修了後のこと - 修了生座談会

修了生座談会 2018

司法試験合格者 座談会 2018

念願の司法試験に合格した法科大学院修了生4名が長谷部由起子教授のもとに集結。学習院で過ごした充実した日々を振り返りながら、これから法曹を目指す学生たちに向けてのアドバイスや、自身の将来の夢などについて熱く語り合っていただきました。(インタビュー実施日:2018年10月24日)

法曹を志したそれぞれのきっかけ
学習院法科大学院を選ぶまで

長谷部教授
みなさん、2018年の司法試験合格、本当におめでとうございます。長い戦いお疲れさまでした。早速ですが、みなさんが法曹を目指したきっかけと、本法科大学院を選ばれた理由を教えてください。
戸島 
少し特殊かもしれませんが、具体的な将来像がないままロースクールに進み、受験を終えたというのが正直なところです。常々資格を持ちたいと思っていたことが法曹志望へのきっかけになっているのではと思います。学部から学習院で学んでいたこともあり、ロースクールはここだけ受けました。入ってみて自分の選択が正しかったと感じたのは、少人数制との出会い。学力も高くないまま入学したので、大人数だと埋もれて、コンプレックスを抱えてしまい、今日の自分はなかったのではと思えます。先生方の厚いフォローを受けながら勉強ができ、自分の能力に合わせて成長ができた環境でした。
伊藤 
中学の時に読んだ漫画の中で、「おまえは普通に生きて普通に死ぬ」と主人公が告げられるシーンが衝撃で(笑)。先が見えてしまう人生をイヤだと感じるようになり、特殊な技能を身につけようと思ったのが司法試験を目指したきっかけです。大学が大人数だったので、学ぶなら絶対に人数が少ないところが良いと決めていました。あとは駅から近いこと、緑があること、下見に来た時にとても好感を覚え、本学への入学を決めました。
齋木 
中学・高校と勉強嫌いで成績が悪かったのですが、ある時期に女の子向けのラブコメディ映画を観て、弁護士になっていく主人公の姿に憧れたのがはじまりです。無理かもしれないことに挑戦したいと決意しました。甘かった自分から変われるかもしれないと思いました。学部が学習院でしたので馴染んでいたことが一番の理由です。緑の多いこのキャンパスが好きでした。貴重な時間をいかにストレスなく過ごすかを考えた時、長谷部先生をはじめ、旧知の先生たちがいることも頼もしかったですし、少人数教育も自分に向いていると感じました。
石井 
私は他大学で、法学部政治学科に所属していました。ゼミで中国の法制度に関心を持つようになり、それから法に関心を抱くようになり、法と密接に関係する法曹の道を選びました。学部時代には法学の勉強はしておらず、本学に入学してからになります。法科大学院の情報を集めていた際、学習環境が良好なこととアクセスのしやすさにひかれました。入ってからは少人数制の良さを知り、ここで良かったと感じるようになりました。また、法学の勉強を学部でしてこなかったこともあり、学習院法科大学院は受験科目が少ないことも、理由のひとつでした。

忘れがたき恩師と授業に
思いを馳せて

長谷部教授
みなさん、それぞれきっかけや理由があってこの道に進んできたのですね。本学を選んだ理由の中にもありましたが、本学は先生とも、学生同士とも距離が近いのが特長ですね。少人数制だからこそ、顔も名前もすぐに覚え、授業だけではないコミュニケーションがあったように思います。その距離が近い先生たちとの授業について聞いてみたいと思います。
戸島 
刑事訴訟法を担当されていた女性検事の先生が印象に残っています。いつも分からない箇所を教えてもらい、2〜3時間教えてもらったことも。はっきりと言われる方で「あなたはここの基礎がなっていない!」と、バッサリ。すごく刺激になりました。悔しくて先生の前で号泣したこともありました(笑)。どんな時も、先生は諦めずに教えてくれました。本当に感謝しかありません。
長谷部教授
先生達も一緒になって戦っていますからね。今、話題に出ていたのは、派遣の実務家教員として教鞭をとっていた現役の検察官の方です。そういう実力のある教員が揃っているのも本学の特長ですよね。
伊藤 
私は髙橋先生の刑事法応用演習が印象に残っています。とにかくゲストの先生がたくさん来ていたことを覚えています。保護観察官や、法務省の官僚の方が授業に登場し、実務に就いた後に役立つことを学べたと感じています。長い試験勉強の中で、モチベーション維持にも繋がったと感じています。検察官の人脈で、法律に携わる様々な方の話を聞く機会は貴重であり、有意義な時間でした。
齋木 
長谷部先生に担当いただいた法文書作成指導は、5人という少人数で行い、みっちりと自分の答案をその場で直していただく機会となり、ズバッと、どこがダメだと指摘いただける貴重な時間でした。今でもこの授業で教わったことは、これからの基礎になると感じています。
長谷部教授
事前にペーパーを提出してもらい添削して、当日はその内容を見ながら授業を行うのですが、それぞれの個性や論理の運びなど、良い味を出しているなと思っていました。添削は大変でしたが、みなさんの文章を拝見できることが楽しかったです。授業といえば、模擬裁判は本番さながらで、準備も大変なこともあり、みなさんの記憶にも残っているのでは?
戸島 
模擬裁判は基本書だけの机上の勉強から、実際に実務でその知識をいかにアウトプットして、具体的にやっていくのか、その架け橋となる授業だと思っています。実務家教員の先生から、「この知識はこういう風に使うんだよ」と教えていただける大変ためになる機会でした。
齋木 
書面を作ったり原告役の友人と頻繁にコミュニケーションを取り、訴訟の方向を決めたりと、模擬法廷で実際の裁判と同様に行っていく過程は、弁護士になったらこういう風になると将来を近くに感じる経験でした。

