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HFTの金融仲介機能:
その行動と影響に関する堰モデルの展開
辰巳 憲一*
欧米では,高頻度取引と訳されるHFT(high frequency trading)に関する実証研究が増え出し,まだまだ少ないがHFT行動の理論モデルも構築されるようになってきた。HFTが参入する結果市場構造にもたらされる変化が分析され,HFTの仕組みに立ち入った前向きの批判も生まれるようになっている。また,最近は日本のデータでもHFT行動が検証されるようになっている。
本研究では,主として欧米や日本のデータから明らかになっているHFTの行動に基づいた,堰(weir)モデルを提示し,HFTが果たす機能と市場への影響を知ることが出来る基礎理論を展開する。簡単なモデルにも係らず,HFTに起因する流動性の変化,新しい市場構造と金融仲介機能が明らかにされる。
HFTは様々な取引戦略をとることが知られているが,本研究では,反対売買待ち(wait for the other side)と呼ばれる戦略を取り上げることとする。この戦略が,金融仲介機能をどのように持つことできるかを明らかにする。それとの比較で,他の戦略を紹介し,金融仲介の視点から良し悪しを評価してみることになる。
また,基礎となる部分は,証券取引だけではなく,銀行取引などを含んだ,金融・ファイナンスの最近までの理論展開方法に沿っている。また後半では,新聞等様々なメディアで報道されている指摘とのかかわり合いを説明する。
そして,体系的なモデル分析にそぐわないテーマではあるが,呼値の刻み,注文キャンセル,などについて,いくつか関連する点を追加的に考察してみよう。
HFTによって,用語法として本稿では,高速,高頻度取引とその専門投資家を敢えて区別しないで両方を意味するようにする。正確を期す必要がある場合,取引自体(high frequency trading)をHFTing,専門投資家・トレーダー(high frequency trader)をHFTerと記すことにしよう。
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1 はじめに
1−1 基礎概念の展開
まずは,HFTを理解するために必要ないくつか重要な基礎概念を説明しておこう。分散化・分割,小口化,在庫保有,ヘアカットあるいはスカルピングである。それらの多くはよく知られているため簡単に説明する。
1−1−1 5つ以上の分散化・分割化要因
ポートフォリオ理論の分散化・分割化はよく知られるようになっている。それ以外に,様々な次元で次の4つ以上の分散化概念があり,合計5つ以上の要因がある。
(1)リスク低減のための分散化
リターンの相関が低い銘柄を組み合わせればポートフォリオ・リターンのリスクは低くできる効果が発見され,投資に関わる理論は大きく発達したことは今や周知であろう。
(2)投資家名義の分散
注文の一部あるいは全部を関連する複数の投資家名で出す,借名取引が実際なされている。その主たる目的は,手口がばれるのを避けるためである。稀に,大口投資規制など規制を逃れるためもある。
(3)場所の分散
取引所,PTS などに売買注文を分散して発注する,ことがなされる。同一銘柄で,ほぼ同時でない場合第三者は識別できない。その主たる目的は,執行の効率を上げるためである。
(4)時間の分散
(大口)注文を小口に分けて時間差を付けて出すことによってなされる。主たる目的は,マーケット・インパクトを小さくするためである。
(5)注文ロットの分散・分割のその他の要因
大量の注文を一度に出し価格が大きく変動するマーケット・インパクトを避けるため,投資家は発注を分ける。このことがきっかけで,HFTは普及した,とする意見が存在する。もっとも,2000年代前半からはIT(情報技術)の進歩を受けHFTは発展したのも事実であるようである。
そもそもトレーダーは,必要売買額(例えば,それは投資戦略が決める)の一部しか,戦略上,市場に出さない,と考えられる。約定価格が変ったり,新しい気配が出されれば,残りの(一部あるいは全部の)売買予定数量が市場に出される。この戦略はアイスバーグ注文と呼ばれる。
特に,取引相手には売買の量あるいは価格によって手の内を読まれる可能性が高いが,件数を増やして小口化すれば取引相手は多数になり,その可能性は低くなる。多量の注文に課される気配開示義務を回避するなど,規制回避のために,取引を分割することもある。
さらに,注文をいくつかの小口に分けて注文を出す(売買に応じる)理由として,本稿で後述のように,HFT行動は必然的に小口化するという,新しい要因が考えられる。
1−1−2 マーケット・メーカーの保有在庫
マーケット・メーカーが保有する在庫は,販売に携わるすべての業種の業者にとって共通に
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業務遂行上必須であり,証券を買いに来た投資家に直ちに売り応じることができる。そして,待たせることなく,顧客を逃がさない。この点はいわゆる在庫理論が様々に分析している。
それでは,取引が高速化したら,マーケット・メーカーはどうするのであろうか。その在庫保有にどのような変化が起こるであろうか。あるいは,HFTが現れたら,マーケット・メーカーはどう対応するのであろうか。HFTはマーケット・メーカーとどのような形で競合する存在になるのであろうか。このような,新しい問題(の一部ではあるが)に対する答えを以下では展開したい。
1−1−3 小口化をもたらす要因
一般に小口化は,1件当たりの取引規模が小さくなることを指し,多くは市場参加者の最適行動の結果である。取引相手が小口化していれば,こちらも小口化しておれば取引上都合よい。それゆえ,小口化は小口化を生む加速化傾向がある。
小口化の効果については,注文を出して約定できる確率の上昇が挙げられる。市場に小口の売買注文が増えると,個人投資家が小額の買い注文を出した場合でも,付け合せることが出来る売り注文が見つかりやすくなる。その結果,株式取引が成立する回数が増加する。それゆえ,小口取引でも希望通りの価格で取引がいち早く成立しやすくなり,個人投資家にとって市場の使い勝手がよくなる。流動性が高くなった,と言われるようになるのではないかと思う。
それでは,HFTerは最適化の過程で,どのように取引小口化を行うのか,興味が沸く点である。しかしながら,HFTだけが取引の小口化をもたらしたわけではない。小口化する要因は一般に複数ある。まずは,それらを説明しておこう。
ちなみに,以下の諸点は実証分析では重要である。適切に該当する変数を選び出すことができ,多重回帰分析出来れば,小口化の要因を識別できることになる。
(1)市場インパクト
小口化は,(自身の売買で価格を変動させてしまう)市場インパクトを小さくしたい投資家の狙いから,もたらされた。取引を成立させ約定することをもって業務の完了となる証券業者にとっても,小口化によって速い時間で取引を成立させることは,取引の数量が大きく収益に貢献することと共に,業務効率上重要になる。
(2)代替市場
小口化が進んだのは,米国の場合複数の代替市場が並列し,取引が多くの市場に分散化しているからではないかという意見がある。注文が複数の市場にわたって分散されると,総売買高は増加する可能性があるものの取引の平均規模は小さくなる,と考えられているからである。
(3)売買単位と呼び値刻み
