修了生座談会

司法試験合格者 座談会 2024

司法試験合格者 座談会 2024

恩師である神前禎教授のもとに集まった、令和6年司法試験の4名の合格者たち。学習院での日々に思いを巡らせながら、これから法曹を目指す皆さんに向けたメッセージや、学習院大学法科大学院の魅力、そして実際に行った司法試験対策などについて語り合ってもらいました。(実施日:2024年11月19日)

法曹を目指したきっかけを
教えてください。

菅原
私は中学生の頃から刑事司法に憧れていました。それで検察官の仕事に興味を持ったことが、法の道を志そうと思ったきっかけです。その後、いろいろと法律を勉強しているうちに、弁護士や裁判官という職業に強い興味を持ちました。どの道に進むにしても、まず司法試験に合格する必要があると考えて法律の勉強に邁進して今に至ります。
黒田
私は過去につらい経験をした時期があります。そのときに何人もの方に支えていただいたことから、法曹の資格があれば誰かのつらさを軽減したり、引いては幸せに貢献できるかもしれないと考え、法曹を目指すことにしました。
河原
私はもともと損害保険会社で働いていました。仕事を通して弁護士の先生にお会いする機会がありました。そのときに取引先の人が、弁護士の先生を非常に頼りにしていることを知ったのです。これほど信頼されるとはなんて素晴らしい仕事だろう、と興味を持ったことがきっかけでした。
佐藤
大学の学部の2年次のゼミが、法曹を目指すきっかけになりました。そのゼミのなかで、新しいテクノロジーが登場してくると、そこに法律問題も新たに生まれてくることに面白さを感じました。図書館で調べものをしてたときに、とても楽しいと心から思えたのです。その経験があって、法律家を目指すようになりました。
神前教授
法曹という仕事は、社会に貢献できる大変やりがいのある職業です。佐藤さんの話にもありましたように、新しい社会課題が見えてきたときに、その解決に向けて取り組めることも魅力のひとつです。

学習院大学法科大学院との
出会いを教えてください。

黒田
初めて学習院を訪れたとき、とても自然豊かないいキャンパスだと思いました。このキャンパスでなら、勉強の合間にいい気分転換ができそうだと思ったことが、学習院大学法科大学院に入学した一番の理由です。そして、基本書などを執筆していらっしゃる先生方から学べること、質問できることにすごく魅力を感じました。
菅原
学習院ローを志望したきっかけは、在籍していた大学の系列のロースクールに不合格をもらったことが発端です。その後、学習院ローについて調べた結果、長谷部由起子先生が民事訴訟法の教鞭をとっていらっしゃることを知りました。ご主人である長谷部恭男先生に憲法を学んだことがあり、ぜひとも長谷部由起子先生の授業を受けてみたいと考えて志望しました。
河原
私は働きながら独学で勉強していましたが、5年以上結果を出せずにいました。それまでの勉強法に限界を感じて、法科大学院に進もうと思いました。学習院を選んだ理由は、著名な先生方が多く、質の高い授業を受けられると思ったからです。少人数のロースクールなので、大人数のなかで埋もれることなく、先生と近い距離感で授業を受けられると思いました。
佐藤
私は高等科から学習院に在籍しておりましたので、かれこれ10年ほどになります。通い慣れた土地ですし、とにかく環境に馴染んでいるので、最後まで学習院でお世話になろうと考えました。そして何より、実務家の先生方とも学者の先生方とも、とても距離が近いことが魅力でした。
神前教授
本学に質のいい教員がそろっていることに魅力に感じてくださったのだと、皆さんのお話を伺ってあらためて知ることができました。学生からの質問に対して教員が個別にじっくり答える、少人数制であることも、本学ならではの学習環境だと考えております。

