修了後のこと - 修了生座談会

修了生座談会 2019

司法試験合格者 座談会 2019

2019年度司法試験に合格を決めた法科大学院修了生の4人が恩師の野坂教授のもとに参集。母校学習院で過ごした貴重な時間に思いを馳せながら、受験の秘訣や法曹を目指す皆さんに向けたメッセージなどを、語りあってもらいました。(インタビュー実施日:2019年10月24日)

この道を目指した熱き思い
そして、学習院法科大学院
との出会い

野坂教授
皆さん、2019年度司法試験合格、本当におめでとうございます。まず最初に、法曹を目指したきっかけと、本法科大学院を選ばれた理由を教えてください。
畑中 
大学時代に本学法学部の草野芳郎先生の『和解技術論』を読み、共感を覚えたことが法曹を目指したきっかけです。たまたま父が草野先生と友人だったこともあり、薦められ著書を読んだのですが、「和解」による紛争の平和的な解決方法にとても感銘を受け、法曹のやりがいと可能性を感じました。私は他大学出身だったのですが、HPやパンフレットでいろんな学校を調べたところ、学習院大学法科大学院が少人数でサポート体制が充実しているほか草野先生をはじめとする著名な先生方の下で学びたいと考え、ここしか道はないと思い至りました。
宇津木 
僕は中学と高校が学習院だったのですが、高校1年生の時に、ふとイタリアに留学をしよう!と思いたちました。最初は何事も挑戦だ、くらいの考えで行ったのですが、1年間の留学を経て、自分はいろんな人に支えられているんだなと実感。その思いはずっと続き、大学で学部を選ぶ段階で、僕も人を助ける仕事がしたい、それができるのは法曹ではないか、と考えたのがきっかけです。
中屋 
僕は一度社会人になってからの挑戦で、民間の会社で法務の業務に就いたことがあって、その業務がすごく面白かったのでキャリアアップの一環として弁護士を目指そうと考えました。ただ、僕が大学を卒業した頃は、ちょうどロースクールができて間もない時期で、興味があって少し法律の勉強をしたんですが、すぐにあきらめてしまったんですよね。それが業務で法律に触れるようになってもっと主体的にやりたいなと感じて会社を退職して進学を決意しました。学習院を選んだのは、経済的なコストを考えて、2年間の学費が免除される特待生制度があったことが1番の理由です。決め手となったのは、他大学と比較して教授陣の顔ぶれが豪華だった点で、もう学習院しかないと思いました。
竹内 
きっかけは弁護士だった祖父の影響だと思います。祖父とは高校生の頃一緒に住んでいたのですが、当時は、手伝ってと言われるがまま、なにげなく仕事を手伝ったりしていただけでした。改めて具体的に考え始めたのは大学生の頃。私も他大学だったのですが、当時私が通っていた大学が少人数制だったので、そこが学習院と同じような環境だったこと、あと、カリキュラムがスタンダードでバランスが良いと感じたので、自分には向いているのではないかと学習院法科大学院への進学を決めました。
野坂教授 
竹内さんは学芸学部出身でいわゆる純粋未修という貴重な存在ですよね。未修コースの学生は全体の3分の1程度。そういった未修の方々も勉強しやすい環境が学習院には整っています。また、中屋さんが利用した支援金制度・特待生制度も充実しています。難関の試験に合格するには、勉強する時間も費用もかかりますから、経済的なサポートは重要。試験勉強に集中してほしいとの思いから本学では各種の支援制度を導入しています。

長い試験勉強に心が揺らいだ
その時の“やる気スイッチ”とは?

野坂教授
ここにいる皆さんは在学中落ち着きがあり静かな印象でしたが、皆さん、やっぱりうちに秘めた強いものがあるんですね。その強さも時には揺らぐこともあったかと思いますが、モチベーションを保つ秘訣はありましたか?
畑中 
僕は、“悔い”がモチベーションになっていました。僕は5回目の受験で合格したのですが、2回目、3回目あたりから、「ああすればよかった。こうすればよかった。」と悔しい思いが強くなり、それが勉強方法の改善、ひいては合格意欲へとつながっていったのかなと感じています。あとは、初年で受かった仲の良い同期友達の存在も大きかったです。その友達から、“お前も早く合格しろよ”と、常々励まされていたのは、振り返ると貴重でした。
宇津木
僕も仲間の姿はやっぱり励みになりました。ひたすら勉強に追われていたけれど、一緒に自習室で勉強している同志の頑張っている姿を横目で見て、自分を鼓舞することは多かったです。
竹内 
私はほとんど勢いで進んできたので、モチベーションを保つ方法を考えることがなくて。でも、一時期いきなりモチベーションが下がってしまったんです。その時は、真摯に接してくれる先生方の姿を思い出したり、いただいた励ましのメールを見返したりして、やる気を起こしていました。
中屋 
試験勉強を始めた頃は、勉強が楽しかったんですけど、最近はちょっと飽きてきてしまって(苦笑)、早く受験勉強をやめて実際の事案にあたりたい、という思いで頑張っていた気がします。