その他の要因としては,売買単位と呼び値刻みがある。売買単位が小さくなれば,指値注文のサイズ(売買高を約定件数で割ったもの,つまり,約定1件当たりの売買高)は縮小する。呼び値刻みが細かくなれば,売買注文がばらける影響で,1つの呼び値のもとでの注文高は小さくなる可能性もある。過去,個人投資家を株式市場に呼び込みたいために売買単位は小さくされてきた。呼び値刻みも細かくされてきた。いずれの要因も,小口化をもたらしてきたのである。
(4)手数料割引競争
投資家が小口化を避ける要因として従来から考えられてきたのは逓減的な手数料体系である。しかしながら,この点は手数料割引業者の出現で随分以前から要因にならなくなった。
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(5)高速化
高速化とも,小口化は係わりがある。元来,小口化しておけば,値下がりの際売り逃げが容易い。この事実は市場から学ばれた,つまり経験による知恵であるように思われる。
高速化は,大口取引でも流動性を生むという理解があるかもしれないが,小口化すれば高速化のメリットをさらに生かせる。小口化で件数は増えても,高速化で処理スピードは速くなっている。
高速化は,流動性のある市場でも,そうでない市場でも小口化を生み,それらが相まって小口取引しかできないと思われてきたPTSの興隆を生んだ,と言われている。
1−1−4 ヘアカットとスカルピング
(1)ヘアカット
一般にマーケット・メーカーが売る際と買う際の価格の差をヘアカットあるいはスプレッド(bid-ask spread)という。ヘアカットの大きさは証券のタイプに依存することが知られている。一般に,リスク証券,社債,国債など,の順で小さくなっている。
HFTが売買に際して取引相手に要求する価格差がヘアカットと呼ばれる。HFTが主体的に決める。取引相手がヘアカットを受け入れ,約定されれば,市場における1つのスプレッドになる。言わばヘアカットは主体的均衡概念で,スプレッドは市場均衡概念で,ある。
(2)スカルピングとの類似性
スカルピング(scalping)は,少しでも利益が出れば,即,売る(または即,買う)ということを繰り返し行う売買手法を指す。スカルピングはHFTerが行う売買手法と類似している。
スカルピングは主にデイトレーダーが用いる売買手法である。銘柄保有時間は短いから,それだけリスクは少ないというメリットがある。そのかわり,手数料が嵩むというデメリットがある。トレードの回数と比較して一回あたりの利益額が小さいので,利益額に占める手数料額の比率が高くなる。相当な数のトレードをしなければ利益率は保てない,とみられている。
また,スカルピングはシカゴ先物取引所のフロアトレーダー(取引所会員のうち自己勘定取引に特化した会員)の間でみられ,こうした業者をスカルパーともいう。彼らは実質的にマーケット・メーカーの役割を果たしており,ポジションは当日中に手仕舞われる。
なお,投資顧問業者などが顧客にある銘柄を奨め,それが値上がりしたところで事前に自分で買っておいた同じ銘柄を売って利益を上げることは,法律で禁止された不正行為である。
1−2 先行研究の展望〜在庫,取引の即時性と金融仲介
金融仲介業者行動に関する有力な先行研究は2つあるので,年代順に展望しよう。2つの研究の方法と目的は時代の影響を強く受けており,研究の狙いも大きく異なるが,残された課題やなされていない研究テーマがそれぞれには共通して存在する。
いずれの研究も重視する程度に差があるものの在庫を分析する。しかしながら,在庫を持ち続けていたり,価格の下落が続く時期に起こる,在庫の換金売りはモデル化されていない。つまり,マーケット・メーカーは換金売りしないとインプリシットに仮定される。
1−2−1 Stoll モデル
マーケット・メーカーの最適在庫水準決定行動を,ポートフォリオ理論の発展のなかで最初にモデル化したのは,Stoll[1978]である。マーケット・メーカーは最適なポートフォリオを保有するよう行動すると前提される。その下で,最適在庫水準は,在庫を保有することによっ
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て得られる取引の即時性(immediacy)への報酬と在庫保有コストの兼ね合いから決まる。それらは,さらにアスク−ビッド(ask-bid)・スプレッドと関係付けられた。
取引の即時性(immediacy)とは,マーケット・メーカーが売り手や買い手の注文に即座に買い応じる,売り応じることを意味する。時間軸上で見てみると,即座とは,売り急ぐ者が手放したい銘柄を買ってくれる一般の市場参加者が現れるまでに経過する時間より,速いという意味である。取引の即時性への報酬は,売買に応じた銘柄のリターンに売買に応じた数量を乗じた額に決まる。このリターンは,流動性を欲する(換金などのため売り急ぐ)市場参加者に,低い価格で買い応じ,直ぐに流動性を提供することによって得られる。
在庫保有コストは,流動性を提供するために,在庫を保有することになってしまうことによって,最適ポートフォリオから乖離したポートフォリオを保有せざるをえないという,マーケット・メーカーの負の効用から測られる。
いくつか疑問あるいは残された課題が浮かび上がる。金融仲介は不十分になる可能性はないのか,という疑問が当然生まれる。マーケット・メーカーが在庫を常に自身の視点から最適に保有することになれば,売り応じか,買い応じてもらえない市場参加者も現れるからである。
また,Stoll[1978]は,正統なポートフォリオ理論と市場均衡に基づいたモデル化をしているが,均衡の安定性つまり市場価格暴落を議論していない。
1−2−2 GMモデル
Grossman and Miller[1988](GMと略される)は,主たる関心がブラック・マンデーの解明それゆえ株価暴落にあったが,在庫ではなく,即時性の需給という観点から,モデル化した。Stoll[1978]モデルではマーケット・メーカーの在庫は即時性を提供する源泉である。しかしながら,GMでは当初在庫は持たれていない。即時性を提供するのに在庫は必ずしも(事前に)必要ない。売り急ぐ投資家に流動性を提供する基となるのは,マーケット・メーカーの在庫ではなく,資金だからである。
マーケット・メイキングにとって,在庫を永続的に保有することは必須ではない。この点は以下でも,確認することになる。
GMは,また,流動性ノイズを入れることによって均衡の安定性を考察する。1987年に起きたブラック・マンデーの原因を探るために均衡の不安定性をモデル化したわけである。流動性ノイズとは,トレーダーが流動性・換金を求めて市場に現れる過程を指しており,統計学的に取り扱いが容易な,平均ゼロで分散一定のランダム過程が前提にされる。この点が,GMモデルの大きな特徴になっている。
Grossman & Miller[1988: P.617]の構造は次のように要約できる。『流動性は即時性の需要と供給により決定されるとの前提でモデル化できる。取引相手となる市場参加者が遅延するリスクが付随すると,外生的な流動性イベントは即時性の需要を作り出す。マーケット・メーカーは継続的に即時性を供給する。また最終的な買手と売手の到着の間のリスクを負担する。長期的にはマーケット・メーカーの数は調整され,即時性の需要が供給に等しくなる。これにより市場における流動性の均衡レベルが決定される。』
GMは,リターンの自己相関が低ければ,流動性の均衡レベルは高い,と主張する。この命題からわかるように,GMモデルは効率性と流動性は相互に依存しており,両者は混在している,と述べているように筆者には思われる。
GMモデルは通常の状態では流動性の均衡モデルであるが,本来の研究目的である,不均衡
