*) 本稿は,鈴木(2020)の第9章をベースに,大幅に加筆・修正したものである。鈴木(2020)の試算内容を最新の統計などに置き換え,若干の修正を行っている。また,新書という紙面の制約の中で,削除せざる得なかった細かな前提や説明を補足する役割も持っている。
1) ただし,個人の無差別曲線の形状によっては,ベーシック・インカム以上に働いて収入を得ようとしない人々が一部現れ,ベーシック・インカムに安住してしまう可能性もある。
2) 実際,医療扶助分をカットしたとしても,国保等の医療保険の医療費に置き換わるだけである。生活保護受給者のような低所得世帯が支払う保険料はわずかであるから,実際にはそのほとんどが保険者の負担,国庫負担に転嫁されてしまう。
3) もちろん,本来はこれだけ消費税率が引き上がると,消費が減少し,GDP自体も減少するから,税収が減少し,必要な消費税率はもっと高くなるだろう。こうしたマクロ経済全体の効果はここでは考慮していない。
4) 先の消費税率の試算と同様,マクロ経済効果は考慮していない。消費の減少や所得税によるディストーション発生によって経済規模が小さくなることから,必要な所得税率はさらに高いものになると思われる。
5) その意味で,10万円の特別定額給付金を生活保護受給者や年金受給者にも分配することは適切とは言えない措置であった。特に,国から生活費を保障されている生活保護受給者にまで給付金を配り,わざわざ収入認定から外す措置(給付金の分を生活保護費から相殺しない措置)を厚生労働省が決めたことは,生活保護行政のあり方として大きな問題を生み出した。
6) トーゴーサンとはサラリーマンの所得把握率が10割であるのに対して,自営業は5割,農林水産業従事者は3割という意味であり,クロヨンは各比率が9:6:4であると言うことである。