印象に残っている授業や
役に立った授業を教えてください。

黒田
すべての授業が印象深いものでした。なかでも印象に残った授業を挙げると、ひとつは安村勉先生の刑事訴訟法。それから大村敦志先生の民法と神田秀樹先生の商法です。これらの授業のおかげで、それまでは考え及ばなかったことを着想できるようになりました。
菅原
私の入学動機となった長谷部由起子先生の民事訴訟法の授業は、大変興味深く拝聴させていただきました。先生の熱を帯びた口調には厳しさを感じますが、学生のことを心から思ってくださるとてもいい先生です。
河原
入学したばかりの頃に、神作裕之先生の商法の授業を受けました。長く独学で勉強していたなかで使用した教材のどこにも書かれていないような、本質的なことをわかりやすく説明していただきました。そのときに、「ああ、ロースクールで学んでいるのだな」と、強く感銘を受けました。
佐藤
神田秀樹先生の商法です。授業中に1つ質問すると、100倍ぐらいの情報量で返してくださいました。その100のことを全て論理立てて説明してくださるのでとてもわかりやすいのです。それが今年の司法試験の商法の回答につながったと強く感じています。
神前教授
本学では、法学部の先生方にさまざまな授業を担当いただいており、それぞれ特色のある授業をなさっています。教員の構成は年によって多少の変化はありますが、受け継がれてきた授業の精神というものは、これからも一貫して変わることはないと思います。

大学が提供する環境等で
評価しているものは?

菅原
学習院卒業生の有志の弁護士先生方による法実務講座では、より受験に関わる部分を教えていただきました。先生が個人的に答案を見てくださり、司法試験に特化した学習を進めることができました。これは学習院の大きな特色だと思いました。
河原
独学ですと、何かわからないことがあっても誰にも質問できません。それが、実績のある先生に存分に質問できるという環境でしたので、たくさん質問させていただきました。
黒田
キャンパスはとても自然が豊かで、池にカワセミがやってきたこともありました。勉強に疲れたときには、木々のあいだを散歩したり、森を見るだけでも癒される、とても素晴らしい環境です。
佐藤
授業が終わった後は、きれいな夕陽に癒されました。教室が高層階にあるので眺めも良いですし、とても美しい夕暮れどきの富士山を見ることができます。
神前教授
自習室は9階にあり、研究室は10階と11階にあります。わからないことがあれば、すぐに研究室へ行けます。「いつでも来てください」とおっしゃる先生もいらして、根掘り葉掘り質問できる環境です。

どのようにしてモチベーションを
維持しましたか?

河原
ひとつは、勉強を習慣化させることです。日常的に勉強する習慣がついてしまうと、モチベーションが高かろうが低かろうが、決まった時間になったら勉強を始められるぐらい体が覚えてしまいます。自転車の漕ぎ始めは重いけれど、ひとたび漕ぎ出してしまえば加速するような感じです。
佐藤
私は2回目の受験で合格しました。1回目のときは試験日が真夏だったため、酷暑のなかの移動で会場に到着するまでに疲れてしまいました。体力づくりとして始めたのが、毎朝のランニングです。走り出したばかりのときは苦しくてやめたくなりますが、あるときスッと楽になるタイミングが必ずやってきます。
菅原
1日中100パーセントの集中力を発揮し続けることは難しい、とつくづく思っていました。オフを引きずらないように、時間を決めてゲームをするなど、オンとオフの切り替えが重要です。司法試験の前も、休むときはしっかり休んで、心を平穏に保つように気をつけました。
黒田
司法試験に限らず、勉強は楽しいことが1番だと思っています。合理的な勉強法はたくさんありますが、必ずしも自分に合う方法とは限りません。私は暗記型の勉強は好きではなく、あれこれ思考して情報を統合していくのが好きでした。まずは授業を聞いて先生に質問し、自分が司法試験に持っていくものを作っていくような作業を楽しいと感じました。
神前教授
皆さんいろいろな工夫をなさっていますね。モチベーションが下がったり、今日は勉強したくないという日にも、とにかくまず勉強すること。その態勢を作れるかどうかが最も重要だと思って伺っておりました。

司法試験対策で重視したことを
教えてください。

河原
私が重視したのは、アウトプットとしての答案を書くことです。日頃の授業はインプットの機会です。片や試験本番で求められるのは、いかにアウトプットができるかになります。アウトプットしていくなかで、自分のわからないことにぶつかったときにインプットする。このようにして、たくさんの答案を書くことを意識しました。
菅原
常に条文を最初に持ってきて、条文中心の答案を書くように意識しました。司法試験当日に受験生に与えられる武器は六法全書だけです。六法全書に書いてあることからその解釈を引き出し、自分の知識を出して、なおかつあてはめで独自性を出す。その出発点として、常に条文を頭の片隅において基本書を読むなり、論証集に目を通すという勉強をしました。
黒田
とにかく余計なことを書かないようにしました。実際のところ、書ける量も少ないですし、余計なことを書いている時間はありません。最低限の条文を挙げて、要件を挙げて、丁寧に当てはめようと意識したことが、かえってよかったと思っています。在学中にたくさん書いて評価していただいたからこそ、最終的に捨てるところが明確になりました。
佐藤
みんなが正解するだろうというところをしっかり書くことです。逆に難しい問題に関しては、みんなも回答できないのだと考えて気にしないことです。つまり、みんなが知っているような論点や問題点はすぐに答えを出せるようにしておくことを意識しました。
神前教授
司法試験に合格するために特別な才能は必要ありません。全て基本的なことばかりでも、それを丁寧に着実に努力を積み重ねていけば司法試験の合格につながります。