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が起こるメカニズムも次のように組み込まれている。外部の(情報)トレーダーのショック(流動性イベント)が余りにも大きく,最適需要で充足できないとき,非流動性を来たし,一時的に不均衡になり,市場はクラッシュに見舞われることになる。市場で,即時性に対応しきれず,無取引(nontrading)が起きる時,株価は暴落する。
2 HFTの行動モデル〜先行研究
2−1 HFTの行動原理〜Cartea and Penalva モデルの紹介
HFTerの1つの行動モデルを,GMモデルを一般化することによって,提示したのは,Cartea and Penalva[2012](以下では,時にC&Pと略す)である。C&Pは,SEC[2010],Kirilenko et al.[2011] と Brunetti et al.[2011]の実証結果が彼らの研究をサポートしていると主張する。そして,それらが次のようなHFTerの前提と行動原理に結びつく。
(1)HFTerの視野
HFTの視界は,ファンダメンタル価値の変化が起こらない程,短い期間である。
(2)高速・即時
ある程度利益が出る注文は直ぐに売買する(売買に応じる)。利益が出る大きさ(つまり指値)を決める行動をヘアカット行動と呼ぶ。
売り急ぎで,低い価格を付ける注文がもし存在する場合には,HFTerはその価格で直ぐに買う。その結果,市場での約定価格は下がる。そして売買執行時間は短くなる。
(3)在庫保有の仮定
在庫は出来るだけ持たない。利益が無い場合でも,必要であれば(例えば,日を超える場合)在庫の処分を行う。売買が付かなかった部分は,利益ゼロあるいは損失が多少出ても売買する。HFTの在庫については次節も参照。
その結果として,売買注文は複数に分けられる。1口当たりの注文株数は減少し,注文件数は増える。
(4)コストと参入障壁
HFTするためには,専門の証券投資技術だけでなく,ハード,ソフト,コロケーション,データ検索に関するサンクコスト(sunk cost)が必要になる。これらが,HFTへの参入障壁になる。
(5)情報構造など
HFTはすべての市場参加者の需要関数を知っていると仮定される。情報構造については次節も参照のこと。この点については大きな問題をはらんでいる。Cartea and Penalva[2012]は,HFTに係わる情報構造について適切にモデル化していないだけでなく,HFTerの注文キャンセル行動もモデル化していないのである。
2−2 Cartea and Penalva モデルの補充説明
Cartea and Penalva[2012]が説明していない点を次に説明しておこう。
(1)HFTの在庫保有
CFTC and SEC(U. S. Commodity Futures Trading Commission and Securities Exchange Commission)[2010]のAppendix Aでは,HFTの特徴として次の5点を挙げている。すなわち,@超高速コンピューター・プログラムを用いて注文を生成・回送・執行する。A情報伝達遅延
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を最小化するために取引所コロケーション・サービスを利用する。Bポジション保有期間が極めて短期間である。C取引所への発注が非常に多い一方,注文取り消しも非常に多い。Dポジションは可能な限り当日中にフラットとし,翌日まで持ち越すことはない。
このうち,BとDの特徴が米国HFTerの在庫行動に関わってくる。また,Menkveld[2011]は,2007年1月から2008年6月17日までのオランダ株式指数に基づいて,特にDの妥当性を実証している。
(2)HFTの株式購入資金
清算時までに反対売買する場合資金はいらないが,HFTには株式購入資金が必要になる。中心となる自己資金以外では,次のいずれかである,と考えられる。
売却で得た資金を充てることも出来る。
無リスク金利で,短期金融市場から借り入れることも不可能ではない。
いずれにしても,一般に,HFTは資金量も限られ,多くの在庫を長く保有するのは不可能である。
(3)HFTと市場情報〜小口打診注文
HFTは,市場情報をどう得ているのだろうか。Cartea and Penalva[2012]では,HFTはすべての市場参加者の需給状況と価格への依存度を知っている,それゆえ,単なるdepthを超える市場情報を知っていると,仮定される。それゆえ,HFTは次のような小口打診注文を出すことはない,とインプリシットに仮定される。
HFTでは,見えていない隠れた需給の探索は,コンピュータによって小口打診注文を送りだすことによってなされる,という解説が一部では見られる。小口打診注文を実現する1つの方法はIOC(Immediate-or-Cancel)注文である。IOC注文では,執行されなかった注文が全部あるいは一部でもあれば,その未執行分は即時に取り消される(Durbin[2010: P. 24])。
それゆえ,Cartea and Penalva[2012]は小口打診注文をモデル化していない。
ちなみに,一般に,小口打診注文とは,相場が停滞している時などに,市場の反応を探るために小口の買いや売りの注文を出すことである。市場の反応が良ければ,続いて,強気の注文を出していくことになる。
2−3 最適ヘアカット決定
HFTの利益は,ヘアカットの大きさ,取引量,に依存する。実際上はさらに,ヘアカットをどう変えられるかを定める,呼値の刻みの大きさ(minimum tick size)からも影響を受ける。ちなみに日本の場合は,さらに,株価の水準に応じて定められている更新値幅にも依存する。
呼値の刻み幅と更新値幅を与えられたものとして,ヘアカットを変化させれば,当該株式への需給が変化する。ヘアカットを大きくすればHFTを取引相手にしたい需要が減る。ヘアカットを小さくすればHFTを取引相手にしたい供給が増える。それゆえ,最適なヘアカットが存在する。
それゆえ,HFTは利益を最大にするヘアカットの大きさを決めることができる。ヘアカットの最適な大きさは,流動性需要の規模に応じて,大きくなる。
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2−4 Cartea and Penalva の分析結果の要約
(1)価格インパクト
HFTは(流動性取引の)価格インパクトを大きくする。
(2)ボラティリティ抑制効果
HFTでは,その取引手法の性質上,株価が僅かでも上がれば売り注文を入れ,僅かでも下がれば買い注文を入れるため,株価変動が押しつぶされて,ボラティリティは低下すると考えられる。HFTは日付を跨いだポジションの持ち越しがないことから,株価変動圧力が従来型の取引と比べて小さくなる,可能性が高い。
(3)執行時間短縮化
HFTは(流動性)取引にかかる執行時間を短くする。
SEC[2010]は,平均執行時間が2005年1月の10.1秒から2009年10月の0.7秒まで低下していることを報告している,ので事実と矛盾していない。
(4)小口化
HFTには,取引の小口化が伴う。これは,HFTerの最適化の結果である。しかしながら,上で既述のように,HFTだけが取引の小口化をもたらしたわけではない。
(5)瞬時の金融仲介と過剰仲介
HFTerは, 迅速な執行と情報処理能力によって, 瞬時の金融仲介(instantaneous intermediation)を行う。Menkveld[2011]はHFT型マーケット・メイキングという言葉を使っている。
