スタッフ紹介

酒井 潔 (さかい きよし)
SAKAI Kiyoshi
教授 西洋近現代哲学
(主にライプニッツやハイデッガーなど
 ドイツ語圏の哲学)
1950年 京都市生まれ 

■略歴

1969年 東京都立立川高校卒業
1974年 京都大学文学部哲学科(哲学専攻)卒業
1978−1981年 国際文化教育交流財団奨学生としてフライブルク大学留学
1982年 京都大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程修了
文学博士(京都大学)
日本学術振興会奨励研究員、京都女子大学専任講師、岡山大学文学部哲学科助教授を経て、1995年 学習院大学文学部哲学科教授(現在に至る)

■現在取り組んでいる主な研究

(1)G.W.ライプニッツの哲学、形而上学、政治哲学
(2)Chr.ヴォルフ及びI.カントの形而上学、倫理学、宗教哲学
(3)M.ハイデッガーの現象学的哲学
(4)三宅剛一の現象学、人間存在論、経験的現実の哲学
(5)西田幾多郎における「自己」の哲学、及び宗教哲学

■主要著書

『世界と自我――ライプニッツ形而上学論攷』(創文社 1987年)
『<対話>に立つハイデッガー』(分担執筆)(理想社 2000年)
Phaenomenologie und Leibniz(Renato Cristinとの共編著)(Alber, Freiburg/Muenchen 2000年)
『三宅剛一 人間存在論の哲学』(編集・解説)(京都哲学撰書23、燈影舎 2002年)
『自我の哲学史』(講談社現代新書 2005年)
『ハイデッガー『存在と時間』の現在』(分担執筆)(南窓社 2007年)
『ライプニッツ』(「人と思想 」191、清水書院 2008年)
『ライプニッツを学ぶ人のために』(佐々木能章との共編著)(世界思想社 2009年)
『考える福祉』(岡野浩との共編著)(東洋館出版社 2010年)
『ライプニッツ読本』(佐々木能章、長綱啓典との共編著)(法政大学出版局 2012年)
『ライプニッツのモナド論とその射程』(知泉書館 2013年)

■主要訳書

『ライプニッツ著作集 第8巻』(共訳)(工作舎 1990年)
H.ロムバッハ『実体・体系・構造』(ミネルヴァ書房 1999年)
『カント全集 第14巻』(共訳)(岩波書店 2000年)
『ハイデッガー全集 第26巻(論理学の形而上学的な始元諸根拠)』(創文社 2002年)

■所属学会

日本哲学会(評議員)、実存思想協会(理事・編集委員長)、比較思想学会(評議員)、日本ライプニッツ協会(理事・会長)、日本現象学会、西田哲学会、Gottfried-Wilhelm-Leibniz-Gesellschaft Hannover、日本カント協会、西洋哲学研究会(三宅アーベント)(委員)他。
 なお、学習院大学は、1999−2001年日本哲学会の、2001−2003年実存思想協会の、それぞれ事務局を担当しました。さらに、2009年4月1日の日本ライプニッツ協会の設立にともない、現在、同協会事務局が学習院大学文学部哲学科・酒井潔研究室に設置されています。

