修了生座談会

司法試験合格者 座談会 2023

司法試験合格者 座談会 2023

恩師である神前禎教授のもとに集まった、令和5年の司法試験の8名の合格者たち。学習院での日々に思いを巡らせながら、これから法曹を目指す皆さんに向けたメッセージや、学習院法科大学院の魅力、そして実際に行った司法試験対策などについて語り合ってもらいました。(実施日:2023年11月21日)

レベルの高い教授陣に
少人数で教わることのできる理想的な環境

神前教授
皆さん、令和5年司法試験合格、本当におめでとうございます。まず、皆さんが法曹を目指したきっかけと本法科大学院に入学された理由を教えてください。
浜田
私は以前、他のロースクールを卒業し、一度司法試験の勉強を中断していましたが、再挑戦しようと本法科大学院への入学を決めました。大学院の選定にあたっては、教授陣が素晴らしく、少人数で教わることのできる学習院法科大学院の環境なら確実に合格できると感じて、応募いたしました。
野村(和)
私も同じですね。もうひとつ、大学を中退して公認会計士の仕事をしていた私は、そもそもロースクールの受験資格すら認めてもらえないことが多かったんです。そんななかで、学習院大学は社会人経験を評価してくださり、快く受験の機会をいただけたので、入学を決意しました。
鈴木
僕は6年間ほど司法試験予備試験の合格を目指していましたが、論文試験に苦戦していました。その原因は基礎的な法律の理解不足だと分析し、法律の理論の理解を徹底的に鍛えられる少人数教育のロースクールを中心に受験。なかでも学習院法科大学院の非常にレベルの高い教授陣に惹かれました。授業料免除が得られたことも決め手のひとつです。

学会をリードする教授や実務経験豊富な先生方による
身になる授業

神前教授
それでは、これまで受けてきたなかで印象深い授業や実際に役に立った授業は何ですか?
林田
当時教授だった小松達成先生の民事取引法実務です。基本書や条文のみで学んでいた民法の実務的なお話を聞くにつれ、法曹になりたい気持ちも強固になり、勉強のモチベーションも向上しました。
植村
僕は2つあって、ひとつ目は長谷部由起子先生の民事訴訟演習です。試験科目としての法律だけでなく、法律の奥深さと学ぶ楽しさも知ることができました。もうひとつは、安村勉先生の刑事訴訟演習。厳しくも愛のある授業で、法律論のほか、答案の書き方を研究する必要性を実感しました。この2つの授業がなければ合格できなかったと感じています。
大野
学部の授業も担当されていた大橋洋一先生の公法訴訟実務ですね。授業の冒頭で、ご自身が大学院でより厳しい授業をする理由を「法曹は目の前にいる人を救わなければならない仕事で、法科大学院はそれを訓練する場だから」とおっしゃっていたことが、学部生の頃から学習院に在籍していた私にとっては印象的でした。
澤本
大橋先生は行政法Ⅰの授業の最初に「法科大学院は5年に一度認証試験があるので、どの大学院に行っても教えることは変わらない」とおっしゃっていて、第一志望の大学院に合格できなかった私は慰められ、勇気も出ましたね。
神前教授
本学の教授陣は、基本書を執筆し学会をリードするほどの研究者や、経験豊富で教育熱心な実務家の先生ばかり。両方の先生方のお名前が挙がっていたことは嬉しいですね。

自習室や演習室の充実
そして結束し、ともに成長していく学友たち

神前教授
次に大学が提供する施設、環境、サービスなどで良かったものを教えていただけますか?
澤本
通学に片道2時間はかかっていた私には、なんといっても駅から近いことが魅力でした。中央教育研究棟にある自習室もとても良かったです。図書館は学部生の利用も多いので、1人で集中できる環境を用意してもらえたことは、とてもありがたかったですね。
野村(和)
中央教育研究棟の演習室も良かったです。私はよく数人で司法試験の過去問を一斉に解き、答案を読み合ったり、採点実感を確認しながら話し合ったりしていました。
浜田
以前在籍していたロースクールに比べて学習院は一学年の人数が少なく、みんなで頑張ろう、一緒に成長していこうという気持ちで勉強できる環境がとても良かったです。

自分の立ち位置を確認しながら
過去問の研究と基礎を徹底

神前教授
学習院の学生同士や教員とのつながりの深さが印象的でしたね。では、司法試験対策ではどんなことを重視しましたか?
林田
自分は2回目の受験で合格しましたが、1回目の受験後に、自分の答案には表現する力が圧倒的に不足していると感じたんです。そこで、予備校が主催する論文試験の答案練習会に参加したり、過去問の採点実感を分析したりして、答案の書き方を研究しました。特に採点実感は司法試験考査員の先生方のご意見がいくつも書かれているので大切にしましたね。
植村
司法試験は相対試験なので、独りよがりな勉強になっていないか、わかった気になっていないかに常に気をつけていました。具体的には、聴講して他の学生と自分の理解度を比べたり、学内の友人が司法試験で何を重視しているかを意識して話したりしていましたね。ほかにも、自分の立ち位置を知るために、模試は積極的に受けるようにしていました。
大野
どんなに難しい論文の問題でも、基本的な条文知識や判例の知識があれば糸口をつかめるので、条文解釈や判例百選の読み込みを徹底していました。短答式試験は先生方のアドバイスどおり、生活の一部として解くことを早々に習慣づけていました。
鈴木
勉強の方向性を間違えないようにしました。まずはインターネットで調べたり合格者に聞いたりして勉強方法を知り、合理的な計画を立て、先生方などに自分の答案を見せてフィードバックをもらって少しずつ方向性を修正していくことが重要だと感じています。
神前教授
それぞれのご意見が読者へのヒントになったのではないでしょうか。多くの方におすすめできる方法は、過去問の出題の趣旨と採点実感を読むこと。試験で求められていることはよくわかっていても、意外とそれができていない学生は多いです。克服できればアドバンテージになりますので、勉強法に迷ったら、そこを出発点にしていただくといいと思います。