HFTerが行う瞬時の金融仲介は,もしHFTが1社しか存在しない場合独占的要素によって,不必要な仲介(unnecessary intermediation),それゆえ過剰仲介(excess intermediation)を生む,恐れがあると指摘される。
(6)HFTer間の競争
HFTerは相互にどのような競争を行っているのだろうか。Cartea and Penalva[2012]は,スキル,情報機器設備能力(これは業者の規模に依存)に基づく競争を指摘する。
そして,これら能力の分布どおりに出来高が分布する,という形でCartea and Penalva[2012]ではモデル化されている。
HFT間の競争が,その結果,不必要な仲介を減らす。
多数のHFTerが,相互に競いあって問題点をさらに大きくしそうであるが,なぜそうならないのだろうか。損失が膨らめば,存続できない可能性が出てくるので,マーケット・メイキングを控える,からだと想像される。
(7)代替市場
C&Pは,HFTerがトレーダーの規模を識別できるという前提のもとで,大口トレーダーは大きなヘアカットを取られ,不利を被る,と結論した。C&Pは,機関投資家が株式執行を代替市場へ逃避する理由の1つとして,この帰結を捉える。
(8)流動性の定義とその修正
HFTerがいる市場では,流動性プレミアムやリターンで測る流動性の定義は修正しなければならない,ことをC&Pは示した。詳細は,別の分脈で後述する。
残された方法として考えられるのは取引執行コストであり,この要因で流動性を測るべきであるとC&Pは主張する。
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3 HFTの基礎理論の展開〜堰モデル
HFT行動モデルに関して,エッセンスだけを抜き出した,新しい基礎理論を次に展開しよう。
3−1 いくつかの仮定
簡単化のため,期間は2期とする。その他の仮定は以下のとおりである。
(1)価格決定の仮定
価格は次のように付けられている,と仮定する。個々の市場参加者は価格決定力を持っておらず,価格は市場全体で決められるとしよう。それゆえ,新たに(限界的に)参入してきたトレーダーは決められている価格を与えられたものとして行動する。そして,高い流動性を求める参加者は,市場価格だけでなく,ヘアカットも支払う意思を持っているとする。
ヘアカットの大きさは,買いの場合でも売りの場合でも,同じと仮定する。また,取引相手によって変わることはないと仮定する。
(2)高速取引とその帰結の仮定〜堰モデル
HFTの取引は,特に高速なので,どの取引よりも,先んじて約定される,という仮定をおく。後掲の節3−2(2)あるいは図表2で,第一期のなかの前期と後期の間に堰(weir)があるのは,HFTの高速取引によって,誰よりも先んじて執行されてしまうからである。これはHFTを優先しているからではない。
堰の中に入れるのは,主としてHFTerであり,その他の市場参加者も入り込めるが,それはまったく偶然に過ぎない。呼称に関して1点だけ解説しておこう。以下で設定するモデルを,2期+堰モデルと呼び,3期モデルと呼ばないのは,3−2(1)あるいは図表1と比較して高速を強調するためである。
(3)在庫の仮定と堰モデル
分析する期間は2期であるが,HFTerは各期を超えて在庫を持たない,と仮定する。HFTerによって在庫が持ち越されない期間が1つの期間となる。期を超えて行うのは無理だが,HFTerは堰を超えて在庫を持ち越す,とする。他方,マーケット・メーカーは堰でも期でも必要があれば在庫を持ち越す,と仮定する。
価格設定については,堰のなかでも,なされる。同じ期中の堰の外でも,約定,価格設定がなされる。同じ期中の堰の内外で付く,これらの価格は別のものであり,一致する必然性はない。
(4)トレーダーの仮定
突然資金が必要となった(流動性)トレーダーは,所有証券 X を市場価格P1円で売却して,あるいは自身の純需要関数 X(・)の満たす額だけ,調達したいとする。
もし X<X(・)ならば,後に詳細を説明するように,HFTが役割を果たしてしまい,第1期は恙無く済み,HFTだけの出番で終わり,ストーリーは完了する。それゆえ,X(・)<X を仮定する。
もし最初のトレーダーが買い注文から入ってくれば,第1期中にマーケット・メーカーが売り応じてくれる,と仮定する。このようなことが生じた場合は,それで分析は終わり,次節の
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(1)のマーケット・メーカーだけがいる世界に類似した結論になる。本稿では,別のシナリオを建て,在庫を持っている別のHFTが第1期の堰内で売り応じるというような,より現実的ではあるが複雑になる,モデル作りをしない。
3−2 マーケット・メーカーの機能
(1)トレーダーとマーケット・メーカーだけの世界
突然資金が必要となった,証券 X 株を所有する(流動性)トレーダーは,1期待てば,必要な資金は,自身に同額以上の資金が入ってくるか,あるいは他のトレーダーが買い応じてくれることで調達できる,かもしれない。しかしながら,急ぎなので,この期待が実現することを待てない。それに代わってマーケット・メーカーが市場価格P1円で買い応じてくれる。
マーケット・メーカーは第2期に市場価格P2円で他のトレーダーに売却する。マーケット・メーカーの利益は当該証券の価格差で,リターンは価格変化率となる。このリターンがマーケット・メーカーへの報酬になる。
(2)HFTが存在する世界
行動が極めて速い(早い)HFTerがいたとすると,流動性トレーダーの売りのうち,HFTerはX(P1−Δ)株だけを価格(P1−Δ)円で購入する。ここで,X(・)はトレーダーの純需要関数,Δ はヘアカット,である。X(P1−Δ)株はこの価格で流動性トレーダーの売りたい数量である。流動性トレーダーが必要とする資金量の残り(X−X(P1−Δ))株はマーケット・メーカーが第1期中に買い応じてくれる。
HFTの流動性トレーダーからの買い金額: (P1−Δ)X(P1−Δ)。
マーケット・メーカーの流動性トレーダーからの買い金額: P1(X−X(P1−Δ))。
HFTerは,在庫を持たない方針なので,購入したX(P1−Δ)株は,価格(P1+Δ)円で売りに出すことになる。これに買い応じてくれるのはマーケット・メーカーである。
マーケット・メーカーのHFTからの買い金額: (P1+Δ)X(P1−Δ)。
マーケット・メーカーは,金額で,流動性トレーダーからP1(X−X(P1−Δ))の買い,HFTから(P1+Δ)X(P1−Δ)の買いをおこない,第1期から第2期へ X 株の在庫を持ち越す。
第2期においては,マーケット・メーカーは,X 株を買いたい流動性トレーダーへ,X 株を価格P2円で売る。その結果,全プレイヤーの全2期を通した利益は次のように要約できる。
HFTの利益=(P1+Δ)X(P1−Δ)−(P1−Δ)X(P1−Δ)
=2Δ・X(P1−Δ)。
マーケット・メーカーの利益
=P2X−P1(X−X(P1−Δ))−(P1+Δ)X(P1−Δ)
=(P2−P1)X−Δ・X(P1−Δ)。
最適なヘアカットは,HFTの利益を最大化することによって達成される。トレーダー純需要の大きさ,その価格弾力性,に依存する,ことが予想される。C&Pがやったように,さらに条件を追加すれば,HFTがヘアカットを最適に決めるモデルが作れるだろう。本稿はこの点を拡張することはしない。