■担当の講義および演習

 「哲学史」では、15世紀ドイツのニコラウス・クザーヌスから、二十世紀後半の現象学やポスト・モダン、フランクフルト学派、さらにはジョン・ロールズやマイケル・サンデルらに至る西洋近・現代哲学史を講義します。今年度は「十八〜十九世紀の哲学」と題し、ヒュームからはじめ、カント、ドイツ観念論、ショーペンハウアー、フォイエルバッハ、キルケゴールなどを講じます。
 「哲学特殊研究」では、西洋哲学及びその研究史・受容史の本質的な諸問題のなかから毎年テーマを選び、論じます。
 三つの演習ではドイツ語の哲学原典を担当しています:
 まず「哲学演習T」(学部)では、学生の問題関心にも配慮し、主に実存主義哲学や生の哲学などから毎年異なった哲学者の著作を選び、原典を正確に読解する訓練を行います。あわせて卒論指導も行っています。今年度はキルケゴールの『死にいたる病』のドイツ語訳を読んでいます。
 次に「哲学演習※」(学部・院)では、現象学(フィンク、ハイデッガー)、カント(三批判書)などのテクストを読みます。今年度は、カント『判断力批判』の後半の精読を通して、カントの生命論を考察しています。
 そして「哲学演習」(院)では、大学院生の修士論文のテーマに応じてテクストを選び、これを精読、解釈し、皆で議論します。これまでハイデッガー、ライプニッツ(フランス語、ラテン語)、ヘーゲル、フッサールなどを読んできました。今年度はヤスパースの『真理について』を読み、「包括者」、「世界」、「超越」などの問題を扱っています。
  また、以上の専門科目にくわえて、現代の人間と社会をめぐるいくつかの重要な問題(「暴力」など)を哲学思想の視点から問い直し、混迷の状況の中に可能な展望を探る、という趣旨の講義(文学部共通科目「現代学入門」2008年度より開設)なども行なっています(文学部の有志教員によるオムニバス講義)。

■近年の講義・演習から

【専門科目(文学部哲学科及び大学院人文科学研究科哲学専攻)】
哲学特殊研究:ライプニッツとハイデッガー
哲学特殊研究:自我論
哲学特殊研究:三宅剛一の哲学
哲学特殊研究:宗教哲学のこころみ
哲学特殊研究:西田哲学の根本問題
哲学特殊研究:はじめての政治哲学
哲学演習I:後期ハイデッガー小品集
哲学演習I:Schopenhauer, Die Welt als Wille und Vorstellung
哲学演習I:Jaspers, Vom Ursprung und Ziel der Geschichte
哲学演習I:Feuerbach, Das Wesen des Christentums
哲学演習I:Nietzsche,Jenseits von Gut und Boese
哲学演習※Heidegger, Sein und Zeit
哲学演習※Kant, Kritik der reinen Vernunft
哲学演習※Kant, Kritik der Urteilskraft
哲学演習※Leibniz, Unvorgreifliche Gedanken, betreffend die Ausuebung und Verbesserung der deutschen Sprache
哲学演習(院)Husserl, Logische Untersuchungen
哲学演習(院)Leibniz, Confessio philosophi
哲学演習(院)Hegel, Phaenomenologie des Geistes
哲学演習(院)Leibniz, Disputatio metaphysica de principio individui
哲学演習(院)Leibniz, Nova methodus discendae docendaeque jurisprudentiae
哲学演習(院)Heideggerl, Die Grundprobleme der Phaenomenologie (GA24)
哲学史:十七世紀の哲学
哲学史:十八世紀の哲学
哲学史:十九世紀の哲学
哲学史:二十世紀の哲学
【総合基礎科目】
福祉:「新・福祉とは何か」(オムニバス講義:担当=「家族福祉から「共生」を考える―マイノリティーのマイノリティー」
美とロゴス:「自然」(オムニバス講義):担当=「西洋近現代の芸術哲学から―カント、ハイデッガー、メルロ‐ポンティ」
【文学部共通科目】
現代学入門:「暴力を考える」(オムニバス講義):担当=「見える暴力・見えない暴力−戦争とモラル・ハラスメントについて」