心身をリフレッシュさせる
学習院の環境

宇津木
気分転換は必要でしたよね。僕は構内にすごく好きな場所があって、そこで癒されてました。
野坂教授 
それはどちらですか?
宇津木 
血洗い池です。この都市にあって自然が広がる景色ですよね。あそこはなぜかホッとするというか、癒されました。
野坂教授 
「高田馬場の決闘」で、堀部安兵衛が血刀を洗ったという伝説の池ですよね。学生たちの憩いの場になっていて、植物も動物も見られて気分転換にすごくいい。やっぱり気分転換は大事ですから。そうそう、皆さんは、トレーニングセンターは利用しましたか?私は少しセンター開設に関わったんですけど、体を動かすと気持ちがいいもので、ちょっと運動して発散、そのあとは勉強も捗りますよね。
中屋 
僕は入学した頃からたまに利用してましたが、去年の春くらいから使い勝手がよくなったのでよく利用するようになりました。授業が終わって1時間ほどトレーニングして、自習室に戻って23時まで勉強しました。トレーニングセンターの使い勝手がよかったのは、すごく助かりました。使い勝手といえば、自習室もよかったです。机の割り当て、ロッカー、書棚とか充実していて、スペースがあるので、余裕をもって勉強できました。
宇津木 
自習室の多さと広さは秀逸でした。僕はほとんどの勉強を自習室でしていたので、いい意味で苦くも思い出の場所です(笑)。
竹内 
実のところ私は自習室をほとんど使っていなくて、図書館を利用していました。書物が豊富なのと、付随した自習スペースもたくさんあったので、もっぱら勉強はそこでした。
野坂教授 
司法試験は1回で受かる方ばかりではないので、何度も挑戦する方をどこまでケアできるかが大事だと思っています。そういった意味では、本法科大学院は施設も含めて充実しています。

将来法曹になった未来を見据えた
実践的な授業が、結局は試験でも
役立つ

野坂教授
さて、単刀直入に聞きますが、印象に残っている授業はありましたか?
中屋 
「刑事模擬裁判」の授業は役立ちました。僕は公判前整理手続が苦手で教科書を読んでも条文を読んでもさっぱりわからなくて(苦笑)。でも、模擬裁で実際に体験してみて、講義形式の「刑事実務」という授業でも習ったら、自然と理解が深まりました。それが今年の本試験でも公判前整理手続に関連した問題が出たので、あてはめで深みのある答案が書けたような気がします。
野坂教授 
それはすごいですね!
畑中 
中屋さん同様に「模擬裁判」は印象的でしたが、「起案等指導」も印象に残っています。3?5人に対して1人の先生で進んでいくので、少人数制のよさが格段に現れる授業のひとつでした。しかも教えてくださる先生がなかなか直接指導を受けることができない素晴らしい方々で、そんな先生方が直接答案を見ながら教えてくださる機会なんて、こんな贅沢な時間はないと思います。それにプラスして、法曹になった時の文章力が身につくと感じました。
竹内 
私は1年生の時の授業はすべて印象的で、特筆するとしたら、「判例事例研究」です。6人ほどの学生が判例を発表したりするのですが、判例の読み方などがじっくり学べて印象的でした。他の学生たちの発表も聞きながら、先生とのやりとりを聞くことで、理解が深まっていきました。
野坂教授 
司法試験に受かる実力をつけたいのは当然ですけど、やっぱり法曹になった時にそれを使いこなせる力をつけること。具体的な事案について実際に法律家としてどう考えるか、どう解決して行ったらいいのかを考える力がついた人こそが受かると思うんです。
宇津木 
野坂先生のおっしゃる通り、今考えると、試験と直接関係のない授業がためになっているなと実感しています。確かに勉強している最中は、自分は司法試験に合格したい一心なので、なぜ関係ない授業をやらなきゃいけないんだろうという思いも否めなかった。でも、いざ合格して実務をやりながら自分がどういう法曹になるのかと考え始めた時、法律がどういう風に使われているのかの実践的な授業がためになったと感じています。印象的な授業をひとつ挙げるとするなら、「支払決済法」です。手形や小切手を扱う授業なのですが、電子マネーとか交通系ICなど、いまどきの新しい分野で法律をどう使うかを考えるきっかけになる授業でした。

