学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

近代移行期東アジアの社会と思想(1998-2001年度)

 

構成員
代表研究員 高柳信夫
研究員 坂本多加雄 林雄介
客員研究員 武田幸男 宮田節子
(1)研究の目的・意義

現在、主にそのめざましい経済発展を背景として、東アジアへの関心は、世界的に高いレベルにあることは周知の事実である。
本プロジェクトでは、その東アジアの中心をなす、日本・中国・朝鮮につき、それぞれの近代への移行期の在り方を、主に社会・思想の領域について検討し、その比較研究を通じて各地域の「個性」を明らかにすることを目指したいと考える。
日本・中国・朝鮮の「近代移行期の比較研究」などというと、テーマとしてはいささか古めかしく感じる向きもあろうが、現今の各地域の当該時期に関する研究は、極めて専門化・細分化されつつあり、こうした状況を踏まえた場合、現在において、改めて新しい諸業績をふまえた上で、本プロジェクトのような総合的な比較研究を行うことは、それぞれの地域の研究の活性化のためにも意義あるものと考えられる。
特に、本研究所は、上記の三地域の中でも、比較的我が国における研究の層が薄い朝鮮については国内屈指の研究実績を有しており、このプロジェクトでもこうした特色を存分に生かし、朝鮮に関する研究を一つの核としてゆくことで、オリジナリティを持った成果をあげることが可能であると信ずる。

(2)研究内容・方法

日本・中国・朝鮮のそれぞれを専門研究領域とするプロジェクトの各メンバーが、それぞれの問題関心を軸として、各地域の近代への移行期の特色を、主に社会・思想面において抽出することを目指す。その際、特に朝鮮に関する研究に重点を置くものとする。
社会的側面については、所謂「伝統的」社会から「近代的」社会への移行の過程において、社会的にいかなる変動が見られたか、というのが大きなテーマとなるが、日本・中国・朝鮮という「国」をアプリオリに一つの統一体として前提とするのではなく、それぞれの内部における地域的差異にも十分に留意してゆく。特に朝鮮に関しては、これまでも本研究所において、本学所蔵の朝鮮戸籍大帳についての調査研究が継続的に行われてきているが、それをさらに一層進めることが、この課題に応える一つの方法となると考えられる。また、本研究所が管理する「友邦協会関連資料」も貴重な材料となるであろう。
思想的側面については、各地域について、当該時期における西洋思想の受容のあり方とその後の展開について検討する。また、さらに、この問題の検討を通じ、逆に各地域の「伝統的」思想の特徴をも描き出すことも可能となる。
そして、以上のような研究を前提とした上で、さらにメンバーの間で討議を重ねることによって、最終的には、各地域における、社会と思想の間の相互関係の様態ならびにその特色といった問題にまで議論を深めてゆくことを目指す。
また、本プロジェクトが運営委員会において4年チームの重点プロジェクトとして位置づけられたことから、調査研究のみならず、学習院の財産でもある上述の朝鮮戸籍大帳を画像データとして(将来的にはテキスト化も検討中)インターネット上で公開するなど、資料の保存・公開の面でも積極的な役割を果たして行きたい。

(3)研究の成果

武田幸男・山内弘一・山内民博・李勛相・井上和枝『朝鮮後期の慶尚南道における社会動態の研究-学習院大学蔵朝鮮戸籍大帳の基礎的研究(4)-(調査研究報告No.51)』(学習院大学東洋文化研究所、2002年)

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