1   本稿の執筆にあたっては,今野浩一郎,岩波 基,太田浩司,神戸伸輔,Joe Kiuchi, 小山明宏,Jerry Ferrel, 坂本恒夫,新垣 隆弘,田中正,照屋浩児,細野薫,増田悦佐,宮川務,村瀬英彰,矢倉要,和光純,和田哲夫の各氏にご示唆・ご教示いただいた。また,学習院大学経済経営研究所スタッフセミナーおよび日本経営財務研究学会全国大会においてほかにも有益なコメントをいただいた。ここに記して感謝の意を表したい。なお,本稿の内容については全て金田に責任がある。また,本稿の一部は学習院大学経済経営研究所の研究プロジェクトの資金を活用して行われた研究の成果である。あわせて謝意を表したい。

2   John R. Hicks は1972年のノーベル経済学賞をKenneth J. Arrowと共に受賞している。

3   銀行・信用金庫等にヒアリングした結果,金融機関によって基準は異なるものの,収益物件やアパート経営に対する融資を中心に法定耐用年数やそれに準じた基準を持つところが多く,耐用年数越えは「処分価値がなくなる」「古い物件は賃借人が見つけにくい」といった理由で融資が難しいとの見解が多くみられる。なお,きらぼし銀行は耐用年数越えの物件について,通常の審査と比べ高度な融資判断が求められるとしている。また,住宅ローンでも耐用年数を考慮する金融機関も存在し,日本の融資慣行における耐用年数の重要性を示しているといえよう。

4   峰村(2012)は,「法定耐用年数は減価償却費を算出するための便宜的なものであり,住宅の物理的な耐用年数や実質的な資産価値と何ら関係がない」と述べている。また,小松(2010)は「耐久性よりむしろ使い方が問題」として,修繕・メンテナンスによる長命化の可能性を示唆している。

5   なお,上記は2021年12月における,池田泉州銀行,きらぼし銀行,京都信用金庫,長崎銀行,長崎三菱信用組合,みずほ銀行の方へのインタビューに基づいている。ここに記して感謝したい。なお,本稿の内容・見解については全て金田に責任がある。

6   住宅ローンの支払額等の計算は三菱UFJ信託銀行のサイト「住宅ローン・シミュレーション」による。

7   本稿では捨象している新築住宅に対する固定資産税の減免など税制面の利点も考慮すれば,新築を購入するインセンティブはさらに大きなものになるであろう。