

Rt =α+β0Itt          (基本モデルbase model)
Rt =α+β0It + ΣnβnIt - nt  (完全モデルfull model)

から出発し,推定された決定係数と係数値を用いて計測する。被説明変数 Rt は情報が伝播する変数で,それへの伝播のパターンが計測の対象になる。 It は様々な情報変数で,質の変数ならばダミー変数になる。完全モデルにおけるラグの長さ n(n=1,2,3,・・・)はAICやSICなどの情報基準で当てはめの良さが高い n から決められる。基本的に次の2種類の尺度が提案されている。
 遅れの尺度(delay measure)の第一は決定係数比率 Drsqで,2つのモデルの自由度修正済み決定係数を次のように比較する。

Drsq=1− 基本モデルの決定係数/ 完全モデルの決定係数

一般にこの式の右辺第二項は分子より分母の方が大きい。Rt が情報 It を瞬時(同時期)に組み込むならば,完全モデルのラグ変数が説明力を(基本モデルに対して)追加することは少なく2つの自由度修正済み決定係数の差は小さい。それゆえ,情報伝達速度が速い程 Drsqは小さくなる。

142 頁】

第二の遅れの尺度はラグの長さの係数値加重比率 Dsumで,2つのモデルの係数値を次のように比較する。

Dsum = Σn n(abs(βn))/(abs(β0)+ Σn abs(βn))

ここで,abs (・)は絶対値をとる記号である。完全モデルのラグ変数の効果がなければ,それらの推定値(t値も)は小さく,上記定義式分子の係数値加重ラグは小さくなる。それゆえ,情報伝達速度が速い程 Dsumは小さくなる。
 Dsumにおける係数推定値の絶対値をその標準誤差で割り,上式のabs (・)に代える修正尺度も提案されている。
 いくつか注意点があるので解説しておこう。これら2つの尺度はスピードの単位,つまり例えば時間当たり年率%リターン,になっていない(前者は無名数,後者は期間数,ただし,その修正版は無名数)ので,相互に比較できない。
 継続的に無限に(あるいは非常に長期間)生起している情報の伝達速度はどうように計測すればよいのか。このままでは完全モデルは正しく計測できないので,多少工夫が必要になる。ラグは無限大であるが,係数の数は有限(数個)にするパラメトリックな計測法をとればよい。
 分析するデータが,週次以上の低頻度データであれば問題はないが,日次さらに高頻度なデータの場合様々な理由でデータが観測されずに跳ばされることが起こり,等間隔データが得られず,計測上様々な問題が引き起こされる。情報は国を超えて30分を大きく超える短時間間隔以内で世界中に流れ,株式リターンに影響するという観測(参考文献は省略)もあり,分析は高頻度データを使わざるをえず,この問題は致命的である。補間に関する問題点の詳細と解決策の1つについては辰巳・松葉 [2008] を参照。

(2)情報への反応の遅れの計測

ある変数に影響する情報は様々存在する。一般にそれらの効果は混合する。ある1つの情報の効果を計測したい場合,他の情報を適切にコントロールしなければならない。
 もし被説明変数Rtが個別銘柄のリターンであるなら,実に多数の要因が影響する。Hou-Moskowitz [2005] が分析したように,例えば規模,リスク,PBRなどの財務比率,などがある。さらには市場リターン,取引コストなどの市場要因も影響する。
 そもそも基本的な問題として,この計測法ははたして情報の効果を測っているのだろうか。情報の発生以降価格・リターンが変化するまでは,次のように推移する。まず情報が発生して,@投資家が認知(recognition)するまでのラグ,A認知してから分析して行動を開始するまでのラグ,B投資家の行動から市場で価格・リターンが変化するまでのラグ,がある。
 分析対象によってはこれらの間で大きな差異が存在する。Aでは,例えばディーラー(最短数ミリ秒)と年金基金などの投資委員会方式(最短数日以上)との間では大きな時間差がある。Bには,市場の環境,いわゆる市場の流動性が大きく係る。
 当該技法はこれら全ての要因を測っている。それゆえ,Hou-Moskowitz [2005] の研究は,情報の伝達速度(情報への反応の遅れ)を計測しているのではなく,正確には論文の表題にあるとおり価格の反応の遅れを計測する方法であると理解するのがよいだろう。反応の遅れをもたらす要因は様々ある。その一部として,流動性がある。

 

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