哲学専攻の紹介

専攻の特色

 哲学専攻では、西洋及び日本の哲学・思想史にわたって、専門的な研究と教育を行っています。教員全員は、それぞれが異なる研究分野を扱いながら、共通した専攻のポリシーを堅持しています。すなわち、「研究対象に密着しそれに正面から取り組むことで、堅実な研究と思索を組み立てていく」という、極めてオーソドックスなものです。

 どのゼミにおいても、まず原典を自ら忠実かつ精確に読む基本的作業が重視され、その上で各人が自らの観点から堅実かつ刺激的な研究成果を生み出していくことが求められるという基本的スタンスに変わりはありません。これは学習院大学文学部哲学科の伝統であり、またそうした一見保守的にも思われる方針によってこそ、真に実りある創造的な哲学研究が可能なのだという思いは、本専攻の教員全員のものであり、そしてまさに本専攻の伝統そのものをなす特色であると言えます。

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専攻の構成

 本専攻は博士前期課程(修士課程)と博士後期課程からなっています。
 前期課程には、博士後期課程に進学する学生だけでなく、本課程での研究成果をふまえ、中学校・高等学校などの教育機関における教員を目指す学生、及び、専門的な知識・経験を活かして、一般企業や自治体などへの就職を目指す学生など、多彩な学生が所属し、それぞれの研究を進めています。
 続く後期課程では、前期課程での研究をさらに発展・深化させ、積極的に研究成果を学会等に発表しながら、最終的には博士論文の提出と学位の取得を目指すことが学生の主要な課題となります。在籍生の多くは、大学や短期大学などの研究教育機関における教員となることを目指しています。またその過程で、海外への留学を志す学生もいます。
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カリキュラムと指導

 専任教授と学外非常勤講師による多彩で高度な内容の「特殊研究(講義)」と「演習」が用意され、自分の研究テーマに関するものについて出席が義務づけられていることはもちろんですが、授業以外にも多くの研究支援を教員が行っている点に、本専攻の特徴があります。学生の自主性が尊重されることは当然ですが、それを適切にフォローするきめ細かな体制も整えられているというわけです。
 具体的には、各学生に対して指導教授(1人)と副指導教授(2人)が指定され、このグループがあなたの研究課題に沿った指導を随時行います。年度ごとに研究の進捗状況を報告するよう定められている他にも、特に後期課程で博士論文を執筆中の学生に対しては、「シニア・セミナー」と呼ばれる専攻内発表会が用意されています。学生はこの「シニア・セミナー」で研究の中間報告を行い、教員や先輩・同輩たちからさまざまに具体的なアドヴァイスを受けられるでしょう。なお、慶応義塾大学、早稲田大学、中央大学各大学院とのあいだに単位互換に関する協定が結ばれていることも付け加えておきましょう。

博士論文にむけた シニア・セミナー
博士論文にむけたシニア・セミナー

自主勉強会
自主勉強会

 このように本専攻の教員は、大学院生それぞれの研究課題を尊重し、各人の研究を深化・発展させるために、講義や演習、個人面談、研究会などを通じて、懇切丁寧な研究指導を行っています。そうした日常的指導に加え、大学院生諸君は、ゼミでの合宿や研究旅行に参加し、集中的な講読やディスカッションを行っていますし、また同時に学部生向けの演習でのTA(ティーチング・アシスタント)として、あるいは学部1年生向けの「ジュニア・セミナー」の主催者として、「哲学を教える側に立つ」という経験を積む機会も与えられています。
 このように本専攻では、「定員枠を埋めるために入学させておいて、その後はほったらかし」といった扱いを受けることは決してありません。甘やかされることはありませんが、教員全員は日々、学生一人一人の研究を暖かく、かつ厳しく見守っています。

辞書室での予習
辞書室での予習

ゼミ合宿
ゼミ合宿
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教員の構成と設備

 専任教員とその研究分野等については、当該ページをご覧下さい。学生の研究の多様化、高度化、専門化により適切に対応し得るために、実質的な指導に際しては、本専攻5名の専任教員のほか、本学他専攻や他大学の教員の参加を得ることも珍しくありません。