■趣味

下町散策、小旅行、ブラッと近場の温泉に行く(主に箱根)。
 好きな生きものは、手のり文鳥、そしてカメでしょうか。

■哲学科で学ぶ人たちへ

 けっして平坦ではない哲学の道ですが、それだからこそ、授業や卒論で苦楽を共にし、互いに助け合って学ぶというエートスが必要だと考えています。真摯な「哲学する人」の、「哲学する人」による、「哲学する人」のための共同体を創造すること、あるいはカントの言葉をつかうなら、「目的の国」を創造すること、それが私の夢です。
 ゼミ(演習)では、主に西洋近現代哲学の主要なテクストを、原書で厳密に読むことを通じて、正確な理解力と批判的な分析力を養います。あわせて、現代のわれわれに身近な諸事象との接点を発見し、アクチュアルな問題意識を構築してゆくことにも努めています。さらに、参加者による討論や研究発表・質疑応答を適宜実施します。そしてそのことを通じて各自の問題テーマを明確化するように努め、最終学年での卒論執筆のための準備としたい、と考えています。
 なお、授業と平行して、面接や懇親会を随時行ない、ゼミ生の要望を聞いたり、勉学や研究テーマ等の相談の場をもつように努めています。また、セミナーや研究会や合宿等を実施し、一層専門的な哲学研究の系譜・内容やその射程にも親しみながら、原典の読解力や分析力を更に強化し、そして同時にゼミ生間の親睦にも資することを目指しています。またゼミ旅行として、2010年3月には奥会津で、雪の大自然と地域の歴史伝統に親しみました。同年10月には石川県宇ノ気にある西田幾多郎哲学記念哲学館を、2012年3月には三宅剛一博士生地・岡山県鴨方町を訪れました。また学習院大学外国語教育研究センター主催により毎年夏季に実施されているフライブルク・ドイツ語4週間講習等への参加を積極的に薦めており、当ゼミからも毎年3〜4名の1〜4年生が参加し、より一層ドイツ語・ドイツ文化に親しんでいます。

■大学院で学ぼうとする人たちへ

 学部卒業後も勉強を継続する人は大学院の博士前期課程に入学し、二年後の修士論文の完成を目指します。その場合、他大学の大学院(これまで、北海道大学(1名)、東北大学(2名)、京都大学(3名)などの大学院に入学しています)か、学習院大学の大学院に入学するかは、各人の専門分野や将来計画などによっても異なってくるでしょう。また他大学を卒業して学習院大学大学院の当ゼミに入学する人もいます(首都大学東京、国際基督教大学、慶応義塾大学、中央大学、国士舘大学、実践女子大学などから)。
 なお,学習院大学大学院と、慶應義塾大学、早稲田大学、中央大学の各大学院との間には科目履修と単位の互換が制度化されており、多くの大学院生に利用されています。
 さて、修士論文の作成にあたっては、各大学院生に対して個人指導を行ないます。修士論文を提出し、「修士」の学位を取得した後、一般企業、地方自治体、大学事務室に、また公立私立中学校・高等学校教員として採用される人も少なくありません。
 さらに博士後期課程に進学する人は、博士論文の提出を目指します。各自の研究の特色、進捗状況などに応じて、諸学会での研究発表、学会誌への論文投稿、そして留学(主にドイツ及びドイツ語圏の大学・研究機関)へ向け、分厚くサポートします。これまで、当ゼミからは、ヴッパータール大学、ハノーファー・ライプニッツ文書室に、また現在もフランクフルト大学に、それぞれロータリークラブ、学習院大学、ドイツ学術交流会(DAAD)から奨学金を得て留学しています。また大学院生相互の関係もきわめて緊密で、勉強会や、情報・刺激の交換や、懇親会などを通じて、励まし助け合いながら各自の目標に向かっています。

■学位(博士)の取得の重要性

 今日、大学や大学院で教育・研究に携わろうとする場合に、「博士」の学位がこれまで以上に必要とされるようになってきていることは、周知の通りです。西洋哲学の研究者を目指す場合でも、事情はまったく同様です。したがって、とくに博士後期課程に進学または入学される方々には、是非とも、博士論文を完成させ、「博士(哲学)」の学位を取得していただきたいと思います。そのための指導や助言はもとより、自らの経験なども総動員しながら、できる限りのサポートをして行きたいと考えています。また、学位取得後は、論文の速やかな公表・出版へ向けた指導をきめ細かく行っています。

