学習院大学の就職力
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56こそといえよう。働くイメージは見学でつかむ 理学部でもOB・OGは就活のフォローに活躍している。年1回、12月に理学部の同窓会経由で集まったOB・OGがセミナーを開いている。 先輩たちは、企業でどんな研究をしているのか、研究所とはどんなところなのかを後輩に話して聞かせるほか、人事を務めるOB・OGによる面接練習や、人事から見た理系の採用活動について話している。「技術職は実際に現場を見ないと何をやっているかイメージしにくいのも確か。企業によって文化も方針も全く違いますから、合う・合わないも含めて職場見学の重要性は文系職よりも高いです」(渡邉教授) 3年の夏休みには職場見学に行き、働くイメージを持った上で、OB・OGに詳細を聞いて、進路を固めるのが理想なのだという。潜在能力を秘めた理学部の就職力 近年、技術職や研究職ではなく、営業職・総合職といった文系学生と同じ職に就く、いわゆる文転就職する理系学生が多い。せっかく文系よりも厳しいスケジュールの中で勉強を積み重ねてきたのに、それを社会で生かせないのはもったいない。第一、積み重ねてきた知識を前面に押し出さずに文系と同じ土俵で戦っても不利なだけというのが渡邉教授の分析だ。「キャリアの学校」への参加を機に、文転を考えていた学生も技術職・研究職をめざすことが増えてきたと、渡邉教授は確かな手応えを感じているという。 さらに、理学部の特別な取り組みとして、3年前からメンタイで自然科学研究科修士課程1年次を対象にした特別班を編成している(P15参照)。そのきっかけは学生の気質の変化にあるという。「専門性や知識、研究力など能力的には高い水準を保っていますが、一昔前の学生は、自ら動いて内定を獲得していたのに対し、最近は、最初に背中を押してあげることで、より自分の力が引き出せるタイプの学生が増えてきたんです」(渡邉教授) その変化にいち早く対応したというわけだ。その効果はてきめんで、世間で就職難がいわれている最中にあっても、内定獲得者は一定レベル以上を保っている。「『オレが世界一のスパコンを作ってやる!』、それくらいの大きな夢を持ってください」 就職することをゴールとせず、そこで何をやりたいのか、長い目で将来を考え、安易な決断をしないでほしいと渡邉教授は語る。 3年次の授業をきっかけに光学に興味を持ち、河田ナノフォトニクス研究室に入りました。これは、学習院大学でも教きょう鞭べんを執っていた河田聡教授が理化学研究所内に持っていた研究室で、学部3年から修士2年まで所属し、制度上単位も取れます。 修士1年で就活をスタート。光学メーカーを志望していたのですが、光学を専攻する女性は数が少ないので、女性でもちゃんと働いていけるのかどうか不安がありました。そこで企業研究では、子どもを育てながらでも安心して働けることを重視しました。その際、OGからもらった生の情報はとても参考になりました。 大学主催の就職セミナーはたくさん開催されていましたが、理化学研究所に所属していたため、うまく調整できず、ほとんど参加できませんでした。そこで頼りになったのが理学部の先生方でした。いろいろな方向性で企業研究の指導をいただき、面接練習の相手までしてくださいました。顔見知りの教授を相手に、自己PRをするのはとても恥ずかしいものでしたが、その分、場慣れもして、実際の就活では初対面の面接官を相手に、そう緊張せずに臨めました。 就活中は、いろいろな先輩から話を聞きました。その中で「専攻した分野を就職してから生かせるとは限らない」という話もあり、幅広く事業展開している企業のほうが、面白いことに出会える可能性が高くなると考えるようになりました。そこで、事業内容の広い企業に的を絞り、最終的には、学校推薦で選考に臨み、大日本印刷に入社しました。 大日本印刷で最初に配属されたのは、光学とは関係のない有機薄膜トランジスタを研究する部署でした。知識はない状態でしたが、研究の手法や進め方は学生時代に身につけていたので、慣れるまでそう時間はかかりませんでした。 その後、幸運にも入社2年目に、光学を専門とする部署に異動となり、学生時代の知識を役立てられる場を与えられ、世の中にない新しい光学デバイスの設計・開発に携わりました。なかでも、東京大学と共同研究を行い、その研究成果が表彰されたことは、大きな自信となっています。 現在は、研究開発の効率や成果の管理、世の中の動きや技術のリサーチ業務に携わっています。仕事の規模感や全体像が見えるので、また別のやりがいがありますね。 理学部は少人数教育なので、教授からマンツーマンの指導が受けられますし、実験器具も2人で一つ使えるくらいとてもぜいたくな環境です。就職してから、渡邉教授が主催するOB・OGのセミナーに参加すると、後輩の面倒を見てほしいと頼まれることもしばしば。もちろん喜んでサポートしています。こういう絆は学習院ならではかもしれません。 学習院大学、そして理学部の温かさをつくづく感じています。大日本印刷株式会社関根陽子さん2009年 大学院博士前期(修士)課程 物理学専攻修了OB・OGインタビュー(研究開発)

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