合格への秘訣、それは?

長谷部教授
みなさんが話してくれたように、たくさんの優秀な先生や、実務で役立つ講座が本学の魅力だと、自負しています。今度は、司法試験の勉強について、気をつけていたことを聞きたいと思います。
戸島 
基本書でインプットしてアウトプットとして過去問を解くというのを重要視していました。そしてその比率を1:1に確保することを意識していました。あとは受験直前期になると、法律系の受験雑誌には今年の試験のヤマが出る。それが結構当たるので、チェックするようにしていました。
伊藤 
同じく、インプットとアウトプットにつきると思います。特にアウトプットは、優秀とされる答案と自分の答案を比較し、分析して、できていないところをインプットして、そして更にアウトプットをひたすら繰り返していました。決してゼロになることはないのですが、インプットする箇所をだんだん減らすように努力していました。
齋木 
論文を書くのが苦手だったので、とにかく手を動かし、週に最低3通は手書きの答案を書くようにしていました。途中答案を防ぐために、あえて時間を短く設定して書き上げる練習もしました。短答式の勉強では、論文試験の勉強にも繋がるよう、全ての肢について三段論法で答えられるように繰り返し勉強しました。

心が折れかかった時の対処法

長谷部教授
インプットとアウトプットはやはり大切ですよね。この長い試験勉強中、優秀なみなさんでも、やはり心が折れてしまうような瞬間はあったかと思います。そういった際は、どうやってモチベーションを維持していたのでしょうか。
石井 
ロースクールの生活は本当に華がないんです(笑)。勉強以外に気がまわらない、余裕もないのが現実。そんな生活を送っている時、大学の友人が他業種で活躍する姿と自分を比べると、焦りが出ました。でも、「今はきついけれど、将来法曹として活躍するための基礎体力をつける大事な時期なんだ。大きく羽ばたく為に必要な時だ」と、繰り返し自分に言い聞かせるようにしていました。先生方が励ましてくれることも大きかったです。キャンパスで出会うと「勉強の調子どう?」「良くなってるよ!」など、親身になって声をかけてくれ、乗り切る力をもらいました。
齋木 
私は、4度の受験を経験しましたが、9月の発表時にはいつも、こんなにやったのにダメなのかと落胆しました。その度に、弁護士を目指すきっかけとなった映画を観て、初心を思い出していました。また、行き詰まった時は、思い切って「メンテナンス日」を作り、好きなことだけやってリフレッシュをしていました。
伊藤 
私は、モチベーションを無理に維持しようとしていなかったように思います。長丁場だと思わず、今日のやることをひとつずつやるのを毎日繰り返していました。足元だけを見てちょっとずつ、確実に進むように。そうすると、じんわりとモチベーションも回復できていたように思っています。遠くを見すぎず、やれることをやる、その気持ちで乗り切りました。
戸島 
2回だけ挑戦しようと思って臨んだのですが失敗し、一旦就職活動を行ったことも。でも、未練が残り、そんな姿を見た親から「三度目の正直だからもう一度挑戦してみたら?」と背中を押してもらい、もう1回やってみようと1月から本格的に勉強を再開しました。4ヶ月という限られた時間の中だったからこそ、あまり気持ちに波が立たずに短期集中で乗り切れたのかもしれません。そして、他の情報に惑わされるのを恐れ、スマホは封印していました。一切を遮断して、唯一連絡を取るのは両親だけという状態でモチベーション維持に努めました。

緑があり、集中できる環境がいつも勉強をサポートしてくれた

長谷部教授
そうですよね、苦しい時はありますよね・・・本当に、みなさん頑張りましたね。さて、みなさんが学んだ本学の環境はどうでしたか?
石井 
図書館がとてもありがたかったです。文献の検索システムも助かりました。調べ物をする上で、学校という環境は集中でき、目標を同じくする仲間もいて一番勉強をした場所でした。
齋木 
こんな都心に緑があることに救われていました。頭が混乱した時は、森の中を歩いたり走ったりして、身体を動かすことで頭を切り替えていました。四季を感じながらリフレッシュできる環境があったことに感謝しています。
長谷部教授
馬場があり、自然があって、四季折々の表情がある。ここは私も好きな環境です。図書館の話が出ていましたね。法経図書センターの蔵書は、非常に充実しています。卒業して法曹として活躍している方も利用するほど。みなさんも是非活用してくださいね。それから、トレーニングルームには様々なトレーニング用の機器が揃っています。司法試験は知力はもちろん、体力も必要ですからね。利用した方はいらっしゃいますか?
石井 
はい!息抜きにもなりますし、身体を動かして勉強のメリハリにも役立ちました。
戸島 
ランニングマシーンはよく使いました。10km走ったりして、スッキリしてまた勉強に向かっていたことを思い出します。
齋木 
環境といえば、自習室からは富士山が見えることもありましたね。
伊藤 
あとは、駅から徒歩30秒程度というアクセスの良さはすごいですよね。

