- 出身地
- 大阪府
- 最終学歴/学位
- 学習院大学大学院政治学研究科博士後期課程修了/政治学博士
- 所属学会
- 日本政治学会、日本選挙学会、日本社会心理学会、American Political Science Association
- 研究テーマ
- 政治意識・政治行動と政治過程、選挙分析、政治心理学の理論
- 担当科目
- 社会心理学演習ほか
心理学で解き明かす政治の世界
私の専門は「政治心理学」というちょっと耳慣れない分野です。政治学科で心理学? と思われるかも知れません。しかしこの政治心理学、政治の理解に役立つ多くの知見をもたらしてくれます。
どのように? 選挙を例に考えてみましょう。選挙の結果は、表やグラフにまとめることのできる一連の数字です。しかし、そうした数字は、一人一人の有権者の意識や行動が「積分」されることで作られたものです。
従って、「なぜこのような選挙結果が生じたのか」という疑問に答えるためには、有権者がどのような理由でどのようなことを考え、どのようなメカニズムでどのような意思決定を行ったのかを知る必要があるのです。同様なことは、「なぜ憲法問題や原発問題に関して人々の間に意見の対立が生ずるのか」といった世論に関する疑問にも当てはまります。
これに答えるための強力な道具が政治心理学─心理学の理論や方法で政治の世界を解き明かそうとする試み─です。そこでは調査、実験(政治学者も実験をします!)、シミュレーションなど多彩な方法によって、人々の政治意識や政治行動の実態が実証的に明らかにされていきます。さらに最近では「ニューロ・ポリティックス」という脳神経科学の最先端の理論や方法を使ったチャレンジングな研究も始まっています。
ここ何年かの私の研究の中心は、大規模世論調査のデータに基づく、有権者の投票行動の研究です。そこでは「なぜある人々はA党に投票したいと思い、別の人々はB党に投票したいと思うのか」、「それは日本の社会や経済のあり方、また他国との関係のあり方についての、その人達の考え方とどのように関連しているのか」といった疑問に答えることが目的となります。
ですから調査の質問も、単に投票したい候補者や政党について聞くだけではなく、有権者が現在の日本の社会や経済の状況をどのように見ているのか、様々な政策的な争点についてどのような意見を持っているのか、さらにはどのような価値観を持ち、どのような組織や集団に所属し、どのようなメディアと接しているか、といった一見選挙とは直接関係が薄いように見える事柄についても質問していきます。
そうした膨大なデータを様々なモデルを作って分析することにより、今日の日本の有権者が何を考え、またどのような方向に向かっているのかが見えてきます。
もう一つ、最近の研究関心として、「望ましい社会のあり方」に関して人々がどのような考え方をしているのかを明らかにすることを挙げておきます。「公正な社会とはどのような社会か」、「皆が幸せになれるのはどのような社会か」といった問いは、古くから政治思想や政治哲学といった分野で議論されてきたものです。では一体、思想家や哲学者ではないごく普通の人々は、こうした問題についてどのように考えているのでしょうか。現在ではこうした問いに関しても、調査や実験による実証的な研究が盛んに行なわれるようになってきています。
私の授業やゼミで、そのエッセンスに是非触れていただきたいと思います。
著書・論文紹介
『変容する日本の社会と投票行動』
(木鐸社、2007年)
『有権者の選択:日本における政党政治と代表制民主主義の行方』
(木鐸社、2015年)
その他の著書・論文については下記サイトをご参照ください
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