修了後のこと - 修了生座談会

修了生座談会 2017

司法試験合格者 座談会 2016

念願の司法試験に合格した法科大学院修了生3名が若松良樹教授のもとに集結。学習院で過ごした充実した日々を振り返りながら、これから法曹を目指す学生たちに向けてのアドバイスや、自身の将来の夢などについて熱く語り合っていただきました。(インタビュー実施日:2017年10月16日)

法曹への道のはじまり、
学習院法科大学院との出会い

若松教授
今年司法試験に合格を果たした3人の修了生に集まっていただきました。おめでとうございます。まず最初に、法曹を目指したきっかけ、そして本法科大学院を選んだ理由を教えてください。
小野
私の地元は自分が高校生の時、いわゆる弁護士ゼロワン地域でした。そのため1人目の弁護士の方が赴任してきた2008年、ニュースになったことがありました。その時に漠然と弁護士に興味を持つようになりました。明確に法曹を目指すようになったのは、大学で所属していた学生団体の法律相談所での経験をしてからです。実際に相談に来た方が法律のアドバイスによって、不安だった顔を少しほっとした表情に変えていく様子を目にし、弁護士のやりがいを知りました。学習院を選んだ理由は、学生時代と環境を変えたかったからです。学部は多人数だったので、周りに埋もれ、自分をうまく出せない感覚を日々感じており、少人数制の学習院にひかれました。ですので、受験は学習院に絞っていました。
白鳥
幼い頃から人を喜ばせたり笑顔にしたりすることが好きだったこと、自分を常にブラッシュアップし続けたい性格であったことが、今に繋がっていると思います。そのような性格に合う職業は何だろうと模索していたのですが、学部の4年時に、裁判所や弁護士事務所を見学した際、活き活きと働く法曹の姿や、当事者の切迫した様子を目の当たりにして法曹を目指すことにしました。私は学部も学習院の法学部出身で、前研究科長であった大橋先生をはじめ、本学の先生たちの授業がわかりやすいと感じていました。また授業参観で5?6人の生徒に対してぐいぐい先生が質問している風景をみて、こんなやり取りをしていたら本当に試験に合格する力がつくのだろうなと感じ本学を選びました。他のロースクールは受けていません。
小暮
大学時代に弁護士資格を持っている先生と出会い、その人に憧れたことがきっかけです。生き方、考え方、すべてを尊敬している方で、憧れが募り先生が身を置く法曹の世界へ進みたいと考えるようになり、大学3年生の頃、はっきりと法曹を目指すことを決めました。学習院(未修者コース)に決めたのは、法曹を目指すと決めた時期が遅かったため、自分のレベルに自信がなく、でも努力は誰よりもしようと思っていたので、その努力を救ってくれるような大学院はどこだろうと探していた時、少人数制の学習院法科大学院であれば期待通りの教育を受けることができると考えたからです。少人数ならば、努力している自分の姿を先生が見ていてくれて、その気持ちをくみ取ってくれるのではと思いました。また、人数が少ないのでみっちり教われると考え進学を決めました。

基礎知識をどのように使うかを
目的にした実践的な授業

若松教授
みなさんも挙げていただいた本学の「少人数制」ですが、やはり先生と学生の距離が近い。学生ひとりひとりをしっかり把握している面倒見がよい先生が多いのが特徴ですよね。その分学生は授業がきついのだろうけれど、真剣に向き合ってくれるからこそ鍛えられたのではないでしょうか。大規模校にももちろんいい面はあると思うのですが、学習院は幼稚園からずっと少人数制ですから、少人数制へのこだわりやノウハウは強いと思っています。それでは次は、入学してからのことを伺っていきたいと思います。まずは印象に残っている授業のことを聞かせてください。
小暮
特に印象に残っているのは、神前先生の「国際私法」です。理解までに時間がかかるタイプなので大変でしたが、悩んでいる箇所に気がついてもらえたことがありがたかったことを覚えています。「最近悩んでるね」「君は焦るクセがあるから気をつけなさい」といった、学生の個性に合わせた的確なアドバイスにとても助けられました。
白鳥
よかった授業を挙げればキリがないのですが、強いて言えば岡先生、能見先生、長谷部先生等は、あてられて答えると本当にわかっているのかを試してくださり、苦しいですがありがたかったです。予習をして、自分でこうかなというところまで回答を用意していくのですが、やっぱり表面的な理解のことも多く、違う角度から質問されると答えられない場面もありました。けれど、司法試験では考えたことがない問題もあるので、わからない…と苦境に立たされた時、どうやってひねり出すか、そういった訓練ができたと実感しています。
小野
2つあります。ひとつは入学してすぐの長谷部先生の「民事訴訟法1」。これはインパクトのある授業でした。1学年20数人と少人数にもかかわらず、それを更に2分割して10数人に1人の先生がつく。だから必ず毎回あたるんですね。既修ながら全然知識がない状態で入学したので、予習で長い時間を使いました。それでも授業ではうまく答えられないことが多く、更には詰まっても逃してくれずにそのまま返答を待っていたり、パスしても隣の人が答えたあとまた自分に戻ってきたりと、学部時代とはまったく違う授業の形式に、洗礼を受けた感じでした。もうひとつは松村先生の「破産法」と「民事再生法」です。法解釈、判例の理論やそれに対する学説も大事だけれども、その議論はそれでいいから、事件の解決はどうする?ということをとにかく聞かれる授業でした。具体的な事案に対して、どういう結論をとるのかを必ず聞かれる授業でした。これも予習が大変でした。毎週何時間かかったかわからないくらい大変でした(笑)。

