修了生座談会

司法試験合格者 座談会 2025

司法試験合格者 座談会 2025

本年より法務研究科長に就いた恩師・青井教授のもとに集まった、令和7年司法試験の6名の合格者たち。学習院での日々に思いを巡らせながら、これから法曹を目指す皆さんに向けたメッセージや、学習院大学法科大学院の魅力、そして実際に行った司法試験対策などについて語り合ってもらいました。(実施日:2025年11月18日)

1年間を振り返って
大変な時期はありましたか?

青井教授
司法試験合格おめでとうございます。皆さんがこれまでに積み上げてきた努力の成果が実を結びましたね。合格までには実に様々なことを経験されたのではないでしょうか。あらためてこの一年間を振り返ったとき、一番大変だった時期はいつでしたか?それをどうやって乗り越えましたか?
石田
模擬試験を受けた後の3月が1番きつい時期でした。理由は、自分の実力と合格レベルとの差をまざまざと思い知らされたからです。果たして自分は合格レベルにまで到達できるのか、真剣に悩み始めました。試験までの時間を有効に使うためには、何に絞って勉強するべきかを考えるようになりました。
藤本
私は春休みが始まる頃でした。司法試験に向けて勉強に使える時間が一気に増えるなかで、どう勉強しようかと迷っていました。思い切って、法実務講座の先生方に、試験までの計画的な勉強法を相談することにしました。先生方と話すなかで、何をすればいいかが自分のなかで整理され、長期休暇中も着実に勉強を続けることができました。

勉強や生活リズムで工夫
したことを教えてください。

増田
通学時間が片道1時間20分だったので、次のようなルールを作っていました。毎朝、乗車する電車を決め、3本以上は遅れない。校舎到着は午前10時・帰途につくのは午後10時。電車での移動時間は必ず勉強する。自習室ではスマホ禁止。自習室では寝ない。机は勉強をするだけの空間だと決めると、不思議と机に向かった瞬間にスイッチが入るようになります。こんな精神論が意外と大事だったりします。
石田
自分がどれくらい勉強できているかを定量的に見られるように、常に学校に来るようにしました。受験前は朝7時に起きて、23時に校舎が閉まるまで、ずっと学校にいました。もちろんできない日もありましたが、それでもとにかく学校に来て、自習室の自席に座り、内容はさておき何かを勉強する。これを自分のなかで追い求め続けました。
西脇
スケジュールを立てることが大切だと思います。私はスケジューリングがひどく苦手で、最初は立てていませんでした。同期がどんどん合格していくなかで、同期からアドバイスをもらいつつスケジュールを立てるようになりました。単位は1週間単位。一ヶ月では長すぎるし、1日だと短すぎます。1日の予定を大まかに決めた上で、その週の目標分は必ず完結させる、というように1週間のなかで調整するようにしていました。
藤本
勉強するとかなり頭を使うので、学校のジムを頻繁に利用して、体を動かすようにしていました。勉強して夕食をとってジムへ行きリフレッシュする、という日課でした。勉強で疲れていても、体を動かすと目が覚めます。また勉強での成長は感じづらくても、筋力トレーニングの成果はわかりやすく成長を実感できます。勉強に偏らず、日々の生活に運動を取り入れるとよいと思ってます。
村上
1番役に立ったのは、2時間頭にする訓練です。なんでも時間をかけて出せばそれなりのものはできます。でも本番は2時間です。2月から試験までに約80通の答案を書き、2時間をうまく使い切る訓練をしました。慣れてくると、「あと10分もある」。そんな感覚になりました。2時間頭になったことが、とても良かったと思います。

スランプをどうやって
乗り越えましたか?

村上
勉強が辛いと感じるときには、趣味に没頭するとよいと思います。僕は料理が趣味です。苦しいときには、「最高の料理を作る」と決めて、1人で台所に立ちました。レパートリーは和食が多かったのですが、今思い出しても、とても楽しい時間でした。
西脇
修了生の私は、基本的に家に閉じこもって勉強していました。司法試験へのチャレンジも3回目になると、辛すぎて脱走したくなる時があります。突然、北海道へ旅行しようかな、実家に帰ろうかな、と思う日がやってきます。そんな時でも勉強から逃げないために、一旦その日は勉強を諦めて好きなことをする、と決めていました。思いっきり好きなことをしてリフレッシュすると、次の日からまたがんばれます。
青井教授
皆さん、大きな不安に押し潰されそうになる経験を何度もなさっていることと思います。ご自身にあった工夫をして、長期間にわたる勉強を継続していらっしゃっていますね。

