学習院大学の就職力
54/71
54 第1回は、就活開始から内定までの大まかなスケジュールと、自己分析や企業研究がなぜ必要なのかをパワーポイントに従って解説する。その冒頭で渡邉教授は話す。「理系の学生が理系の就職をめざす以上、就活のあり方も文系とは違うものになります」「キャリアの学校」の第1回はオリエンテーション。100人以上の学生が教室をうめるOB・OGのセミナー後、交流会で情報交換 たとえば、企業がコミュニケーション力や協調性、リーダーシップといった社会人基礎力を重視していると聞くと、サークルやアルバイトで周りの人間といかにうまくやったかをアピールしてしまう学生が多い。たしかに文系学生が志望する企業に対しては自己アピールにもってこいの素材になるだろう。 しかし、理系学生には4〜6年にわたって研究を続けてきたという強みがあるのだ。何もコミュニケーション力で競って、文系と同じ枠で勝負する必要はない。理系特有の思考や能力をアピールするほうが、勝算が高いのは道理といえよう。 さらに理学部の場合には「学習院から○人取ります」「学習院の学生が欲しいので優秀な人材を推薦してください」と企業からオファーが来るケースも少なくない。こういった制度を利用すれば、何十社もエントリーする必要はなく、就活は早々に決着がつくことになる。 その節約した時間で研究に打ち込んだほうがいい。効率やコストを考えて研究をすることは、将来、仕事をする上で役にも立つからだ。いいことずくめであることに気づかないまま就活に臨む学生が多いのは、いかにももったいないというのが渡邉教授の論である。 もちろん、その前提として、自分に何ができるのか、将来何をしたいのかといった自己分析や企業研究を進める必要がある。ここに「キャリアの学校」の意義がある。地道な個別指導で自己分析を深める 「これから就活をはじめるに当たって、理系の考え方がアドバンテージになるということがわかったのは収穫でした」(理学部物理学科3年の男子学生)「教職、民間企業就職、進学を並行して考えているのですが、企業研究が足りていなかったので、参考になりました。今日知ったことを今後の活動方針にも生かしたいです」(理学部物理学科3年の女子学生) 就活の準備をはじめる時期にあたる3年生にとって、このセミナーは意識を変えるきっかけにもなる。しかし、完全に実感させるところまではまだ至っていないのだと渡邉教授はいう。「セミナーで理系の強みをどれだけ説明しても、面接の直前になると、『やっぱりサークルの話をしたほうがいいんじゃないでしょうか』と相談に来る学生がいます。あとはマンツーマンで根気強く対応するしかありません」 学生は自分が大学・大学院でやってきた勉強・研究の重要性を判断できない。そんな学生のために、それぞれがやってきたことを一から教授が聞き取り、何が強みなのかを指導している。 さらに、学生一人ひとりに個別の対応をするため、理学部では就職委員会を立ち上げ、各学科に1人ずつ就職相談担当を配置。面接を控えた学生は毎日のようにやってくるという。そして、必要とあれば保護者との面談も行う。これだけ丁寧な対応ができるのも少人数制の学部だから
元のページ