一人ひとりの専用机がある
自習室、蔵書が充実した図書館
学習環境も魅力のひとつ

若松教授
司法試験は基礎知識を試すのではなく、基礎知識が使えるかどうかを見ている試験。基礎知識が入っていることが前提で、揺さぶりをかけてくる問題があります。試験では1問や2問は誰もが頭がまっしろになるものがあると思います。そこで何もできないか、あがくことができるかの違いが大きいのです。知っていることをどう使って切り抜けるか。本学では日々、基礎知識をどのように使うかを教えているので、先生との日々はきっと大変でしたよね? そのつらさが今日の合格に繋がるのです。さて、次は本学の環境について聞きたいと思います。司法試験は1回で受かる方ばかりではないので、何度も挑戦する方をどこまでケアできるかが大事だと思っています。施設や環境ではどんなことが挙げられますか?
小暮
卒業すると今までの学習環境が使えなくなる学校もある中、本学はずっと同じ環境を使用することができ、在学生と同じように授業も聴講できる。ぼくは家では勉強できないタイプだったので、本当に助かりました。特に自習室の存在は大きく、朝から晩まで自分の自習室で過ごし、一番勉強をした場所です。自分だけの専用机があったことに感謝しています。
白鳥
自習室は愛着がわきますね。自分の部屋よりも長くいた場所でしたから。場所も広く、机の他に棚もあり、気持ちにゆとりを持って使えました。合格しても去りがたく、思い出に写真を撮るほどでした。
小野
私は法科大学院の学生図書室にお世話になりました。判例集がすべてそろっているので授業のためにコピーをしに行ったり試験対策の参考書も色々あるので結構頻繁に通っていましたね。法学部経済学部図書センターも通っていました。こちらは蔵書が充実していて、ほとんど揃うイメージです。自習室ももちろん活用させてもらいました。閉室の23時まで残っているいつものメンバーは顔見知りといいますか、戦友のような存在に近くなっていました。

学びをサポートする
支援制度のありがたさ

若松教授
少人数の副産物といいますか、スペースが大きくとれたのですね、だから自習室は専用の机と棚を用意できています。学校によっては、席取りの競争があり不便だと耳にすることもあります。できる限りそういったストレスや不便は解消して、学生には試験に集中できる環境を整えることも学校の義務かと思っています。支援金制度・特待生制度も同じです。アルバイトをしながら司法試験に挑戦する方もいます。難関の試験を合格するには、勉強する時間も費用もかかりますから、経済的なサポートは重要です。司法試験勉強に集中してほしい。人生をかけている学生さんをフォローしたいとの思いから本学では支援制度も充実しています。制度を利用された方はいらっしゃいますか?
白鳥
活用させてもらいました。本学法学部出身の入学者ということで、1年間学費免除していただいたのち、2年生3年生は、前年度の成績がよかったので、結局3年間学費を免除していただきました。すごく助かりました。模試の受験料補助制度もあり、4万円弱もする全国模試の受験料を負担してもらいました。学校の授業を頑張ることは、経済的なメリットにもなり、もちろん試験対策にもなりますから、おすすめです。あと、活用という面でもうひとつあります。「法務研究所」では月一回のゼミと、科目別のゼミが開講されており、すべてに参加していました。授業はソクラテスメソッドをとりつつも基本は講義の形式でしたので、知識を入れるイメージ。一方で法実務講座は、試験の過去問などへの解答を書いて個別に添削してもらい、授業で教わったことをうまく出せるか確認するイメージ。授業はインプット、法務研究所の法実務講座はアウトプットと使い分けて活用させてもらいました。
若松教授
OB法曹たちによる「法務研究所」も学習院の強みですよね。本学を卒業した熱い先輩たちが、自分の得意分野を学生にたたき込んでくれる貴重な体験ができます。現役の法曹が教えてくれるので、試験はもちろんですが、皆さんも今後更に「法務研究所」と繋がりを持ち、人脈づくりや新しい知識の吸収に役立ててくれたらと思います。皆さんは、試験勉強の途中、やる気が下がる経験はありませんでしたか?モチベーション維持で工夫されたことがあれば、教えてください。

やる気の持続方法とは?