両者の利益を足し合わせると,
両者の利益の合計=(P2−P1)X+Δ・X(P1−Δ)。
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この右辺の第2項は,マーケット・メーカーが受け入れた損失を考慮している。また,第1項は先の小節で示されたHFTがいない場合のマーケット・メーカーの利益である。
3−3 結論の要約
一般のトレーダーが買いから入れば,このモデル事例の分析の出発点は異なるようになる。しかしながら,HFTerがその買いに対して売り応じ,その後により高い価格で買い戻すという取引を行うことにすれば,理論の構造と矛盾せず,展開を修正する必要はない。
(1)既存マーケット・メーカーの利益
第二のマーケット・メーカーとなるHFTerは既存マーケット・メーカーと利益を分け合う。その結果,既存のマーケット・メーカーは利益を減らす。
(2)HFTは株価下落局面において買い越す
株価下落局面において,(流動性)トレーダーの売りが多くなれば,HFTはより多く買うことになる。HFTによる第1期内の売りは,HFTが買い持ち保有することになった分の売却分であり,実際は買った数量を超えることはない。その結果,HFTは(市場ではネットベースで売りが多い)株価下落局面において買い越しする。
(3)約定価格の分布
HFTが存在することによって,ヘアカットの分だけ,約定価格の分布は広がる。
(4)トレーダーの負担コスト
(流動性)トレーダーはより多くのコストを負担することになるが,それはより早く流動性
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のニーズが満たされるからである。この金融仲介は流動性提供機能を活用しており,原理的にさまざまな銘柄に流動性を与えることができる。
第1期の堰のなかに注文が偶然入ってしまったトレーダーは,自身の純需要関数とは違う価格と数量で売買する必要はない。効用最大化を達成し満足して売買しているのである(彼らの行動の最適性は満たされている)。それゆえ,HFTの「買った後により高い価格で売り戻すという取引慣行によって,株式を保有する全ての投資家が犠牲になっている」という指摘は当たらない。
(5)取引件数,取引小口化と売買額
堰モデルを用いれば,HFTが参加することによって,どれ位取引は小口化し,売買高はどれ位増加するか,を知ることが出来る。しかしながら,株式取引の小口化と売買高は,それぞれを変化させる固有の要因を既述のように多数持ち,それぞれ独自に変動している。それゆえ,実証分析上これらの要因となる変数を計測上コントロールしなければ,HFTが小口化と売買高に影響したと言えない。
もっとも関心が高い点は,HFTがもたらす取引小口化であろう。HFTがヘアカットを要求することに対して,流動性トレーダーは自身の選好(純需要関数に集約される)に応じて,受け入れるかどうか,さらにはどこまで受け入れるかを決める。それによって,取引がどれくらい小口化されるか,その大きさが決まる。それゆえ,小口化の主要決定因はHFTのヘアカットと流動性トレーダーの選好(純需要関数)である。
既載の2つの図表からわかるように,取引件数は2から4に増える。一取引当たり取引量は Xから[2X+X(P1−Δ)]/4に変化する。これが減るのは次の条件の下である。取引が小口化するのは,X>X(P1−Δ)/2が満たされる,つまり,HFTが仲介する(当初)取引量が流動性トレーダーの売る量 X の半分以下の場合に限られる。しかしながら,売買額はP1X+P2XにP1X(P1−Δ)という確実にプラスになる額が追加される。
これらの計算は次に基づく。
取引件数=4,
取引量=2X+X(P1−Δ),
一取引当たり取引量=[2X+X(P1−Δ)]/4,
売買額= (P1−Δ)X(P1−Δ)+P1(X−X(P1−Δ))+(P1+Δ)X(P1−Δ)
+P2X=P1X+P2X+P1X(P1−Δ)。
(6)銘柄属性とHFT行動
当初売られる銘柄の属性は,ここでは問わない。トレーダーは流動性の高い,売りやすい銘柄から売り出すことも考えられる。HFTも,流動性の低い銘柄に対しては,在庫保有期間が長引くという視点から,買いを入れないことも考えられる。しかしながら,これらの点は本分析の枠外である。
(7)市場参加者の登場の順
本モデルは,まず流動性トレーダーが市場に現れ,HFTがそれに応じる,という順であった。しかしながら,逆順の場合であっても分析のエッセンスは変わらない。逆順とは,流動性トレーダーが市場に注文を出しているところに,HFTが現れ,それに応じる,という順である。
(8)堰を外す
HFTerは,市場に出ている注文に自分の注文をぶつけにいくのではなく,自分が注文を提示
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頁】
した上で他の投資家の注文を待つ,と言われる。これは,自分の注文が後であれば,当該注文は時間上優先順位が後になり,約定できないという点(後述)を重視しただけの議論であるように思われる。しかしながら,市場に出ている注文と自分の注文のどちらが先かは堰モデルの理論構成上重要ではない。重要なのは,堰を取り払うことである。
自分の注文が先で流動性トレーダーの注文が後になり,堰を取り外したケースは,次の通りになる。HFTerがまず,
価格(P1−Δ)円でX(P1−Δ)株の(指値)買い注文,
価格(P1+Δ)円でX(P1−Δ)株の(指値)売り注文,
を同時に出しておく。この後,もし他の投資家が(P1−Δ)円でX(P1−Δ)株の売り注文,(P1+Δ)円でX(P1−Δ)株の買い注文を出してくると,それぞれの価格で全ての注文が約定する。HFTerは(P1−Δ)X(P1−Δ)円を払って(P1+Δ)X(P1−Δ)円を手にすることになり,差額の2ΔX(P1−Δ)円が利益となる。
これはHFTerのトレード戦略であることに間違いはないだろう。しかしながら,この展開では,HFTerの即時性供給の効果そしてその報酬の意味が明瞭でなくなる。そして,HFTerの同時注文によって,HFTerは在庫を保有することなくリスク無しで報酬を得る,こととなってしまっている。
3−4 研究の意義
(1)多様なHFT取引
前節で分析したのは,反対売買待ち(wait for the other side)と呼ばれる,自身の買い注文が約定した後,売り指値注文を提示し,ビッド・オファー・スプレッドを収益とする最も単純な戦略に相当する。売り相手は,ここでは,マーケット・メーカーである。
なお,HFTには,Durbin[2010]やそれを紹介した杉原[2012]にも解説があるように,他にも幾つか戦略がある。例えば,スプレッドに係る収益は減るが,ポジション解消の確率を高めることで在庫リスクを低減できる市場依存型(lean your market)と呼ばれる,戦略(Durbin[2010: P.57])もある。また,自身の買い注文が約定したら,自身の売り注文および買い注文の指値水準を引き下げる戦略もある。これらは,本モデルの前提により,視野の外になっている。
(2)金融仲介の新たな担い手であるHFT
一連の研究は,市場参加者の誰が,どういう条件が満たされればマーケット・メーカーになるか,を明らかにする。例えば,既述のIOCタイプの取引を行うのであれば,注文が即座に取り消されるので気配が公開情報として残らないだけでなく,金融仲介の役割を果たさないことになる。
突然の流動性の途絶あるいはマーケット・メーカーの活動停止によって暴落が起きることが,ブラック・マンデー以降の研究で明らかになった。しかしながら,HFTに関する新しい研究は市場のなかに,その救い手が存在することを明らかにしたことになる。
