1) 本研究では,独立行政法人労働政策研究・研修機構より,大変貴重なデータを利用させていただく機会を得た。記して感謝します。
2) 具体的には,「過去3年間の組織のパフォーマンスを同業他社と比較した場合にどうであるか」について次の7項目について4段階で回答させている。1)製品やサービス,プログラムの質,2)新しい製品,サービス,プログラムの開発,3)良質な労働者の採用,4)良質な労働者の定着,5)顧客や取引先の満足度,6)全般的な労働者同士の関係,7) 経営陣と労働者との関係。
3) 脇坂(2007)では「ファミリーフレンドリー(ファミフレ)」と表現されているが,本研究では「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」と表現している。表現は異なるが,内容は同じである。
4) なお,利用データより,常用労働者一人当たり売上高,常用労働者一人当たり経常利益が求まるので,相対的売上高,相対的経常利益との相関係数を求めたところ,売上高については−0.0336,経常利益については−0.0161とゼロに近く,両者の相関は観察されなかった。総資産利益率や売上高成長率などの実際の業績指標と相対的な企業業績指標との関係については,Dess and Robinson, JR.(1984)が両者の関係を分析し,相関があることを示しているが,本研究で利用したデータではそのような結果が得られていない。
5) 「鉱業,採石業,砂利採取業」「建設業」「製造業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」「運輸業,郵便業」「卸売業」「小売業」「金融業,保険業」「不動産業,物品賃貸業」「宿泊業」「飲食サービス業」「教育,学習支援業」「医療,福祉」「その他サービス業」「その他」の16分類。
6) 脇坂(2007)では,「現在実施している」と「現在は実施していないが過去に実施していた」とを同じ得点とし,「過去に実施していた」企業を高く評価していたが,本研究では,「現在は実施していないが過去に実施していた」企業は,ポジティブ・アクションの取り組みが劣っていると判断した。
7) ここで,中小企業の比較対象としての大企業として1000人以上9999人以下の企業を選択したのは,この規模の企業数が比較的多かったためである。以下,企業規模別サンプル数を示すと,100人以上299人は934サンプル,300人以上999人は722サンプル,1000人以上9999人は301サンプル,10000人以上は13サンプルであった。
8) この原因の一つとして,コース別雇用管理制度を導入していない企業の中に,実質的に(コース別雇用管理制度を導入している企業のように)女性を基幹的な業務を担う者とそうでない者とに分けて採用・雇用管理している企業が混在している(大内・仙田 2003ほか)ことが考えられる。
9) 矢島(2015)は,出産経験のある女性を対象とした分析で,キャリア意識の変化(維持・向上)に対して,短時間勤務を利用した場合に有意にマイナス,所定外労働免除を利用した場合にプラスの影響を与えるという結果を得ている。個人データと企業のデータという違いはあるものの,これは,短時間勤務制度の利用に関するスコアが女性のモチベーションにプラスという本研究結果とは整合的でない。育児中の従業員でも夜間までの勤務や土日勤務を求めた「資生堂ショック」と呼ばれる問題も記憶に新しい。短時間勤務制度導入の影響については,今後も慎重に分析される必要がある。
10) 実際,女性の総合職と一般職の比較研究(大内・仙田 2003)では,育児休業をできるだけ長く取る一般職に対して,総合職は育児を夫と協力し短時間勤務などを利用してできるだけ早く仕事に復帰するという。