小野
仲間の存在が大きいです。メンバーと毎日のように学校で会い、一緒に自主ゼミを組んで議論し合い、互いに研磨しました。そのおかげか、モチベーション低下はあまりありませんでした。友達を見て、負けていられないと常に感じていたものです。大学院での一番の宝は友人かも知れません、一生ものだと思っています。
白鳥
「法実務講座」で毎回違う先生から頑張れ!といってくれたことが励みになりました。エクスターンシップにも参加させてもらい、実務の一端を拝見できたことも大きかったと思います。実際の仕事を見て、法曹として働きたい気持ちに拍車がかかりましたね。将来の姿を見ることで、今の勉強の意味を再確認したといいますか、はっきりと目標が見えたことがモチベーション向上に繋がったのだと思います。
小暮
勉強は辛いですが、実はこれまで本気で勉強したことがなくて、勉強することが楽しかったのが事実です。それから、自分のためにではなく、例えばお世話になった人のために勉強する。そのように捉えると自分が辛いことはどうでもよくなったんですね、そんな場合じゃない!お金出してもらったとか、期待してくれている人のために頑張れたと思います。あとは、自習室と先生方がいらっしゃる研究室が近く、行き詰まったり困ったりした時には気軽に先生に質問することができたこともモチベーション維持に繋がったと思います。また、小野さんが仰っていたように、仲間の存在は本当に大きいと思います。ぼくも同じマンションの違う階に住んでいる仲間がいて、いつも励みになりました。
若松教授
これから自分達のように法曹を目指す方へ何かコメントはありますか?
小野
先ほどのモチベーションと重なるのですが、仲間をつくることをお勧めします。同じ目標を持つ仲間は本当に心強いです。学習院の伝統なのかもしれませんが、学生同士が共に協力しあうような空気があります。ここで仲間と共に励んでしてほしいと思います。
小暮
明るく楽しく元気よく、お互いに切磋琢磨してほしいです。質問しやすい環境があること、必死に勉強している人には、応えてくれる環境があることが、本学の強み、最大限に活用して合格を勝ち取ってほしいです。教科書を書いている先生がいることも強いと思います。教科書を読んでいてわからなければひとりで悩まずに書いている本人に質問できる。これは大きな強みではないでしょうか。

法曹の国際的な活躍を見据えた新プログラムが始動

若松教授
話は変わるのですが、2017年から本学ではインドネシアと交流プログラムを実施しています。法で紛争を解決していく法整備支援に日本も注力している中、本学もインドネシアと交流を続けています。ゆくゆくは法の運用までタッチできるような人材を育てることも視野に入れスタートしたプログラムです。法曹の国際的な活躍が益々高まりを見せている昨今、このような制度も是非活用していただければと思います。

ここがスタート地点。これからの夢へ

若松教授
最後に、これからの目標を教えてください。
小暮
ぼくの人生のテーマは「周りの人たちが幸せであってほしい」。それを実現する方法を今は模索しているところです。
白鳥
弁護士を目指して入学しましたが、検察官や裁判官も視野に入れ12月から1年間の修習に全力で取り組み、その中で進路を考えたいと思っています。
小野
私は、司法試験と並行で進めていた公務員試験も今年合格し、地方自治体への就職が決まっています。修習を先に延ばし、一度公務員として働いてみて、行政における法曹の需要を肌で感じてみたいと思います。将来的に自治体内弁護士になることを視野に入れることで、弁護士の新しい働き方を開拓できたら面白そうだなと考えているところです。
若松教授
皆さん、本日は色々なお話をありがとうございました。これからがスタートですね。どうか、その輝きをそのままにこれからどこまでも羽ばたいてください。教職員一同、あなたたちの活躍を心から願っています。

MEMBERS

司会進行
若松 良樹 教授(専門分野:法哲学)

京都大学大学院法学研究科基礎法学専攻博士後期課程単位取得退学(博士(法学))。
1989年東和大学工学部専任講師。
1994年成城大学法学部助教授(2001年より教授)。
2013年4月学習院大学法科大学院教授(現在に至る)。
日本法哲学会に所属。
小暮 駿生 東洋大学法学部法律学科出身。2015年学習院大学法科大学院修了(法学未修者コース)。
2017年司法試験合格。
白鳥 葵 学習院大学法学部法学科出身。2017年学習院大学法科大学院修了(法学未修者コース)。
2017年司法試験合格。
小野 光 東京大学法学部出身。 2016年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。
2017年司法試験合格。