学習院大学数理物理セミナー

Mathematical Physics seminar at Gakushuin

オランダ、フロニンゲン大学のファン・エンター氏が来日される機会にセミナーをお願いしました。

ご存知のように、ファン・エンター氏は、スピン系の厳密統計力学を中心に数多くの業績をもつ一流の数理物理学者です。 今回は、やや辛口かもしれませんが、ランダム境界条件をもつイジング模型を例にとって、カオティックなサイズ依存性やメタ状態の定式化など、ランダムスピン系のおいて本質的と考えられている概念について議論してくださいます。 Newman-Stein 流のランダムスピン系についての予備知識がなくても理解できるよう、背景などについても話してもらおうと思っています(そういう話がなかったら、どんどん質問して、話してもらうつもり)。

なお、Newman-Stein の適切なレビューがないかを van Enter 氏に問い合わせたところ、Short-Range Spin Glasses: The Metastate Approach というのを紹介してくれました。

ご来聴を歓迎いたします。 (van Enter 氏は、前日の 13 日には、東工大で、別の話題(非線形ベクトルモデルなどでの一次転移)についてセミナーをされます。)

田崎晴明


講演者

A. C. D. van Enter

場所 (Place)

学習院大学、南一号館二階理学部会議室

Faculty of Science meeting room (second floor, South-1 building), Gakushuin University

日時 (time)

2005 年 9 月 14 日(水)3 時

September 14 (Wednesday), 3:00 PM


Ising models with random boundary conditions: chaotic size dependence and metastates

A. C. D. van Enter (work with K.Netocny and H.G.Schaap)

The phenomenon of chaotic size-dependence (non-convergence in the thermodynamic limit) and the formalism of metastates (which describes a probabilistic convergence in such situations ) were studied and developed by Newman and Stein. In this lecture we discuss the example of the 2-dimensional Ising model with random boundary conditions and how it, as one of the simplest models where chaotic size-dependence occurs, illustrates these concepts. Some simple corollaries on toy models with many states also are developed.

カオティックなサイズ依存性(熱力学的極限で収束しないこと)の現象と、メタ状態(上のような状況で、確率的な収束を記述する)の定式化が、Newman と Stein によって研究され、発展させられた。 この講演では、ランダムな境界条件をもつ二次元 Ising 模型の例を議論する。 この系が、カオティックなサイズ依存性を示すもっとも簡単なモデルとして、上記の概念をいかに例示してくれるかを議論したい。 多くの状態をもつトーイモデルについての帰結も得られている。


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田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
田崎晴明ホームページ

hal.tasaki@gakushuin.ac.jp