以下、化学がご専門の小波秀雄さんからいただいたコメントを、小波さんの許可を得て、そのまま転載しておきます。 単位の間違いはお恥ずかしい限り。 Atkin が途中で activity の単位を変えていることと、K_W などの次元を明示していないのが、ミスを誘った要因だとわかりました。 (pH の定義には無次元量を使うだろうといういかにも理論物理屋らしい思いこみもありますね。なんといっても、今までの勉強不足が最大の原因か!)
Conc / mol L^1 γ(Na+) γ(Cl-) ----------------------------------------- 0.1 0.77 0.75 0.01 0.90 0.90 0.001 0.96 0.96 -----------------------------------------
塩橋というのは、 それによって、陰イオンの移動に伴う(自由)エネルギーの変化を考えなくてよくなるのが味噌なのですが、正直なところ、私がその機構を十全に理解しているとはいえないようです。 多分、非常にややこしい問題が絡んでいると思われます。 (ある本には、通常の熱力学では取り扱えないと明言してありました。)
私の本に書いてあることは、上の「半透壁」についての嘘を除けば、一応は正しく、計算も一般に受け入れられているものをある程度明瞭に書き直したものになっています。 しかし、全体のストーリーが完全でない以上、これでは駄目です。
理解していない塩橋は捨てて、実際に半透壁で仕切った濃淡電池を取り扱うことにします。 この方が実験は難しいでしょうが、理論的な解析は明解になります。 これは、完全にできました。 議論に曇りはありません。 ちょっとこの節が長くなりそうだけれど。
ちなみに、電池の扱いの問題を指摘してくれて、色々な文献を教えてくれ、議論してくれているのは、米国 NIH で今でも神経生理の研究をしている私の祖父です。 (祖父からは、pH の定義も気に入らないと指摘されました。 全体を操作的な視点で貫くといいながら、pH の記述は、なんら操作的ではないし、 お恥ずかしいことに、人の本に書いてあるのをそのまま写しているだけ。 ここらへんも叩き直すべきですね。 あと、化学ポテンシャルや活量も、いかにもぎごちなく、操作的な視点からは 遠ざかっている。 どこまで全体的な視点と(思想的に)整合させられるか、悩んでみます。)