これまでの経験や気づきから描く
自分らしい法曹像へ

神前教授
それでは、皆さんの今後の目標を教えてください。
澤本
以前、私の姉が引越しをするときに、家を借りていた業者から少し多めに料金を取られてしまったんです。そのときに消費者庁や宅建の協会に電話しても具体的な解決方法が得られなかった経験から、法律の知識のない人々にも親身になって相談に乗ってあげられる弁護士が、私のなりたい弁護士像です。
浜田
私はロースクールを2回出て、今年、やっと試験に合格しました。時間がかかってもなんとか突破できた自分のしぶとさを活かして、諦めの悪い弁護士になりたいですね。志望分野は未定ですが、息子がいますので、いい母としての背中を見せられる仕事をしていきたいです。
野村(琴)
私は内定をいただいた国内の大手渉外法律事務所で、独占禁止法の分野に携わりたいです。企業のM&Aで経営戦略を立てる際、必ず壁となって立ちはだかるのが各国の独占禁止法なんです。そこで、クライアントの希望を汲み取ったうえで、依頼者の目標実現をサポートできる弁護士になりたいですね。
林田
司法過疎地など、必要であるにもかかわらず経済的、場所的理由で司法の支援を得られない方々に寄り添えるような弁護士になりたいです。また、検察官や裁判官にも興味があるので、司法修習を通じて進む道を決めたいと思います。

ベースの知識をインプットし、
入学後は少人数制の利点を最大限に活用

神前教授
最後に、これからロースクールで学ぶ後輩にアドバイスをお願いします。また、入学前にやっておいてよかったこと、やっておけばよかったと思うことがあればお話しいただけますか?
大野
在学期間中は既修者に追いつかなければという焦りや、司法試験合格に何が足りないのかという不安との闘いでしたが、今思えば、目標に向かって一生懸命になれた幸せな期間だったのかもしれません。皆さんも自分の体調や精神面をいたわりながら、一歩ずつ頑張っていただけたらと思います。
野村(琴)
私は学習院の学部からジャンプアップ入試で入学しましたが、入試対策もままならず、最初の半年ほどは知識が乏しく授業についていけなかったことを深く後悔しています。ですから、簡単なものでいいので入学前に司法試験の全科目の基礎的な本を一通り読んでおくことをおすすめします。また、環境が整っていても司法試験合格まで1人で勉強し続けることは非常に苦しいです。わからないことはすぐに先生に質問し、仲間を見つけて自分から率先していい環境を作り、全員で受かるという気持ちで取り組むことが大事だと思います。
野村(和)
たしかに私の場合は、入学前に各科目の薄めの本を3、4回繰り返し読んでおいたことが授業を吸収できる土台になったと感じます。入学後は1年目から全力を尽くし、無事予備試験に合格しました。ただ、司法試験は所詮ペーパーテスト。重要なのは、合格後にどういう法曹になるかなので、実務家の先生の体験談をたくさん聞いて、自分の将来像を考えながら過ごすと楽しいロースクール生活になると思います。
植村
先生方は卒業後もオフィスアワーを使うと快く質問に答えてくださいますので、先生やOBの方とも密に連携して試験対策をしていくといいですね。
鈴木
僕は今年から始まった在学中受験資格を得て司法試験に合格しましたが、授業と並行して司法試験対策を進めることは、困難を極めました。在学中受験をされる方は、授業に使う時間と司法試験対策に充てる時間を正確に把握して独学の計画をしっかり立てて欲しいですね。
神前教授
非常に具体的なアドバイスと貴重なご意見をありがとうございました。

MEMBERS

MEMBERS

司会進行
神前 禎教授(法務研究科長)

金沢大学法学部助教授、学習院大学法学部助教授、
同教授を経て、2004年より学習院大学法科大学院教授。
日本私法学会、日本国際法学会、日本国際私法学会に所属。
大野 亜優 2022年3月学習院大学法科大学院修了(法学未修者コース)。2023年司法試験合格。
植村 舜 2021年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2023年司法試験合格。
林田 純 2022年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2023年司法試験合格。
野村 和比古 2023年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2023年司法試験合格。
野村 琴音 2023年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2023年司法試験合格。
浜田 恵里香 2023年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2023年司法試験合格。
澤本 翔太 在学中受験(法学既修者コース)。2023年司法試験合格。
鈴木 啓士 在学中受験(法学既修者コース)。2023年司法試験合格。