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教員スタッフ紹介

藤巻 るり 教授 臨床心理学  

<主な著書・論文>
『発達障害児のプレイセラピー』(単著, 創元社, 2020)
『セラピストの主体性とコミットメント』(分担執筆, 創元社, 2020)
『発達の非定型化と心理療法』(分担執筆, 創元社, 2016)
『ユング派心理療法』(分担執筆, ミネルヴァ書房, 2013)
『言語の中動態、思考の中動態』(分担執筆, 水声社, 2022)
など

<研究分野>
 これまで主に精神科クリニックや子どもの心理臨床の現場で、さまざまな病態や年齢層の方々とお会いしてきました。臨床実践の場ではいろいろなことが起こります。その経験を通して気づいたこと、そこから受けたインパクトが自分の中に積み重なり、そうした体験知や疑問を抱えながらあれこれ考えることが研究につながってきました。

 特に関心があるテーマは心理療法の治療機序です。カウンセリングやプレイセラピーは、話を聴くことや遊ぶことなど、人が日常的に行っているごく当たり前の行為を通じて特別な展開が生じます。なぜ話を聴く(遊ぶ)ことで人は変わるのか、そこにはどのようなメカニズムがあるのか、治療者・クライエントは、そこで一体どのようなことを体験しているのか、さまざまな角度から検討しています。

 もう一つの関心事は、〈私〉という意識の成り立ちです。特に発達障害をはじめとする非定型的な発達特性を持つ人の物事の感じ方、体験の仕方に関心があります。そのようなユニークなあり方を例外として別枠で捉えるのではなく、人間全般の発達機序の文脈の中で発達の一つのヴァリエーションとして理解できた時、人間のこころを理解する新たな視点を得ることができるからです。

 臨床心理学は、こころの問題を抱える人を支援するという実践的な目的からはじまった学問ですが、その裾野は広く、特に精神分析や分析心理学など深層心理学の理論は、人間を理解する視点として広く活かされています。何気ない日常的な事象でも、関心の持ち方によって何でも研究対象になり得ます。例えば、私が学生時代に取り組んだテーマは「子どもが押入れや机の下に好んで入るのはなぜだろう」ということでした。このテーマも、実は上記の二つのテーマにつながっていきます(興味のある方は「小空間(移行空間)」で検索してみてください)。

<私の授業>
 私は学生時代から、あれこれ物事を考えるのが好きでした。新しい物事の見方、考え方を知るとわくわくします。心理療法では、相手が物事をどのように体験しているのか想像しながら話を聴きますが、相手の枠組みに沿ってその人を理解しようと試みることは、実は自分の物事の理解の枠組みが組み替えられる体験であるともいえます。心理療法に限らず、何かを深く知ろうとすることは、少なからず、自分の意識がアップデートされることでもあるのです。ゼミナールや講義の時間が皆さんの意識のアップデートができる場となればと思います。

 心理療法は省察的な実践です。クライエントの「こころ」を対象とするだけでなく、その方法論に治療者の「こころ」が大きく関わります。いわば心理療法は、「こころ」による「こころ」の治療なので、治療者は自分のこころを柔軟に使えるように“鍛える”必要があります。こころの柔軟性を鍛えるとはどういうことでしょうか? 自分の特性をよく知ること、意識の制御を少し緩めて言葉になりにくいような感覚もしっかりと味わうこと、それを他者にも伝わるような言葉として紡いでいくこと、などなど。私の心理士仲間は、これを「こころの“筋トレ”」と呼んでいます。ゼミナールでは、感じること、考えること、それを言葉にすることができる機会をたくさん持ち、「こころの“筋トレ”」をしたいと思います。講義でも、学生からの質問やコメントなどのリアクションを通して対話をしながら進めていきたいと思っています。

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