今後の目標は?

河原
まずは、司法修習で受ける二回の試験を無事に突破することです。その後は、企業法務の道に進みます。企業法務の分野だったら河原さんが1番頼りになる、と言ってもらえるような、誰にも負けない専門知識を身につけて、企業の発展に貢献したいと考えています。
佐藤
まず4年目くらいまでは、一般民事といわれるゼネラルな案件をいろいろと経験して、リーガルマインドを形成したいと思っています。5年目以降は、中小企業の企業法務を専門とする弁護士の道へ進もうと思います。よりコンサルティング的な目線でアドバイスをできる法律家を目指します。
黒田
抽象的になりますが、誰かの幸せをちょっと増やして、誰かのつらいことをちょっと減らせるような生き方をできれば、もうそれだけで今後の人生に誇りを持てると思っています。それを実現するために、法曹資格を手に入れることがかなり大きな武器になります。
菅原
「勝って兜の緒を締めよ」ではありませんが、これからまだ司法修習もあります。検察官になるためにも、司法修習でしっかりといい結果を残す。これを目標に据えていきたいと思っています。
神前教授
皆さんの今後の目標を伺って非常に心強く思いました。これからどんどん技術も発展して社会も変わっていきます。このような状況のなかで、法曹資格を持つ皆さんがますます活躍されることを祈っています。

これからロースクールで学ぶ
後輩へのアドバイス。

黒田
率直にいうと、ロースクールはかなり厳しい環境だと思います。それは、「自分の限界と常に戦う」ことになるからです。健康や幸せは、夢に向かう原動力です。比較対象は他人というよりも自分の過去。過去の自分に勝っていってほしいと思います。皆さんのことを応援しております。
菅原
私は2年次に予備試験を受けて不合格でしたが、そのときの勉強は非常に司法試験に役立ちました。ある意味では司法試験よりハードな部分があり、「予備試験よりはマシ」と思うことで、司法試験を耐えぬいた部分もあります。ロースクール生であっても、予備試験の勉強をするに越したことはないと思います。
河原
司法試験合格への道は、険しい道のりなので、覚悟を持って取り組んでください。最後は気持ちの問題です。諦めない気持ちを持ち続けた人が合格すると思います。日常の勉強もそうですし、試験本番も最後の1秒まで諦めずに答案を書ききった人から受かっていると思います。
佐藤
私も皆さんの意見に大賛成です。精神的にもキツイ試験なので、司法試験に臨む期間を決めて勉強に集中してください。先生方はとてもフレンドリーですし、突然質問しに行っても明るく迎えてくださる環境が整っています。ぜひ環境を活かして食らいついていってほしいです。学習院チームとして、一緒に法曹として活躍しましょう。
神前教授
ぜひ、本学の恵まれた環境を活かして司法試験合格を目指しましょう。合格者の方たちは、自身の勉強に何が足りなくて、それどう埋めたら成績が伸びたかをきちんと理解しています。今日お話を伺って、自身の現在から司法試験合格を見たときに、どうすれば目標に近づけるかを考えなければいけないと思いました。合格者の皆さんのお話をぜひヒントとして活かしていただき、法曹を目指していただきたいですね。

MEMBERS

MEMBERS

司会進行
神前 禎教授(法務研究科長)

金沢大学法学部助教授、学習院大学法学部助教授、
同教授を経て、2004年より学習院大学法科大学院教授。
日本私法学会、日本国際法学会、日本国際私法学会に所属。
黒田 正義 2024年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2024年司法試験合格
菅原 健太 在学中受験(法学既修者コース)。2024年司法試験合格
佐藤 優尽 2023年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。2024年司法試験合格
河原 雄一 在学中受験(法学既修者コース)。2024年予備試験合格