今だから話せる各々の受験対策のポイント

野坂教授
そうですよね。皆さんは合格しているからこそ、わかることがあると思います。ところで、司法試験の受験対策で重視したことはありますか?
中屋 
まず過去問をこなすことはきっとみんなも同じだと思うのですが、それ以外だと条文の勉強を特に重視しました。条文は法律解釈のスタートですし、試験の現場で参照できるのは六法だけですので、例え問題の所在がよくわからない問題が出ても、何か使えそうな条文を引いて処理できれば、最低限の点数がつくのかなと考えてました。
宇津木 
司法試験は、基本的には2時間で答案を書くことになるので、時間の使い分けが合否を決めると思いました。なので、普段から時間を気にしてストップウォッチをデスクに置いて、時間に追われるようにしていました。あとは、事実と法律の結びつき、司法試験は基本的にこういうことがあったという事実しか書かれていないので、それにどういう条文を使うかということにも気を留めて勉強しました。
竹内
私はあまり手を広げすぎないように気をつけようと、基本書と判例集と過去問、その3つを繰り返し、立体的に理解を深めるように勉強していました。あまり多くに手を出すことが苦手なタイプなんです。
畑中 
僕は中屋さんと似ていますが、まずは条文の理解を深めること。そして、法律の論点、問題となる点の理解を深めること。いわゆる司法試験でやってはいけないといわれている「論点パターンを貼り付けるだけで終わり」にはしないように心がけていました。
野坂教授 
いわゆる論点主義ですね。それぞれの論点は、そんなに簡単に特定の解答パターンにはめ込めるものではないです。事案というのは生きているので、過去のパターンに当てはめたところで本質をついてないことが多い。今目の前にある事案をどう解決すべきかが問われているのに、決まり切った答えしかできないようでは、法律家になって、実際に依頼人から来た要望には応えられないでしょう。それぞれの事案の特殊性に即して、関連する条文を引きつつ、どういった道筋で解決を図るか。これができるかできないかが、合否を分けるんです。そういったことを踏まえて、これから受験する人たちに、今後の目標とアドバイスをしてください。

同じ目標に挑む後輩達へのメッセージ

宇津木
基本的には、がむしゃらに勉強することかと思います。あとは、目的を持ってやってほしいです。勉強すればするほど見返りのある試験ではないので、自分にはこれが足りないなということを見極めて、自分なりの勉強法を見出すのが近道かなと感じます。
中屋 
ロースクールに来る人は1人で黙々と勉強しても受かりにくい人が多いかと思いますが、そういう人たちにこそ、ロースクールの授業は役立つと思います。日々の授業を大切にしてもらいたいなと思います!
畑中 
学習院に来るなら、やっぱり少人数制という良点をポイントに、同期や先輩、後輩といった仲間とのつながりを大切にして勉強してほしいです。
竹内 
私もそう思います。学習院は贅沢な教授陣に、少人数で教えてもらえますので、積極的に勉強してほしいと思います。

ここからがスタート未来へ広がる夢を胸に

野坂教授
最後に、皆さんの目標を教えてください。
宇津木 
日本の弁護士は大勢として、事が大きくならないと動かないところがあると思うんです。それよりも前に、世間話的な流れから、これは問題になりそうだなと感じる小事から解決できるような、弁護士になりたいと思っています。
竹内 
私はまだ具体的にどうしようか考えていないのですが、いろんなことをやりながら、来た案件は何でもこなせる弁護士になれたらなと思っています。
中屋 
僕も弁護士を目指してます。具体的にはまだ考えてないのですが、ただ、なるべく早い段階で独立したいなとは思います。それでいつか気の合う仲間たちと事務所を構えられたらいいなと思います。
畑中 
当初は裁判官志望でしたが、少し変わってきています。今、企業の法務部門に勤めていますが、私がキーワードにしている「紛争の平和的解決」が企業法務と関連している点に気づいたのです。また、昔から著作権が問題となるような芸術分野に興味があったので、企業法務もやりつつ著作権を専門分野として活躍できればと考えています。
野坂教授 
誰しも認める非常に難しい試験を、皆さんよく頑張ってクリアしましたね。これからはそれぞれの分野で力を発揮して、法の支配を担う優れた法曹として活躍してください。そのことを心からお祈りしています!

MEMBERS

司会進行
野坂 泰司教授(専門分野:憲法)

東京大学法学部卒業。
東京大学法学部助手、立教大学法学部教授を経て、
1994年より学習院大学法学部教授。
2004年より学習院大学法科大学院教授(現在に至る)。
2007年4月より2013年3月まで同法務研究科長。
日本公法学会、日米法学会、国際憲法学会に所属。
司法試験・予備試験考査委員。
畑中 智仁 日本大学法学部法律学科出身。2015年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2019年司法試験合格。
竹内 香織 津田塾大学学芸学部英文学科出身。2018年学習院大学法科大学院修了(法学未修者コース)。2019年司法試験合格。
宇津木 陽太 学習院大学法学部法学科出身。2018年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2019年司法試験合格。
中屋 竜博 青山学院大学経済学部第二部経済学科出身。2019年学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2019年司法試験合格。