- 出身地
- 東京都
- 最終学歴/学位
- 東京大学法学部
- 所属学会
- 日本私法学会、信託法学会、法と教育学会
- 研究テーマ
- 契約法、信託法
- 担当科目
- 民法Ⅲ、民法演習、特殊講義信託法
法学部生の進路と法学を学ぶ意味
私の専門は民法だが、最近は中高生向けの法学教育にも関心を持っているので、それに関連する話をする。
最近、高校の先生から「受験生に法学部を勧めにくい」といわれた。法科大学院ができたので、将来弁護士になりたければ大学院で進路を選択すれば良い。そうすると、学部で法学部を選ぶメリットがあまりないのではないか、むしろ、英語を学べる国際系の学部や、ビジネスを学べる経済系の学部の方が勧めやすいというのである。
国際系や経済系の学部に進学することを止めるつもりはないのだが、法学部は将来の進路にマイナスだというイメージには驚いた。私が学生の頃は、法学部は文系学部のなかでは、どのような職種についても学んだことが活きる「つぶしの効く」学部として人気があったからだ。実際に、私のゼミの卒業生は、裁判官や弁護士、検察官になった者もいるが、多くは公務員や銀行員、一般企業に就職し、さまざまな分野で活躍している。
なぜ、法学は「つぶしの効く」学部と言われてきたのか、それは法学が、ルールによって人と人との関係をスムーズなものにするための学問だからである。
法学部の勉強というと、沢山の法律の条文を、まるごと暗記しているというイメージがあるようだが、実際の法学部の勉強では、条文の暗記などすることはない。そうではなくて、その条文が作られた理由や、実際におきた裁判で、条文がどういう風に使われてトラブルが解決されたのかを学ぶのである。そうやって、ルールにより筋道を立てて問題を解決する方法を学ぶのが、法学部の勉強である。
たとえば、学生生活をスムーズにするために、校則や、生徒会の決まり事があるように、私たちの社会にはルールが欠かせない。ルールを提案し、それを使ってトラブルを解決するスペシャリストを育てるのが法学部なのだ。
確かに、英語の能力やビジネスの知識は、あるに越したことはない。しかし、どのような就職先を選んでも必要になるのは、実は人と人との関係をスムーズにするために、ルールを提案する能力である。そうした能力を持つ者がリーダシップを発揮すると、集団が上手くまとまることが多い。だから、企業も、法学部出身者を必要としてきたのである。
英語を駆使して最先端の海外ビジネスをする国際ビジネスマンも、英語と経済の知識も必要だけれど、異なる国の人との間で取引のルールを決めなくてはならない。ここでもルールを提案する能力が必要とされる。そうした人にこそ、本当は法学を学んでほしいのである。
著書・論文紹介
『学生生活の法学入門』(共著)
(深町晋也=高橋信行=山下純司著、弘文堂、2019年)
『法解釈入門〔補訂版〕』(共著)
(宍戸常寿=島田総一郎=山下純司著、有斐閣、2018年)
『ひとりで学ぶ民法〔第2版〕』(共著)
(山野目彰夫=横山美夏=山下純司著、有斐閣、2012年)
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