学習院大学の就職力
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67員が支え、育てるというものに変わってきています。『学びの共同体』として、そうした教育を長く実践されてきた、東京大学名誉教授でもある佐藤学教授に本学に加わっていただき、従来の学び方・指導方法・教育方法を根本から変えるということを新学科の軸と考えています。 従来の『覚えておけ』という教育だと教員は楽です。一方、学習者がしっかり学んでいく授業は、対象をしっかりと見極めなくてはなりませんし、その場に応じた方法が求められるなど、教える側は大変です。ただ、時代がそれを求めており、そうしたシステムを導入した国で成果を上げている。日本でも根本的な教育方法の改変が求められているのです」 そうした教員育成を支えてくれるのが、先のキャッチフレーズにある体験型学習やコミュニケーション能力の育成のための異文化体験や外国語学習だ。 体験型学習としては、子どもたちの自然との触れ合いが希薄になっている時代だからこそ、小学校の教員には豊かな自然体験が求められているということで、1年次から必修科目で「自然体験実習」を課している。山梨県南アルプス山麓の白州における四季を通じてのキャンプで、田植えや稲刈り、脱穀、森林の間伐作業などを体験する。すでに20年以上教職課程で取り組んでいるアクティブな授業「模擬遠足の実習」(P65のコラム参照)も、小学校版として行う。 異文化体験や外国語学習の面では、もともと同大学が東アジア諸国との関係が深いことから、そうした従来の付き合いを 「入試科目に理科がなく、その分、理科を苦手とする学生が多いようです。理数系の指導力のある教員が求められている中、どうその方向に導いていけるかが課題の一つで、基礎的な知識の取得から入って、環境教育などを通じて関心を抱いてもらえるようにと、いろいろ工夫をこらそうと考えています。 49人の学科生のうち、男子が25人で女子が24人とバランスよく、中でも男子が活発で鍛えがいを感じています。最近は女子に比べて男子学生が元気がないと言われることが多いのでとても頼もしいです。 外部からは最終的にどれだけ教員を輩出したかで評価されるので、教員としての適性を3年ぐらいかけて、しっかりと身につけさせないといけません。教員としての適性といっても、教科の指導力を含めた学力や、教師としての基本的な振る舞いなどさまざまです。ただ、幅広い教養といった基本の部分はどの時代でも変わらないので、そのあたりはじっくりと指導していきたいですね」(取材/読売新聞東京本社学事支援部 二居隆司)さらに広げる中国や韓国への研修旅行といった交流事業も予定。そうした交流の際に必須となる語学力を養う目的で、第二外国語として、中国語もしくは朝鮮語の履修を義務づけている。 また、学校と地域という面に関しては、教育学科の教員が持つ大学近辺の小学校教員とのパイプを生かして、学生を小学校の現場に触れさせるのに加え、3年次以降は社会体験実習を導入し、いろいろな現場を体験するとともに、外部とのコミュニケーション能力を育む予定だ。「キャンパス」「地域」「海外とのつながり」。学習院の資産をフルに生かした教育 キャンパス内の恵まれた自然、長年培われた東アジアの学校との交流、さらには教育学科の教員が持つ地元教育界とのパイプなど、学習院大学が持つ資産が、教育学科の「教育内容」に大いに活用されているわけだ。 新設学科として新しい学期がはじまってから3か月。新卒生を出すまで、まだ先は長い。最後に、1期生に対する手応えと今後の課題について、諏訪教授はこう語る。の教育の柱として掲げ、「2050年の社会を見据え、次代を担う資質と能力をもった小学校教員の育成」を目標としている。教育のあり方を根本的に見直した体験型学習が軸 具体的にどのような教員育成をめざすのか? 諏訪教授はこう説明する。 「これまで日本では、知識を教えるタイプの教育が基本でしたが、世界の教育の主流は学習者自身が積極的に学び、それを教グランドピアノの置かれた音楽室。学生が個人的に利用できるピアノ練習室も用意されている

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