通天台(梅村楽府二種)

書誌情報

通天臺 不分巻(梅村樂府二種) /(清)呉偉業 / 宣統二年(1910年) / 刊行 長洲呉氏 / 刊本 / 2冊 / 9行17字 / 左右双辺 / 有界 / 黒口 / 単魚尾 / 断句無 / 縦22.5 cm×横12.4 cm / 框高12.9cm / 旧蔵印無 / 澤口東洋文化研究所旧蔵

解説

『通天台』は南朝梁から陳にかけて活躍した文人沈炯を題材に創作された戯曲である。梁の尚書左丞沈炯が西魏に捕らえられ、帰郷を願うもその文才故に許されず、苦悩のなか古の通天台で漢の武帝に上表文を書いて燃やすと、果たして漢の武帝が夢に現れ、願いを聞き入れる。そこで、それまであだとなっていた文才が初めて役立つというもの。『通天台』と『臨春閣』にはいずれも明朝の滅亡後清朝に仕えた呉偉業自身の苦悩と願望が込められていると考えられている。

著者の呉偉業は、字は俊公、号は梅村、灌隠主人など。江蘇大倉の人、崇禎の進士。詩人として知られている。

本書は呉偉業撰の雑劇『通天台』および『臨春閣』を清末に呉梅が『梅村楽府二種』として刊行した際の初印紅本である。梅村とは明末清初の文人呉偉業の号である。本書のような初印紅本は出版に際して校勘用や見本用として朱印されたものであるため、概して版木の状態が良い。『梅村楽府二種』は後に呉梅作の『煖香楼』を加えて『奢摩他室曲叢』の第一集となる。

本書はもと学習院大学教授 澤口剛雄(1902~1995)の旧蔵書。澤口は中国文学研究者で、唐宋の詩や楽府の分野で大きな功績をあげた。その蔵書は澤口東洋文化研究所として埼玉川口の旧宅に収められていたが、平成24年(2012)遺族により、本書を含めた一部が学習院大学の東洋文化研究所に移された。

(石原)

(表紙)

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