印象に残る授業を
教えてください。

藤本
3年生の1学期に受けた行政法演習の授業が特に印象に残っています。事例を解く授業は司法試験に直結しましたし、条文の読み方、法律の読み方をしっかり叩き込んでいただきました。こぼれ話も面白かったですし、緊張感を持ちながら非常に楽しく学べる時間でした。
西脇
憲法の授業です。試験にももちろん役に立ちますが、それだけではなく、法律の面白さと憲法の面白さを教えていただきました。判例ベースでありつつ、その裏にいる人々の様子がありありと浮かんでくるようなライブ感満載の授業でした。この授業をきっかけに法律を学ぶことが楽しいと思えるようになりました。
中村
現代民法の授業が印象的でした。まずは条文があり、それを明治民法や歴史を踏まえた経緯から、どんどん広がっていくような内容でした。民法の自由さや楽しさを教えていただきました。

合格に向けて役立った
ことを教えてください。

西脇
私は少人数制の授業のおかげで合格できたと思ってます。授業時間外に答案を添削していただくなど、先生が1人1人に対して丁寧に教えてくださいました。同期は歴代最少の5人でしたので、お互いに協力して授業の予習復習をしたり、同期同士で高め合いながら一生懸命勉強したことは、合格に資するポイントだったと思います。そして5人全員が合格。絆が深まった仲間と共に合格できたことが嬉しいです。
藤本
1年生で基本を叩き込まれたことが良かったと思います。未修コースに入学した私は、全く法律を理解してない状態で1から学び始めたので、まず授業についていくことさえ大変でした。私は一応、法学部出身なのですが、学部時代に法曹を目指していたわけではなく、4年生になって切り替えたため未修と同じでした。1年生のときにしっかりと基本を教わることができ、それが2年生、3年生になったときに体系的につながっていったと思います。
村上
僕は授業そのものが1番良かったと思います。先生たちと物理的に距離が近いだけではなく、自分が使う教科書を著した先生から直接、肉声で授業を受けられるというのは、何よりも恵まれた環境だと思いました。
中村
ある先生にエレべ―タ―で呼び止められ、「今回の期末テストは、君の悪い癖がよく出ていたよ」とご指導いただいたことがあります。このように、先生が学生の個性まで把握してくださっていると感じることが度々ありました。これも少人数制ならではだと思います。その後、自分で起案をしているときに、「あの言葉は、こういう趣旨でおっしゃっていたんだな」と度々思い返しました。第三者の視点で、少しずつ癖を修正していくことによって、合格できたと思っています。
青井教授
言葉を受け取って終わりではなく、それからどうするのかが大事です。言葉を糧にできると試験に合格すると思います。誰もが知っている教科書を執筆された先生が、教えてくださるというのは、学習院大学法科大学院ならではの特徴だと思います。

合格試験までの道のりで
転換点はありましたか?

中村
僕は2年生のときの授業です。学生4、5人に対して先生がずっと質問を投げかけていくスタイルでした。当意即妙で答えるためには、条文の趣旨は何かから論理立てて、最終的な規範まで筋道をつなげなければなりません。この訓練を繰り返したことによって、思考方法が身につき、他の科目でも役立ちました。
藤本
司法試験の3週間前に、ある先生から3つのポイントを教わりました。趣旨を書くこと、評価をすること、すべての事実を拾うこと。この視点から、どういう事実関係で、どういう争いから生まれたのか、判例百選をすべて振り返りました。おかげで司法試験の問題を見たときに、どの判例かすぐに気づけたほどでした。試験では、この3つに集中して、それ以外は考えずに臨みました。
増田
自習室が使えるようになって1週間後ぐらいのことでした。自習室の扉を開けて先輩たちの姿が見えたときに「試験で負けるものか」と燃える闘志のようなものがみなぎりました。負けず嫌いは人を強くする要素だと思います。
石田
ちょうど1年前の合格祝賀会です。司法試験に合格した先輩方のスピーチを聞いて、「来年はあの場所に立ちたい」と強く思ったのです。それからギアが入りました。その会場で青井先生と言葉を交わして、「来年は、合格者で集まって座談会をしましょうね」と声をかけてもらったことをはっきり覚えています。「必ず青井先生と座談会するんだ」と思い続けた1年間。そして、今日、それが実現しています。

1年前の自分に、どんな
声をかけてあげますか?