■海外との研究交流

 海外の学会や大学、そして研究者たちとのネットワークにも努めています。第一線で刺激的な仕事をしている研究者を学習院大学・客員研究員として招聘し講演会や連続ゼミを実施しています。とくに後者は大学院生の活躍の場ともいえ、海外の著名研究者から直接に指導や刺激を得、各自の研究に活かすと共に、語学力のさらなるレベルアップの絶好の機会にもなっています(最近では、Hans Rainer Sepp教授(現象学・プラハ大学)、Hans-Helmuth Gander教授(ハイデッガー研究・フライブルク大学),Rita Widmaier博士(前ハノーファー・ライプニッツ文書室研究員)、Hartmut Rudolph博士(前ポツダム・ライプニッツ編纂所所長らを招聘しました)。その他にも、来日中の著名研究者を招いた講演会を随時開催しています(最近では、Georg Stenger博士(現象学:ヴュルツブルク大学)、Klaus Held教授(現象学・ヴッパータール大学)、Hans Poser教授(ライプニッツ研究・ベルリン工科大学)他)。いずれの講演会でも、大学院生や若手研究者たちが各分野の世界的権威と自由に議論をたたかわせ、かつ親交を結び、各自の勉強にとってこの上もない励ましになっています。
 そのような積み重ねのなかから、海外の大学や研究機関でさらに研鑽を積もうと留学する大学院生もいます。西洋哲学を研究する者として、海外(とくに欧米、東アジアなど)とのネットワークとその積極的活用が不可欠であると考え、大学院生の研究への助言などもそのような観点を織り込みながら行なっています。

■社会的活動のこころみ

 「哲学」は本来、”たんなる専門研究者の限界内の哲学”ではありません。一般の市民・学生・生徒の方々との対話も重要な部分であると考え、模索を重ねながら、与えられた機会を活かすべく努めています。
 これまでの活動から:「講座:癒しを哲学する」(学習院生涯学習センター)、「寸心荘読書会」(鎌倉市教育委員会後援:「『善の研究』を読む」)、「三宅剛一セミナー」(岡山県浅口市教育委員会後援:地元出身の哲学者三宅剛一の人と思想をめぐる連続セミナー)、ハノーファー・ニーダーザクセン州立図書館(G・W・ライプニッツ図書館)/G・W・ライプニッツ協会公開講演及びミュンヘン大学公開講演「Gottfried Wilhelm Leibniz und Kitaro Nishida - Die Frage nach dem Selbst(G・W・ライプニッツと西田幾多郎―自己への問い)」、ポツダム・ライプニッツ編纂所公開講座「ライプニッツの社会福祉論」、岡山県金光学園中学校・高等学校創立記念式典講演「三宅剛一先生と金光学園」、ハノーファー市/G・W・ライプニッツ協会共催講演「ライプニッツの政治哲学に学ぶ」、日本工業倶楽部素修会講演「リベラリズムと格差を考える」、「西田哲学における「自己」の問題」/関東学院大学公開講座「「死」を考える」/鎌倉女子大学公開講座「西田幾多郎の哲学」/鎌倉市教育委員会生涯学習センター講座「自我の哲学」他。

■この頃思うこと

 「哲学は難しい」、と言われることがよくあります。理由はいま措くとして、その難しさを何か曖昧にすることはできないし、またすべきでもないでしょう。けれどもまた、”わかる者にだけわかればよい”というような態度にも賛成ではありません。哲学は「秘教的」なものではなく、「公教的」なものだからです。「言葉」を尽くして他人にも「わかる」ように努力すべきものなのです。
  哲学は、各人が、自己に誠実にどこまでも問い続ける営みです。そのかぎり、各人の哲学の学習進度は各人の歩み方そのものであって、十分に尊重されるべきものだと考えます。すばやく、まるでクイズ番組のように正解を出すことが推奨されるとはかぎりません。カメのようにゆっくり進むもよし、しばし立ち止まるもよいでしょう。原典を精読するという一見地味な作業のなかで、対話への種子を少しずつ育てながら、最後のランナーがゴールインするまで伴走し見まもる、そのような授業でありたいと思っています。

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