 130年前にまでも遡れる「学習院」の伝統のおかげもあり、本専攻の書庫、辞書室、閲覧室などには、哲学、西洋哲学史、日本思想史、宗教史などに関連する諸分野の貴重な専門研究書や雑誌が3万冊以上所蔵されています。それらのほとんどは開架で閲覧することができますし、また一定期間借り出すこともできます。あなたの研究は、こうした豊かな研究資産に支えられることで、一層深く個性的なものとなることでしょう。
 学習院大学では各人用のロッカーを備えた大学院生専用の研究室がきちんと複数用意されており、個人的な思索や読書のほか、学生同士の各種討論会や研究会、読書会など、さまざまな研究活動の場として活用できるようになっています(あまり知られていないことですが、こうした当然の環境を用意している大学は多くありません)。こうした環境に支えられて、大学院生同士の交流も他大学などに比べてはるかに密接なものとなっています。他大学から本専攻に進学してくる場合にも、ここでは何の気兼ねもいりません。美術史学専攻を含め、他分野の大学院生との親密な交流は、あなたの研究そのものにも思わぬ厚み、あるいは他大学では得られなかっただろう独特の個性を与えてくれることでしょうし、我々教員もそれを望んでいます。

院生室
院生室

別棟の院生研究室
別棟の院生研究室

 また、豊かな海外経験を有する教員や大学院生、先輩たちも多いために、留学その他についての情報や助言も得られやすく、海外の一流の研究者と交流する機会も少なくありません。ハードウェアとしての設備だけではない、このような言わばソフトウェア面での設備の質の高さは多くの他の大学院の中でも際だったものです。こうした点もまた、我々が自信を持って示せる本専攻の特質だと言えるでしょう。

ゼミ合宿でのディスカッション
ゼミ合宿でのディスカッション

西田幾多郎旧宅での勉強会
西田幾多郎旧宅での勉強会

修士論文、博士論文の題目例(最近5年間から)
博士論文
『アリストテレス『詩学』におけるミュートス概念』
『ライプニッツにおける弁神論的思惟の根本動機』
『プロティノスの魂論──魂と肉体の関係とそれをめぐる言説についての研究』
『プラトンの描いたソクラテス』
『神祇祭祀における女性神職の研究──近代神職の誕生をめぐって──』

修士論文
『L.T.ホブハウスのニューリベラリズム』
『『メノン』における探求のパラドクスと想起説』
『ベルクソン哲学における生命の進化と分岐について』
『世阿弥研究』
『前期ハイデッガーにおける超越の問題』


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奨学金、給付金と援助

 まず「日本学生支援機構奨学金」以外に、大学独自の「学習院奨学金」があります。
 加えて、学業成績の優れた院生に対して支給される奨学金があります。これは院生が申請するものではなく、専攻を通じて研究科で選考される仕組みになっています。これには、「安倍能成奨学金」(近年では毎年度、研究科から3〜4人)、「学習院大学学業優秀者給付奨学金」(毎年度、各専攻から2人の計20人)があります。
 また、後期課程においては人文科学研究科全体で毎年50名に20万円の研究教育給付金が支給されており、実際上、後期課程3年間に一回ないし二回の支給が通例となっています。あわせて、遠隔地で学会発表を行う場合には研究科が旅費を負担するという独自の制度があり、これもまた大学院生の研究活動を支援しています。
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学生の進路

 前期課程を修了し、一般企業や官庁に就職した者、中学・高等学校などの専任教員に採用された者、また後期課程を博士論文の執筆とともに修了し大学その他の専任教員に採用された者など、学生の進路は多種多様です。
 近年では、全音、北海道放送、福島県庁、農文協、東京都庁、紀伊國屋書店、日本電子計算株式会社、学校法人学習院等、そして特にアカデミックキャリアとしては、神田外国語大学、倉敷作陽大学、郡山女子短期大学、学習院大学等の就職先を挙げることができます。
 また、さらに研鑽の機会を求めて海外へ長期留学する者、他大学大学院へ進学する者、より特殊な知識・技能、あるいは資格などの取得を求めて専門学校などへ入学する者もいます。
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