学習院大学の就職力
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62 課程では、多くの学生が3年生までに講義科目で知識を積み重ね、4年生で総仕上げの「博物館実習」を履修、卒業と同時に資格を取得する。履修は学部学科を問わない。美術史や歴史を専攻する学生、また、女子が多いというが、男子学生からも一定の人気があり、最近では理系専攻の学生も増えているようだ。キャンパスに残る歴史と伝統が学芸員の入り口 例年150〜200人が新たに履修を開始するというが、なぜこれほど多くの学生が学芸員課程に引かれるのか。学芸員課程の運営に携わる学習院大学史料館の学芸員・吉廣さやかさんはこう話す。「100年以上の歴史を持つ目白キャンパス内には、文化財に登録された建物が点在し、博物館相当施設である史料館には、教材となる資料が多く収蔵されています。歴史と伝統を実体のある〝モノ〞として日々目の当たりにできる環境は刺激が多いと思います」 授業には、こうして受け継がれてきた学習院大学の歴史と伝統が活用されている。たとえばその一つが、史料館の教育普及プログラム「キャンパスまるごとミュージアムツアー」。学内を巡りながら学芸員の解説で、毎日授業を受けている建物の価値や学習院大学の歴史を知ると、学生たちからは、その感動や知識を家族や友達に伝えたい、という言葉がよく聞かれるそうだ。資料に対する愛着と、それを伝えたいという気持ちは、学芸員をめざす出発点としてとても大切な感覚だと吉廣さん。伝統と実績ある学芸員養成 博物館法には〝博物館〞は、資料の収集・保存、調査・研究、展示・公開を教育的配慮の下に行う機関と定められている。学芸員資格とは、その〝博物館〞で働く専門職〝学芸員〞になるための国家資格のことである。学芸員は、博物館資料に関するエキスパートであり、人々の生涯学習活動を支える教育職でもある。 学習院大学では1981年から学芸員資格を取得できるカリキュラムを開講し、現在までに資格取得者は3000人を超えた。2012年度からは、法令の改正に伴い授業内容がさらに充実した形に編成し直され、名称も〝学芸員資格取得〞から〝学芸員課程〞と変更され、新たなスタートを切った。現在、学習院大学史料館として活用されている北別館は、明治42年築の文化財。学芸員課程の事務室や実習室がある「博物館実習」で美術品を輸送するための梱包(こんぽう)を学ぶ 博物館や美術館などで働くためには学芸員資格という国家資格が必要とされる。しかも、資格取得者の中から学芸員として実際に博物館で働けるのは1%にも満たないという狭き門なのだ。そのような状況の中で、長年の平均就職率5%という実績を持つ学習院大学の学芸員課程。その強さはどこにあるのか。学習院大学ならではのカリキュラムについて聞いた。歴史と伝統を生かした学芸員養成学芸員の実務を学ぶ
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