成績上位者に付与される学費減免なども充実

長谷部教授
学生相談室というのもあります。精神的にダメージを抱えてしまった時に相談にのってくれる体制も整えています。ケアする体制といえば、授業料減免も充実していますよね。
戸島 
私も学費の半額免除を受けました。本学は少人数制なので、大人数制に比べて頑張れば成績上位になれる。そうすると、学費の全額免除か半額免除が受けられる。頑張り次第で、金銭面でも負担が軽くなりました。

これからのグローバル化を睨んだ
インドネシア国際交流プログラム

長谷部教授
少し話題を変えますが、2017年から始まった「インドネシア国際交流プログラム」に参加された方はいらっしゃいますか?
石井 
はい。有意義な時間でした。元々国際関係に関心があったので貴重な経験になると思い参加を決意しました。現地では最高裁判所、憲法裁判所、地方裁判所を訪問しながら現地の法律家と交流を図り、施設や設備を見学させていただきました。法整備支援として日本やオーストラリアが和解・調停などの法整備支援を行っているのですが、日本がどのように法整備支援に関わっていたのかを理解する良いチャンスに恵まれたと感じています。行って良かったと思っています。

これからの道
そして、目指す君へ

長谷部教授
グローバル化が進む昨今、法曹は国内に限らず活躍することが予想されます。海外の法を知るこのような制度を活用していただければ良いですね。長い時間、みなさんのお話を聞かせていただきました。最後に、これからの目標と、合格者としてあなたたちに続く後輩にメッセージをお願いします。
石井 
私は今、AIのことが気になっています。急速に発展していく様子を見ていると、社会のあり方や法曹の活動にも影響があるように感じています。動向に注視しながら、法曹として関わっていけるようにしていきたいです。贈る言葉としては「時間や体力は有限。だからこそ、やるべきことと、自分には合わないのでやらないこと、その取捨選択が大事」ということです。メリハリをつけながらしっかり頑張ってほしいと思います。
齋木 
いつでも依頼者の側に寄り添うことのできる弁護士になりたいと考えています。知的財産法選択だったので、知財分野で企業をバックアップする仕事ができたら嬉しいです。 受験生の皆様には、ロースクールでは、失敗を恐れずにいてほしいと思います。恥ずかしい、悔しいと心が折れそうになることがあっても、それは必ず力になると思います。そして、時間は自分が思うよりも早く過ぎていくので、夢に向かって毎日を悔いのないように過ごしてください。
伊藤 
最先端の分野として宇宙関係がこれから進むと思っています。その分野に進出したいです。もちろん海外にも関心があり、ロシア関係に今、注目しています。司法試験に挑戦している方へ。長丁場なので、最後に重要になってくるのは「踏ん張り」です。『モンテクリスト伯』の中の言葉に「待て、しかして希望せよ」というものがあります。その通り焦らず、でも決して諦めないで進んでほしいと思います。
戸島 
本学で学ぶうちに、行政側に携わりながら政策や法改正に関わりたいと思うようになりました。具体的にはこれからですが、進んでいきたいです。伝えたいことは、「勉強だけに専念できるのは、人生の中でこの時期だけだよ」ということ。贅沢な時間でした。たくさんの本を読み、楽しんでほしい。社会に出てからはこんな機会はない。今を、大いに楽しんでください。
長谷部教授
これからも大変だと思いますが、本学で学んだことを活かして法曹界で活躍することを楽しみにしています。長い間勉強を頑張れたのですから、この先もきっと大丈夫。頑張ってください。

MEMBERS

司会進行
長谷部 由起子教授(専門分野:民事訴訟法)

1983年成蹊大学法学部専任講師
(1985年より助教授、1994年より教授)。
1998年学習院大学法学部教授。
2004年4月学習院大学法科大学院教授(現在に至る)。
日本民事訴訟法学会、日本私法学会、金融法学会に所属。
2012年より司法試験委員会委員。
戸島 真梨子 学習院大学法学部法学科出身。2016年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2018年司法試験合格。
伊藤 翔太 國學院大学法学部法律学科出身。2017年学習院大学法科大学院修了(法学未修者コース)。2018年司法試験合格。
齋木 美帆 学習院大学法学部法学科出身。2015年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2018年司法試験合格。
石井 健太郎 慶應義塾大学法学部政治学科出身。2017年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2018年司法試験合格。