スタッフ紹介

陶久 明日香 (すえひさ あすか)
SUEHISA Asuka
教授 ドイツ哲学
1973年うまれ 

陶久明日香

■自己紹介

 専門はドイツ哲学ですが、ドイツの映画や現代事情にも興味があります。授業ではしばしばそうした話も織り交ぜて話をします。芸術関係ではユーゲントシュティールなど、世紀末芸術が好きです。あとはカラオケと料理と旅行が趣味です。

■担当授業(学部用)

・2年次演習A(ドイツ語)
・哲学演習I (学部)
・※哲学演習 (学部・大学院共通)
・哲学史

■研究分野

 気分、情態性といった現象についてのハイデッガーによる考察の究明を主軸に据える仕方で、世界、歴史、哲学すること、人間の有限性、技術などといった事象について考えています。そもそも飽きっぽく、一つのことをあまり長くは続けられない性格なので、彼の思索とすでに20年以上付き合い続けることができていることに関しては自分でも不思議に思っています。
 ここしばらくは、彼の1930年代以降の思索における気分論、とくに詩人ヘルダーリンの詩についての解釈において展開される気分論と彼の思索全体との関係、またそれが後のヨーロッパ哲学に及ぼした影響を究明しようとしてきました。しかし最近では、ハイデッガーの気分論の射程の狭さを感じるようにもなってきています。現在は、ボルノーという哲学者の思索にかなり興味があり、それについて発表したりしています。彼は哲学史ではほとんど取り上げられておらず亜流の扱いを受けており、日本ではむしろ教育学の分野で有名な人です。哲学的人間学という立場から、気分や空間、祝祭などについてかなり細かい事象分析を行っており、現象学の分野でも今一度注目されてしかるべき存在かと思います。その他、人間の有限性を問題としているヤン・パトチカ、エディット・シュタイン、ハンナ・アーレントなどの研究も少しずつではありますが進めています。三名ともハイデッガーと接点のあった人たちですが、パトチカは共産圏であった当時のチェコスロバキアで共産党員ではなかったため不運にみまわれた哲学者であり、シュタインはユダヤ人ゆえにアウシュヴィッツの収容所で殺されたカルメル修道会の修道女です。またアーレントもユダヤ人であるがゆえにアメリカへの亡命を余儀なくされました。彼らの実存的な苦境が反映された思索をハイデッガーの思索に批判的に突き合わせて考察することも今後の課題になるかと思います。

■授業について

 哲学は古くから、たんに自分の思い付きを述べる「独り言」ではなく、「対話」することであると言われています。授業の場では、対話相手として特定のドイツの哲学者を選び、みんなでその人の主張を読解することを通じて聴き取ります。この際に求められるのは、たんなる語学力ではなく、内容を把握する力、言いかえれば、きちんと耳を澄ませてその人が言いたいことを聴き取る力です。私が担当する「2年次演習(ドイツ語)」という授業では、初級文法を学習し終えた人を対象に、比較的やさしいレベルの哲学書をドイツ語で読みながらこのような力をつけるトレーニングをします。
 また、哲学において求められるのは「対話」するための聴き取り力だけではなく、発信力、つまり聴き取ったことを自分で考える力やそれを表現する力も求められます。演習タイプの授業では、テキストを読解して哲学者という対話相手の主張を聴き取るだけでなく、それについて別の対話相手、つまり受講者同士で議論します。また卒業論文執筆の過程では、グループワークを通じて相互に各自の論文の途中経過の報告や質疑応答をするということも行っていきます。こうした作業を通じて、過去の哲学者の見解を現代の諸問題にからめて考え、また「独り言」にならず、他の人に分かりやすい仕方で発信する力を身に着けていきます。
 さらに西洋の哲学者を自分の対話相手にする場合、ヨーロッパの歴史や文化背景についても或る程度知っておく必要があります。哲学書の中には今の時代からすると、随分ととんでもないようなことを言っているように思われる主張も多く見出されます。しかしそのような発言が出てこざるを得なかったような、時代背景、文化背景がある場合が多いのです。哲学史関係の授業ではそうした理解の手助けになるような情報を皆さんに提供できればと思っています。

■所属学会

日本哲学会、日本現象学会、実存思想協会、日本ライプニッツ協会、ハイデガーフォーラム、学習院大学哲学会

■主な著書・論文

Denkspuren − Festschrift für Heinrich Hüni (共著:Königshausen & Neumann 2008, 担当:Das Erstaunen als Grundstimmung des ersten Anfangs der Philosophie)
Affect et affectivité dans la philosophie moderne et la phénoménologie − Affekt und Affektivität in der neuzeitlichen Philosophie und der Phänomenologie(共著:L'Harmattan, 2008, 担当:Die Grundstimmungslage des anderen Anfangs bei Heidegger)
Die Grundstimmung Japans − Ein Versuch mit Martin Heideggers Stimmungsphänomenologie(単著:Peter Lang, 2010)
・『ハイデガー読本』(共著:法政大学出版局, 2014, 担当:「西洋哲学の原初」)
・「情状性/気分の規定力」(『フッサール研究』, 第13号, 2016)
・「世界の意味喪失の経験は共有できるか?−ハイデッガーとパトチカを手引きとして―」(実存思想論集32『アーレントと実存思想』, 理想社, 2017)
・『ヨーロッパと怪物』(共著:成城大学文芸学部, シリーズ・ヨーロッパの文化5, 担当:「「怪物」の哲学―ハンナ・アーレントの視点から」, 2018)
・「「聖なる悲しみ」についての一考察」(『立命館文學』第665号(谷徹教授退職記念論集), 2019)
・嶋ア啓編『中世的身体イメージと遊戯性』(共著:日本独文学会研究叢書143, 担当:「逸脱という現象―退屈と遊戯の場合」, 2020)

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