学習院大学の就職力
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 2人に1人が大学に進む時代。「4年制大学卒業」という肩書だけで就職戦線を突破するのは難しい。そこで大学が力を入れるのが、学生たちが卒業後の道を切り開いていくための支援の充実だ。 読売新聞が2008年から、偏差値やブランドに頼らない大学選びの一助にと行っている「大学の実力」調査によると、就職支援策で最も多いのは「エントリーシートの書き方や模擬面接、マナー講座」で、実に96%の大学が採用している。まずは就職戦線を勝ち抜く実戦的スキルを身につけよう――というわけだ。 企業の人事担当者を招いたセミナーや、専門学校と提携した資格取得講座の開催などは、もはや常識。「同窓会が組織的に先輩や会社を紹介する」も、学習院大学をはじめ3割弱が実施していた。使えるものは、先輩の人脈はもちろん、専門学校でも、企業の採用担当者でも活用しよう。まさにあの手この手だが、この過程で学生たちは、社会としっかりと向き合うことになるのだと思う。 親の力もあてにされている。就職戦線に臨む学生は20歳を過ぎているだろうから、もう「オトナ」。親の出番でもなかろうと思われるかもしれないが、学生生活をまずしっかり送ってもらおうという趣旨で、定期的な父母会を開いている大学は8割強、親を交えた三者面談や就活セミナーも半数以上が採用する。 ただ最近は、そうした手法に首をかしげる大学関係者も増えてきた。親の過干渉が学生の自立を邪魔するのではないかという見方が出はじめているのだ。 先日、ある大学が親を対象に開いた「キャリアガイダンス」を取材した際に、悪天候をついて集まった親たちに向かって大学側が発した第一声が、「これからは、お子さまを自立させて!」だった。親が先回りして世話を焼きすぎるのをやめ、自分で考え行動させるようにしようと、大学も訴えはじめている。 朝起こす、弁当を持たせる、履修科目を選んでやる、リポートを代筆する……。我が子かわいさに親はつい手を出してしまう。ただ、「こんな無名企業に入れるために進学させたのではない」と、子どもの意思を無視して内定を断ってくる親も中にはいる。こうなると、大学関係者ならずとも首をひねらざるを得ない。 成否は一に、学生が社会人としての自覚を自分自身でいかに育むことができるか、にかかっていることを確認したい。 厳しい指導の中にも温かさを失わず、社会の荒波に送り出す。それが就職支援のあるべき姿ではないかと思う。まつもと みな/秋田支局、社会部、生活情報部などを経て、今年4月に発足した教育部編集委員。「大学の実力」調査班キャップ。西門厳しくかつ温かく――。就職支援を実らせるために読売新聞東京本社編集委員/松本美奈コラム記者の眼37

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