「現代物理学」2012年度

相転移現象の物理と数理

レポートの表紙(pdf ファイル)
「液体だった水が零度以下では固体の氷に変わる」ことに代表される相転移現象は、自然がわれわれに「出題」してくれたもっとも魅力的な難問の一つだ。 相転移現象をマクロな視点から理解することは、非線形問題における分岐現象という視点につながっていく。 相転移現象をミクロな視点から理解するためには、無数に近いミクロな要素(水と氷の場合なら、水分子)が互いに相互作用し合って引き起こす「協力現象」を解析する必要がある。 それは、未だにわれわれ人類の理論能力では完全には理解しきれない難問である。 この講義では、高校物理以上の予備知識は仮定せず、相転移現象(あるいは、広く協力現象)の本質の一端を描き出すことを目指す。

最初はごく簡単な確率モデルから出発し、個々の要素を支配する法則がきわめて単純でも、すべての要素をあわせたマクロな系は自明とはほど遠い新しいふるまいを見せることを体感してもらうつもり。 そこから、徐々に関連する物理に踏み込んでいきたい。 新しい物理的概念や数学的道具は丁寧に解説する予定だが、それでも、1 年生にはやや敷居の高い講義になるだろう。さらに、この講義では、必修の物理や数学に飽きたらず、それらを越えて物理学(や関連する分野)を学びたい学生さんを想定していることを強調しておきたい。講義の内容を含むような教科書や参考書は(おそらく)存在しないので、しっかりと出席して学習する必要がある。レポート問題も自分で理解してしっかりと考えなければ解けないはずだ(そもそも大学で「調べれば解ける」ようなレポートを出題することが問題なのだが)。

単に「レポートだけで単位が取れる」というつもりで履修すると後で後悔する可能性がきわめて高いことを注意しておきた(実際、以前の履修者で「ひどい目にあった」という率直な感想を書いてくれた学生さんもいた)。

また、この講義ではレポートだけで評価を行なうので、いわゆるレポートの「丸写し」については厳しく対応したい。「丸写し」を行なうことはもちろんだが、その原因を作る行為(たとえば、解答を配布したり、ネット上に公開すること)にも同様に対応する。


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田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
田崎晴明ホームページ

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