Grossman & Miller[1988: P.617]の言葉を借りれば,それゆえ,次のように要約できる。『HFTは継続的に即時性を供給する。また最終的な買手と売手の到着の間のリスクを負担する。』
実証面に目を向けてみれば,Brogaardら[2014]は2008,2009年のNasdaq市場における業者名から識別したHFTデータを用いた実証分析により,また保坂[2014]は最近時の東証デー
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タから注文執行比率と注文取り消し比率からHFTを識別し,HFTのマーケット・メイキング行動の存在を検証している。
ちなみに,マーケット・メイキング以外について,Brogaardら[2014]は,2008,2009年といったボラティリティの比較的高い時期でもHFTは価格の変動を低減させる方向に行動する等,HFTは市場の価格発見や効率性の向上に貢献していることを検証している。
(3)マーケット・メーカーの機能に光
誰よりも先駆けて,HFTが買い応じることをもって,「HFTが多くの注文を飲み込んでしまう」,と批判されることがある。この批判は不適切であり,HFTの役割を把握していない。
本稿はマーケット・メーカーの分析を深化したものと考えられる。投資行動はふつうパッシブとアグレッシブに分られるので,本稿でも次のように分類することが許されるかもしれない。従来のマーケット・メーカーが行うのがパッシブなマーケット・メイキング,HFTが行うのがアクティブなマーケット・メイキングである。
HFTが存在する市場では,HFTとマーケット・メーカーの連携で流動性が供給される。マーケット・メーカーだけに過酷なまで大きな役割(期を超えて在庫を保有しないというHFTの付け)を押し付けているようにみえるが,そうではない。HFTは様々な市場参加者,特に流動性を求める市場参加者を呼び寄せる。それによって,マーケット・メーカーの利益を増やすことになり,マーケット・メーカーの活動を活発化させる。
マーケット・メーカーに代わって一般の他のトレーダーが役割を果たすことは可能である。本節のモデルでは,その可能性を簡単化のため最初から除外していただけである。
(4)HFTとマーケット・メーカーの区別
HFTもマーケット・メーカーであるということが知られれば,HFTとマーケット・メーカーはどう区別されるのだろうか。最新のプログラムやサーバーを備え,最新技術を体現しているマーケット・メーカーがHFTである,という捉え方を堰モデルでは行えばよい。
(5)流動性の定義とその修正の必要性
HFTは流動性プレミアムを,ヘアカット分だけ,増加させる。流動性プレミアムが増加するとは,従来,流動性が低下するということを意味していた。
HFTerがいる市場では取引量は増えるが,リターンで測った流動性は増加していない。それゆえ,流動性プレミアムやリターンで測る流動性概念は,適切に状況を捉えていないことになる。
(6)小口化するが売買高は増加する必然性はない?
小口化と売買高の関係はどうであろうか。一取引当たり取引量が,X から,どれだけ減るかは売却価格における純需要関数 X(P1−Δ)の特性に依存する。つまり,取引小口化が激しくなるのは,HFTerの仲介活動が不活発で流動性トレーダーが売りたい量 X のうち少ししか仲介できなかった場合である。その場合,売買額の増加は少ない。
HFTerの仲介が少なくなるのは,ヘアカットが大きい場合,あるいは流動性トレーダーが価格に敏感な場合である。
宇野[2012]は,東証では2010年1月のアローヘッド導入後,2011年5月までのデータで見る限り,一取引当たり取引量は減っている,つまり取引が小口化しているが,期待された売買高の増加には結びつかなかった,と報告している。この現象は理論的に説明可能であることになる。
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(7)金融仲介機能の大きさ
堰の治水能力は,その貯水容量に依存する。水以外の土砂などの流入で貯水容量が低下する,ことも知られている。
この比喩を参考に考えると,HFTの技術と資金量が金融仲介機能にとって重要になる。HFTが技術の導入を怠れば,機能は低下する。あるいは,HFTがスペキュレーションなどに資金と関心を集中し,金融仲介機能以外に目を向ければ,金融仲介機能は低下する。
(8)HFTが市場に与えるその他の影響
HFTは1日の終わりにポジションをフラットにする傾向があるため,相場の流れにはあまり大きな影響を与えないと考えられる。それゆえ,もし1時間に何10%も株価が動いた銘柄の手口が都度公表されることになれば,ふつうの市場参加者は,1日未満あるいは超短期の市場の変化には,惑わされることなく,投資戦略を取り続けることができる。
HFTによって,取引件数や取引量はファンダメンタルズを反映しない可能性を生む,のは正しいことのように思われる。しかしながら,株価が企業価値などを反映しにくくする傾向があるという見解はまったく検証されていない。株価はより敏速にファンダメンタルズの影響を受ける可能性がある。
これらの点は次の2小節で,さらに,解説しよう。
3−5 分析されていないHFTのポジティブな面
(1)価格の情報性向上
効率性あるいは価格の情報性(price informativeness)の向上に寄与する。売買スプレッドが縮小するとは限らないが,市場の効率性が高まっている。これらが正しいかどうかは実証結果を待たなければならない。
(2)価格の調整スピード上昇
市場間と同種資産間(例えばインデックス・デリバティブとETF)の価格の調整スピード(the speed of adjustment of prices)を上昇させる,可能性がある。これらが正しいかどうかは実証結果を待たなければならない。
(3)多数のトレーダーと取引量増大
金融仲介が2段階(トレーダー→ HFT→マーケット・メーカー)になったから,取引量が増えるのは当然である。なお,HFTによる取引量増加は必ずしも情報のフローの増加を意味するわけではない。HFT自身はファンダメンタル情報を必ずしも持っていない,からでもある。
なお,本稿の前提と違って,複数のトレーダーから次々と様々な注文が入ってくる実際の市場では,HFTが存在することによって,約定される取引量は大きく増える,ものと予想できる。
(4)呼び値刻み問題を潜在化
HFTは,瞬時の仲介者になることによって,以下次節で詳しく述べる,呼び値が小さくなると約定しなくなるネガティブ効果を顕在化させない。
(5)リスク管理効率化
HFTによって,市場参加者はリスク管理をより効率的にできるようになる,とみられている。これらが正しいかどうかは実証結果を待たなければならない。
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(6)HFT間競争〜複数のHFT
一般にHFTは,呼値刻み毎に,異なるヘアカットを設定しているだろう。複数のHFTがいる場合,同じ刻み幅のなかで,複数のビッドあるいはアスクがあることになるので,トレーダーはより低いヘアカットを要求するHFTを選ぶものと考えられる。その結果,次のことが予想できる。呼値の刻みの粗さはHFT間の競争阻害要因になる。そして,すべてのHFTがトレーダーの注文を受けることができるわけではなく,HFTのなかに敗者が出てくる。
(7)HFT間競争と予測
