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教員スタッフ紹介

北山 純 教授臨床心理学

<主要著書・論文>
『高齢者の心理臨床―老いゆくこころへのコミットメント』(単著、創元社、2018)
『医療現場のコミュニケーション 医療心理学アプローチ』(分担執筆、あいり出版、2008)


<研究分野>
 専門分野は臨床心理学です。私はこれまで、大学内の心理相談室、精神科クリニック、高齢者の精神科デイケア、大学学生相談室などで、臨床心理士・公認心理師として心理臨床の仕事をしてきました。そのような現場で営まれた臨床実践の意義や、治療的な機序についての検討が主たる研究テーマです。

さまざまな場で、幅広い年代のクライエントとお会いしてきていますが、その中でも細く長く関心を持ち続けているのは高齢者の心理臨床です。齢を重ね、長年にわたり生き抜いてこられていることに対して素朴な畏敬の念を感じ、高齢者の人生の語りに純粋な興味がありました。「老い」という抗えない時の流れの中で、心理的な問題や症状を持ちながらも、それぞれの方々がその人なりの人生を歩んでゆくプロセスに、静かな関心を寄せてきました。

臨床経験を重ね、医療機関で精神疾患を持つ方の心理療法に携わり、学生相談室で大学生のこころの問題に向き合い続ける中で、年齢、性別、悩みの内容や病理の特性などに関わらず、それぞれの方がいかに主体的に生きてゆくかに着眼しながら臨床実践を行うようになってきたように思います。実際の臨床場面では、クライエントの(それとともに臨床家である私自身の)こころの深いところからくる声に耳を傾け、それを大切にすることを意識しながら、クライエントの語りを聴くことだけでなく、面接の中で語られた夢について考えること、クライエントと共に絵を描いてその世界を共有することなど、イメージの世界を大切にした実践を行っています。

研究のアプローチという点では、このような一つひとつの心理臨床の営みを改めて振り返り、その意味について検討し、普遍的な臨床的意義について考察するような事例研究を積み重ねてきました。私にとっては、臨床実践と研究は不可分であり、これからもその両方に目を向けてゆきたいと考えています。

<私の授業>

学部の授業では、おそらく私が講義をする形の授業が多くなるのではないでしょうか。その中で、こころの不思議さ、心理学のおもしろさ、心理臨床の奥深さ(厳しさや苦しさも含めて)に関心を持つ学生さんと出会えることを楽しみにしています。

大学院では、臨床心理学を志す方々と共に、より実践的、体験的な授業を行うことになります。実践の礎となる臨床心理学の知見―各種の心理療法理論や技法の学び―を得ることだけでなく、ケースカンファレンスなどで臨床事例についてディスカッションし、考えてゆく機会もあるでしょう。一口に「心理臨床家の育成」と言っても、言うほどに簡単なことではありませんが、試行錯誤しながらもクライエントに真摯にコミットしようとtryしてみる意義はきっと大きいものと信じています。

教員紹介にこのようなことを書いてよいのか憚られますが、仮に大学教員であったとしても、自分のアイデンティティは「研究者」ではなく「心理臨床家」であり続けると思っています。とはいえ、「ものを書く」という作業もこれまで少しずつ取り組んできました。その際自分に一番必要だったのは、論文執筆の作法や研究データのまとめ方などの情報ではなく、自分のことばで書く「勇気」でした。そのことをこころに留めながら、これから何かを書こうとする人たちの一助になることができればと願っています。

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