詩経古譜

書誌情報

詩經古譜 不分巻 / 袁嘉穀 撰 / 光緒三十四年 / 刊行 学部図書局 / 石印本 / 1冊 / 10行21字 / 四周無 / 界無 / 書口無 / 魚尾無 / 断句無 / 縦19.9 cm×横13.2 cm / 旧蔵印「曹」 / 澤口東洋文化研究所旧蔵

解説

詩経に収録されている詩は本来曲にのせて歌うものであったが、曲は早くに失われ、詞のみが伝わっている。この『詩経古譜』は清末の袁嘉穀が陳澧の『詩経今俗字譜』などをもとに、詩の曲を五線譜で表し、手軽に歌うことができるようにしたものである。

袁嘉穀は、字は樹五、号は澍圃、雲南石屏の人、光緒二十九年の経済特科(清末に行われた時事問題を重視した科挙)の状元(主席合格者)である。袁嘉穀は光緒三十年から一年間日本に留学し、帰国後に国史館協修となり学部編訳図書局で日本の教科書の翻訳を主管した。『詩経古譜』はこの時期に書かれ、学部編訳図書局から出版されている。清滅亡後は故郷に帰り隠居していたが、請われて雲南東陸大学(雲南大学の前身)の教授となった。晩年は盧溝橋事件に憤慨し、病床で『責倭寇』を執筆するが、未完のまま同年12月に死去した。

現存する『詩経古譜』は比較的少ないようであり、例えば中国の全国紙の一つ光明日報の「雲南試奏『詩経古譜』」という記事には「この書は極めて珍しいもので、十分に珍重するに値し、音楽の「出土文物」と呼ぶべきものである。」と紹介されている。

本書には別の旧蔵者のものと見られる「曹」という朱印が捺されているが、未詳である。

本書はもと学習院大学教授 澤口剛雄(1902~1995)の旧蔵書。澤口は中国文学研究者で、唐宋の詩や楽府の分野で大きな功績をあげた。その蔵書は澤口東洋文化研究所として埼玉川口の旧宅に収められていたが、平成24年(2012)遺族により、本書を含めた一部が学習院大学の東洋文化研究所に移された。

(石原)

 

参考

  • 『光明日報』 2002年2月20日 「雲南試奏『詩経古譜』」
(表紙)

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