1   所得代替率とは,65歳の高齢者が受け取る年金額が,現役男子のボーナスを含めた平均手取り収入額に占める割合のことである。

2   例えば,日本経済新聞は,「国民年金「5万円台」維持へ」(2022年9月28日),「国民年金底上げ探る 財源懸念,会社員の目減りは限定的」(同9月29日),「年金,小手先の改革に限界 給付下支えの議論開始」(同10月25日)と,立て続けに2つの改革案の内容を報じている。厚生労働省が作成したとみられる試算や資料を引用していることから,厚生労働省による“アドバルーン(観測気球)”の記事であると思われる。なお,非正規労働者への厚生年金の適用拡大をさらに進める改革案も,年金部会で提案されることがほぼ確実であるが,これは前回の年金改正からの既定路線であり,特に目新しい論点ではないため,本稿では議論を省略する。

3   37.75%は,2046年の基礎年金の所得代替率26.5%の半分と2025年の所得比例部分の所得代替率24.5%を合計した値。39.05%は,厚生労働省試算の追加試算@における2033年の基礎年金の所得代替率32.9%の半分と2033年の所得比例部分の所得代替率22.6%を合計した値。

4   13.25%は,2046年の基礎年金の所得代替率26.5%の半分であり,16.45%は,厚生労働省試算の追加試算@における2033年の基礎年金の所得代替率32.9%の半分の値。

5   39.05%は,厚生労働省試算の追加試算@における2033年の基礎年金の所得代替率32.9%の半分と2033年の所得比例部分の所得代替率22.6%を合計した値。一方,43.9%は追加試算Aにおける2033年の基礎年金の所得代替率37.0%の半分と2033年の所得比例部分の所得代替率25.4%を合計した値。

6   もちろん,将来,この制度が十分に定着した後には,代表的な個人にとっては,半額の国費分も税で負担されているはずであるから,得とは言えない。

7   厚生労働省の2020年試算の解説としては,この西沢(2021)の他,中嶋(2022)が優れている。

8   この指摘及び計算は,筆者の知っている限り,島澤(2019)が最初に行ったものである。