HFTの間の競争の現実的な姿は次のようであると思われ,モデリングもこの方向でなされなければならないだろう。HFT間競争は予測の重要性を浮かび上らせる。
取引量の多い,多数の銘柄が上場されている市場においては,他のHFTに打ち勝つためには,HFTは最良気配のキューの最前列に注文を入れておかなければならない。また,注文変更時には,そういう場所に注文を入れて行かなければならない。
そして,これを効率的に行うためには,売買や価格の動向を適切に予測し,適切な銘柄を選ばなければならない。HFTは予測に基づく売買は行わないという解説が過去にはあったが,最近の多くの関係者はこの説を否定しており,HFTにとって予測は極めて重要なのである。様々な頻度で起こる様々なイベントを予測したり,イベントの影響を分析・予測して,トレーディング・投資に活用している。これらの予測は,保有するべき在庫の量を減らせる可能性を生み,約定価格を情報的にすることになる。
3−6 分析されていないHFTのネガティブな面
HFTには幾つか弊害も考えられる。そして,実際出ているとみなされている。
(1)在庫の換金売り
買い入れ資金を確保するためだけに,手持ち在庫を安値で売る,HFT行動は考えられない。しかしながら,在庫の増加を嫌って,マーケット・メイキングしない,つまり売り手からの買い取りを断ることは,時期によっては十分起こり得ることだろう。
さらに,在庫を持ち続けていたり,価格の下落が続く時期には,在庫の換金売りが起こる可能性がある。実際,そのような条件に合う時期は2010年5月6日のフラッシュ・クラッシュであった。フラッシュ・クラッシュでは,上の3−2(2)で見たように,理論どおりHFTは当初買いに回り在庫を蓄積し続けた。他方で,価格下落は続いた。その後,HFTは手持ち在庫を売ることになった,と考えられる。
宇野[2012]は,元文献の引用は行わずに,実際に起こったと考えられる,HFTのこのような行動が株価暴落を促進したとする事例を紹介して,警鐘を鳴らしている。
(2)投資家・市場参加者分布の片寄り
超短期取引を行うプロ集団が市場を席巻し,市場参加者の片寄りが生じる。実際,そのような観察もなされている。このような市場構造の片寄りは,市場を変質させるかもしれない。
たとえHFTは個人を相場から遠ざけているのが事実であるとしても,「下げ局面で買い手が不在になり,下値で買い支える個人マネーの力がそがれ,相場の不安定さは一段と増す」という意見は検証されていない。
(3)規制コスト上昇
HFTは,規制のコストを上昇させた。規制当局はいくつもの様々な不正を見つけ訴追して
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頁】
きたが,報道によると,ほとんどのケースでコンピュータは当局が不正の証拠を見つけ出す対象になってきていないのである。HFTをリアルタイムで監視することは現在無理であると考えられている。
アルゴリズム取引特有の売買手法からもたらされたと言える弊害があるため,伝統的な規制手法で発見するのは困難である。そして,摘発のためには膨大な注文データを精査する必要がある。
(4)HFTの高い利益と参入障壁
数の限られたHFTerが市場で行うマーケット・メーカー機能は,寡占状態となり高い利益は保てる。しかしながら,産業組織論の常識として,多くのHFTerが参加すれば,ヘアカット引下げ競争が起こり,利益率は低下する。もっとも,HFTには技能・ノウハウと情報投資の2点で高い参入障壁があるため,限りなく利益率が低下することはない。
(5)情報の不公正利用と取引のスピード制限〜問題提起
投資家がどの株式に売り注文を入れようとしているかHFTが最速で把握し,まず買った後により高い価格で売り戻すという取引を行う。既述のように,それによって,株式を保有する全ての投資家が犠牲になっていることはない。
確かにHFTは一部の市場参加者が価格や投資家の注文に関する情報を(結果として)いち早く得ることができる。情報の利用が不公正であるかどうかという点は,一部,既述の参入障壁が係っている。
米連邦捜査局(FBI)など捜査機関がインサイダー取引の有無の調査に乗り出したほか,米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(DFTC)も取引所とHFT業者の関係などの状況を調べている,と報じられている。エリック・ホルダー米司法長官は「司法省も2014年4月4日インサイダー取引を禁じた法に抵触するかどうかを調査している」と語った。
ニューヨーク州のシュナイダーマン司法長官が「株式トレーダーが最速での取引を目指す技術面の軍拡競争が米国の市場の安定を損なう恐れがあり,取引のスピードを制限する対応がさらに必要だ」と指摘した(ブルームバーグ,2014年3月31日)。
(6)HFTは「待つ」のが主流の戦略
投資の世界において適切に攻めるには,相手の動きに合わせて臨機応変に対応する必要がある。そのためには,機械にすべて任せるのではなく,人間が四六時中機械に付き添う必要がある。それゆえ,HFTはどちらかといえば「待っている」投資戦略をとるというのが正しい把握・認識であろう。アルゴリズム取引は,様々な条件を付けて,プログラムする方向に進歩しているのは事実であるが,すべてのケースに対応するプログラムをつくることは原理的に極めて困難なのである。
「待ち」の戦略を前提にすると,キューの前列に指値注文を常時入れておき,約定価格の推移によって不利,不要と判断された注文はキャンセルしていくという,このような戦略がHFTにとって合理的になると考えられる。
3−7 証券市場政策の観点
3−7−1 公平な取引環境
(1)インサイダー取引に相当か
少数の市場参加者が,他の人々が気付く前に,誰かから,価格の変化に関する「情報の通知
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頁】
を受け」,それに基づく取引が可能だとすれば,それは情報の不当な入手にあたるかどうか,インサイダー取引に分類するべきかどうか,という点がまさに検討対象になる。
HFTだけに情報への接触が許され,その他参加者は許可しないと定められていれば,確かに不公平である。しかしながら,誰かから「情報の通知を受け」ているのではなく,誰もが利用可能で広く公開された「情報を自ら得て」いるのであれば,インサイダー取引に分類するべきでない可能性がある。
当然のことながら,取引所が,情報の公平な配信を怠れば,責任を負うべきである。
(2)あるタイプの公平化の帰結
公平化を,第一期の前期と後期の間にある,堰を取り払う,ことと解釈すると次のようになる。
このような売買行動の公平化を図れば,モデルは最初のケースである3−2の(1)あるいは図表1に退化する。
需給が出会うタイミングを,すべての市場参加者が同時であるようにするとしよう。それによって堰は取り払われることになる。HFTはヘアカット分だけ安く買おうとする。その結果,HFTは(マーケット・メーカーとの)競争に負け退出することになろう。
(3)政策上の含意
もしHFTとその他市場参加者とのアンバランスを是正するべきならば,長期株式投資への優遇策が必要になる。この施策は同時に,物言う株主対策にも,なる。
しかしながら,注文執行のランダム化,などHFTがその他市場参加者と違う点を直接補う方法でアンバランスを是正すれば,技術進歩を蔑ろにしてしまう。ランダムな時刻でのみ,売買ができる,あるいはポートフォリオの組み換えができる,とすると,流動性は大きく低まることを意味する。
3−7−2 暴落対策
