2004.2.18 Update

学習院大学ハイテク・リサーチ・センター


学習院大学理学部の「基礎物性研究センター」は文部科学省の「私立大学ハイテク・リサーチ・センター整備事業」に選定されています。ハイテク・リサーチ・センターは私立大学の自然科学分野を対象に、研究基盤と研究機能を強化し、先端科学技術研究を積極的に推進するための助成制度です。

第1期事業は平成9年度〜13年度にわたって行われました。
代表は川路紳治理学部教授で、二つのテーマが同時に進行しました。

1)『生体物質物性研究プロジェクト』(代表:三浦謹一郎理学部教授)
2)『電子物性研究プロジェクト』(代表:川路伸治理学部教授)

第2期事業は平成14年度から18年度の予定で進行中です。
代表は小谷正博 理学部教授で、テーマは『高機能分子集合体の創製と機能解明』です。
内容はいくつかのサブテーマに分かれます。

1)π共役系物質を用いた電子素子の基礎研究(小谷正博 理学部教授ほか)
有機化合物を使ったエレクトロニクスが可能になるかもしれません。
このグループでは有機薄膜を使ったトランジスタを研究しています。
その性能を支配している要因はなにか、その中でどんな物理・化学現象がおこっているのかを解き明かそうとしています。この分野の理解が進めば、ひろく自然界でおこっている分子のあいだの電子のやりとり、つまり酸化還元という現象をもっと深く理解することができると期待されます。
2)σ共役系物質の創製と高機能発現(持田邦夫 理学部教授ほか)
π電子のように自由に動くことができるσ電子をもつ面白い化合物が見つかりました。この化合物を情報の伝達や複写の材料にどのように活かすことができるかという基礎研究を行っています。また、企業と共同で実用化も目指しています。
3)超高圧による新規無機材料の合成(赤荻正樹 理学部教授, 稲熊宜之 理学部教授、ほか)
高圧力と高温を使って、新しい無機材料になりうる様々な新物質を合成しています。例えば高いイオン伝導性や強誘電性をもつペロブスカイト型やパイロクロア型の酸化物、トンネル構造のホランダイト型化合物などがその例です。今までより優れた機能を持つ新規無機材料を探索するにはより高い圧力温度での合成が必要になり、その基礎実験技術の研究も行っています。また高圧力と高温で合成されるケイ酸塩化合物の研究によって、自然界で高圧高温が実現している地球の深部を理解することも期待できます。
4)化学センサーとしての受容体・タンパク質複合体の合成(芳賀達也 理学部教授ほか)
Gタンパク質共役受容体は、ヒトにも、昆虫にも、酵母にもあり、光、匂い、味、フェロモンなどを感ずるタンパク質です。体の中では、アドレナリンのようなホルモンや神経伝達物質を感知しています。ヒトには1000種類ぐらいあり、ヒトが飲む薬の半分ぐらいはこのタンパク質に働きます。Gタンパク質共役受容体に色々な刺激物質が加わると、細胞の中のGタンパク質を活性化して、その結果細胞が働き出すことになります。私たちのグループでは、Gタンパク質共役受容体とGタンパク質を遺伝子工学的に結合させて、色々な化学物質のセンサーとして使おうと計画しています。これを使って未知のホルモンや薬候補物質などを探し出すことができると期待しています。


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