受賞者
自然科学研究科生命科学専攻 博士後期課程1年 木下 佳昭さん
表彰式
平成26年7月9日(水)10時40分より 西5号館6階学長室において、表彰状と副賞を授与
表彰理由
世界で初めてマイコプラズマ・モービレの滑走装置の単位ステップを発見し、その成果を米科学アカデミー紀要(PNAS, Proceedings
of National Academy of Sciences of the United States of
America)に第一著者として原著論文を発表 したため。
研究内容
マイコプラズマは、人肺炎などを引き起こす病原性のバクテリアです。このバクテリアは、宿主表面上を滑るように動くことで、病原性を発揮します。しかしながら、病気と密接に結びつくこの運動は、既知のものとは全く異なり、これまでの生物学では説明がつかない謎に包まれています。中でも魚に寄生する『マイコプラズマモービレ』という種では、私達の常識では考えられない運動を示します。何と、このバクテリアは、1秒間に自身の5倍もの距離を動くことができます。つまり、人と同じ大きさで考えると時速30
kmに達します。何故、バクテリアのような小さな生き物がこのような動きを達成できるのでしょうか?私は、この謎の解明を目指して、最先端の光学顕微鏡を用いてバクテリアが生み出すナノメートル(約1万分の1ミリメートル)の動きに迫りました。 結果は驚くべきものでした。何と、このバクテリアは、まるで人間が歩くように決まった距離をステップ運動していたのです。また、その大きさはこれまで知られていた運動装置の歩幅の中で最大でした。この結果は、このバクテリアが有する最速の滑走能を説明できるかもしれません。
今回の成果は、マイコプラズマの感染プロセスに必須な滑走運動の本質を理解し、安全性の高いマイコプラズマ特効薬の開発につながる重要な知見と考えられます。受賞コメント
今回、学長表彰という名誉ある賞を頂き、大変光栄に思います。このような賞を頂けたことは、西坂崇之教授の指導があったからです。西坂研究室は、最先端の光学顕微鏡が整っており、これまで見えなかったものを可視化するためのノウハウがあります。このような素晴らしい環境で研究を行うことで、私の初めての研究テーマが権威ある海外雑誌に掲載されました。この場を借りて、西坂先生並びに研究室の皆様に心より感謝いたします。今後も、この環境で研究に邁進し、世界初の研究を国内外に発信していきます。
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