石田
毎日、色々と勉強していると思いますけど、授業で教わる勉強の方向性は正しいものです。だからそれに対して実直に、そして学ぶことをひとつひとつしっかりと理解して身につけていくとよいと思います。その過程で努力を継続してください。
村上
信じる勇気を持ってほしいと思います。使っている教材は皆それぞれバラバラですし、様々な情報があふれています。それでも、自分がこれと決めたら、それを信じきること。あとから振り返ってみると、それが大事だったことがわかります。
藤本
ずっと迷っていて、「本当に今年受けるの?」と思っていた一年前の私。最後まで覚悟が決まらなくてもいい。とにかく目の前の授業や、自分に課した勉強に全力で取り組んでください。「よし、やるぞ」と思えなかったとしても、前日に決めることもできます。だから、今、目の前にある課題をしっかりやってください。そう伝えたいと思います。
西脇
まず、「諦めなくてよかったね」と1年前の自分に声をかけてあげたいです。1回で合格できなくても、諦めることにためらいがあるなら、とりあえずあと1年、がんばってみてほしいと思います。私のように3回目まで粘って合格するパターンの人もいます。正しい努力を続ければ合格します。簡単に諦めずに自分と相談して、心に正直にがんばり続けてほしいです。
石田
「司法試験に合格できる」と楽観的に信じていることは、意外なようでかなり重要だと思っています。合格するかは最後までわからないわけですけれども、「自分は受かるんだ。受かる可能性があるんだ」と思っていないと、向き合い続けることは難しい試験です。勉強しているときは、「絶対に受かるんだ」と心に決めて続けること。「信じていればたどり着ける試験だから」と言い聞かせてあげたいです。
増田
もっと法律を楽しんで、1年間を過ごしなさい、と言いたいです。論証をすべて覚えて、過去問をひたすら解いて、と必死に勉強することこそ正解だと思っていたからです。ところが、きちんと先生の授業を聞いたり、基本書をしっかりと読むと、意外と着眼点が面白いことに気づきました。司法試験後も電車のなかで基本書を読んでいます。「面白いな」と思うことをひとつひとつ見つけていけば、楽しく勉強できると思います。

今後の目標を
教えてください。

村上
僕は28年間、新聞社で報道に携わってきました。かなり狭い領域かもしれませんが、これまでの自分のキャリアを活かした弁護士の仕事をしたいと思っています。特に、名誉毀損のほか、報道を知る者の一人として、表現の自由を擁護する側の弁護士になろうと考えています。偽情報が社会問題になっている今だからこそ、正しい情報が流通する社会にしたいと思います。
石田
具体的に定まりきっていませんが、刑事事件も民事事件も、まずは一とおり引き受けられる弁護士になりたいというのが、今の率直な気持ちです。村上さんと同様に社会人経験があり、そこで得たいろいろな経験を、今度は弁護士として社会に還元していきたいと考えています。これまでに御恩を受けてきた人に感謝の気持ちを忘れず、社会に恩返しするつもりで活動していきたいと思います。
中村
なぜ弁護士を目指したかと言えば、自由と正義を基盤に仕事できることが理由のひとつです。世の中には、法的な問題でお困りの方は大勢いらっしゃると思います。自分が正義を持って、多くの人をしっかりと助けられるように、確かな実力を持った弁護士になりたいと思っています。
藤本
まだ将来像はあまり明確になっていません。これまでは司法試験に向けて勉強をしてきましたが、一転して実務的な観点で文章を書いてみようとしたときに、非常に難しさを感じました。訴状や書面を作るのに苦戦苦闘しています。どの法曹に進むとしても、法文章を書くことは基本だと思います。まずは、この部分を着実にこなせるようになることを目指しています。それから、信頼していただけるような法曹になりたいと思っております。
増田
私は裁判官になりたくて法律を勉強し始めました。裁判官になることが将来の目標です。判決が出た際には、判決文をしっかり読んで理解し、問題があるのかどうかを理解できる人間でありたいと思っています。学習院大学法科大学院で勉強したからこそ、たとえ腰が曲がって目が見えなくなったとしても、裁判官が何を言わんとしてるのかを理解できる人間であり続けたいと思ってます。
西脇
私は高校生の頃に、弁護士の先生にお世話になったことがあります。当事者だった私の言うことを一生懸命聞いてくださり、自分でも言語化できないような方向性や要望を、会話の中から見出してくださいました。私は救われた気持ちになり、そのときに「弁護士になれば、こうやって人を救うことができる」と思ったのです。それ以来、「人を助ける弁護士になりたい」と思い続けて、今日を迎えることができました。
青井教授
大変心強く思っています。小さなロースクールですけれど、志を持って教育活動をしてきております。このまま後進が続いていけるように、ぜひ法曹になった暁もお力添えいただきますようにお願いいたします。

MEMBERS

MEMBERS

司会進行
青井 未帆 教授(法務研究科長)

信州大学経済学部准教授、成城大学法学部准教授を経て、2011年より学習院大学法科大学院教授。日本公法学会、全国憲法研究会、憲法理論研究会に所属。
西脇 志保 2023年3月学習院大学法科大学院修了(法学既修者コース)。
2025年司法試験合格
藤本 真椰 在学中受験(法学未修者コース)。
2025年司法試験合格
中村 公志 在学中受験(法学既修者コース)。
2025年司法試験合格
増田 紋太郎 在学中受験(法学既修者コース)。
2025年司法試験合格
石田 郁人 在学中受験(法学既修者コース)。
2025年司法試験合格
村上 英樹 在学中受験(法学既修者コース)。
2025年司法試験合格