売りが続くなかで,買い手が枯渇し,マーケット・メーカーも買い応じられなくなると,価格は下落し,この状況に変化がないと価格は下落し続けるしかない。これが,暴落のメカニズムのエッセンスである。
どのような買い手が存在し,マーケット・メーカーがどう行動するか,が暴落のスピードや程度を決める。株価暴落の分析はこのような視点に集中するべきである。
ヒューマン・エラーやプログラムのバグは,少なくするべきだが,ゼロにすることは不可能である。天災もある。それゆえ,暴落に結びつく切っ掛けは現実に無数にある。
その結果,暴落のスピードを遅くしたり,暴落の程度を小さくする仕組み作りに関係者は関心を払うべきである。
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4 呼び値の刻みや注文キャンセル
4−1 呼び値の刻みについて
呼び値の刻みに関する学問的な先行研究1)は存在するが,本稿の主たる研究テーマとは直接係わりがない。しかしながら,その経済効果についての,市場参加者の感想や印象は多く表明されているので,関連する点に絞って紹介してみよう。
4−1−1 呼び値の刻みの効果
呼び値の刻みを変更すると相反する2つの効果があると考えられてきた。
4−1−1−1 呼値刻み縮小化のポジティブな効果〜鞘抜きが容易に
1つ目は,ポジティブな効果で,呼び値の単位を細かくすれば,より細かい鞘抜き売買が可能になる,という効果である。この効果は可能性としてすべての市場参加者が享受できる。
4−1−1−2 呼値刻み縮小化のネガティブな効果
(1) 約定の困難化
もう1つは,ネガティブな効果で,呼び値が小さくなると約定しにくくなる,という効果である。呼び値の板が細かく分散されることで,値段が乖離して指値同士がマッチングしなくなり,約定できる(約定する)確率も落ちる。そのままでは約定しなくなる,からである。
そして,約定率が落ちることがわかってくると,投資家の対応は2つに分かれる。投資家は@指値を変える,あるいはA注文を出さなくなる。前者@の対応の場合,板が見える限り,時間はかかるかもしれないが,投資家は新しい構造に対応するだろう。後者Aの対応の場合,約定率は益々下がり,鞘を抜きにくくなる。その結果,上のポジティブな効果が効かなくなる。
しかしながら,HFTerは,瞬時の仲介者になることによって,約定するようになり,このネガティブ効果を打ち消すことになる。HFTがもたらす経済効果の1つである。
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(2) 呼値刻みと経営圧迫
呼び値の刻みが細かくなれば,アービトラージ戦略を取るHFTには,情報量が増え,戦略実行上有利になる。しかしながら,呼び値刻み(ティックサイズ)の縮小化は利益が少なくなるということを意味しており,採算割れになり,HFTの経営を圧迫する,という問題が起こり得る。
呼び値刻みの縮小はスプレッドつまり収益の縮小に繋がる。他方,刻みが縮小しても,HFTのコストは依然として同じ水準でかかり,コストをカバーするには取引活発化による規模拡大が必要になる。HFT間競争激化によって,それも困難になるとすれば経営問題を引き起こすのである。
実際この心配は,東証における2014年1,7月の呼び値刻み縮小の実施で現実のものとなっている,という主張があり,検証するべきだろう。
4−1−2 呼び値刻み,ボラティリティと取引高
呼び値刻みとボラティリティは,取引高への影響に関して,相反するのが以前の状況であった。呼び値刻みが粗ければ,低ボラティリティ銘柄や低位株には売買がない,からである。
それが,呼び値刻みが細かくされると変化する。ボラティリティが低くても,呼び値刻みが細かいと取引で値幅をとれるようになる,からである。そして,ほとんど値動きのない低位株でも取引で値幅をとれるようになる。
呼び値刻みが細かくされると,それゆえ,取引高への影響に関して呼び値とボラティリティのそれぞれの効果は独立になる。刻みが粗ければ,低ボラティリティ銘柄や低位株には売買がなかったものが,そうでなくなるからである。
刻み幅の縮小は,それゆえ,市場を大きくする。
この変化は,ある一つの市場において,ある時点で呼び値刻みが変更され,その前後を含む時系列データがあれば検証できる,かもしれない。
4−1−3 検証方法〜呼値の刻み幅/株価
(1) 説明変数としての変則性
株価水準が高くなれば,呼値の刻み幅が大きく設定されている。このことから起こる問題は,実証分析においては,株価で割った新変数,呼値の刻み幅/株価,を分析対象にすることによって多少回避している。
(2) 呼値の刻みが及ぼす効果
呼値の刻みは,市場によって,取引時間帯によって2),異なるという事情がある。呼値の刻みが及ぼす効果は,その結果,同一銘柄の両市場での取引量の比率を株価水準,取引の時間帯,などと並んで,呼値の刻みの格差に回帰するような形で検証される。
4−2 注文のキャンセル
調査や報道によると,執行直前に取り消すことを目的に買いと売りを同時に提示するスプー
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フィング(見せ玉)3)などの慣行が目立つようになった,という。その結果,キャンセルが増えて,取引量が増えた。
HFTが普及した結果,執行間際に注文取消しや指値変更が行なわれるケースが増えてきており,気配という情報の価値が低下しているのではないかという疑問が持たれている。あるいは株価形成に対する操縦可能性が拡大しているのではないかという懸念などが生じてきている。
在庫を保有しないことと高速化の2つの観点から,HFTのキャンセル行動(の一部)は説明できるので,次に説明しておこう。
(1) 最適在庫保有行動
不要な在庫を減らすには,不適切な買い行動を減らせばよい。もし注文を既に出していたとしたら,その不適切な買い注文をキャンセルすることである。
売りと買い,どちらのキャンセルが多いか,データがあれば,この仮説は検証できる。
(2)注文執行時間と注文のキャンセル
「キャンセルしなければ不利な条件で執行されてしまう恐れ」がある状況はありえる。キャンセルする理由として,従来から重要なのは,この要因かもしれない。取引が高速化し,注文執行時間が短くなって,この不利な条件で執行されてしまう恐れが益々大きくなった,と予想される。
5 まとめと残された課題
HFTと株価変動・ボラティリティについてまでを含む,様々な問題点の全貌を解明するまでには到達していないが,本研究は多くの問題点に対して回答出来たものと考えられる。
金融仲介機能が十分果たされれば,流動性の高い市場が達成される。そして,取引量の多い市場になってくる。GMが主張するようにマーケット・メイキング機能が不足して株価暴落するのではなく,HFTがマーケット・メーカーに代わり株価暴落を防ぐ可能性がある。
本稿では,指値注文と成り行き注文を明確に区別して分析していない。この点は先に引用した,どの先行研究もそうである。しかしながら,確かに,指値注文だけでなく,成り行き注文を適切に分析に入れることによって,執行高速化に違いが出てくる。それゆえ,成り行き注文も正当に分析しなければならないだろう。
さらに,売買手数料が執行高速化に及ぼす影響も考えられる。特に売買の種類によって料率が変わる場合の影響は大きい。しかしながら,これらの要因を体系的な理論モデルに適切に組み込むことは一般に困難であると,従来から,みられてきている。
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