学習院大学の就職力
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私が就職活動をした四半世紀前はインターネットが商業化される前であり、大学の「就職課」や「就職指導課」に赴き求人票を眺めたり、意中の企業にハガキを送って資料請求したり、クラブの先輩を頼って企業訪問したりするのが就活だった。いずれにしても出会える企業の数はかなり少なかった。入社志望書も今のようにエントリーシートなどと呼ばれることはなく、履歴書に毛が生えた程度のものであり、記述欄もずっと小さかった。 こうした牧歌的な就活が大きく変貌したのは、立命館大学が1999年に全国に先駆けて「キャリアセンター」を設立し、また、ちょうどその頃に就職会社による就活サイトが広まったあたりからである。ネット上には無限とも思える企業情報があふれ、だれでもアクセスするだけで、どんな人気企業の情報も入手できるようになった。企業サイドからすれば、ネット上で募集告知を出したとたんに、処理しきれないほどの応募者が集まり、採用業務は忙しくなるばかりだ。また、それまで求人票という形で学生に企業情報を提供していた大学の機能は相対的に低下したが、その一方で、学生を指導・教育する機能は「キャリア教育」の名の下で格段にアップした。 要するに就活はこの四半世紀で、企業と学生が「ご縁」を結ぶ個人的な行為から、情報戦へと変貌したのである。情報戦となれば、これを制する戦略や戦術、技術が必要となる。それが大学にも求められるようになり、キャリアセンターはますます学生指導に熱が入るようになった。学習院大学をはじめ、実績を上げているキャリアセンターも多い。 たしかに、近年の就活は情報戦の様相を呈してはいるが、それはあくまで企業情報の入手に関してであり、「ここで働きたい」という企業が見つかったら、あとはその会社との縁を結ぶしかない。そのためには、地道に社員との面会機会を作ったり、話を聞いたりするしかない。そうやって出会える企業の数は、昔も今もそう変わらないはずだ。 近代化しても就活は「ご縁」なのだ。何万もの企業情報を入手できるからといって、それに引きずられてやみくもにエントリー数を増やしても、効果的な就職活動ができるとは限らない。豊富なメニューが目の前に用意されているだけに、なぜその業界を選んだのかを、企業に対してだけでなく、自分に対しても説得できなければならない。可能性が無限にあるように見えてしまうWEB就活時代は、「より良い条件の会社」をいつまでも探し続ける学生を生む。あるいは処理しきれない情報量に疲れて適当に業界を選んでしまう現象も起こる。この部分が、親世代の就活と今のシューカツにおける本質的な違いである。就活における不易と流行を理解するキャリアセンターがあるかどうかが、大学の価値を決めることにもなるだろう。就活からシューカツへと時代は移るが、本質は不変1/専門書が充実する近代的な雰囲気の法経図書センター2/広々としたグラウンドもあり、朝・夕、学生たちは部活やサークルの練習で汗を流す21読売新聞東京本社販売局販売企画調査部長 原田康久コラム採用担当の思い①はらだ やすひさ/文化部、宣伝部、人事部などを経て、販売局販売企画調査部長。著書『すべらない就活 2014年度版』ほか多数。49
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