1998年 | 慶應義塾大学 経済学部 卒業 |
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2005年 | マンチェスター大学 社会文化研究所 専任研究員 |
2006年 | オクスフォード大学 社会経済史学科 博士課程修了 D.Phil. 取得 |
2007年 | 現職 |
西洋経済史、経営史、消費文化論、経済学史 (特に、イギリス近現代史を中心に)
・Fashion and the Mass Consumer Society In Britain, c. 1950-2001, unpublished
D.Phil. thesis, University of Oxford (October 2005)
・'Have there been Culture Shifts in Britain? : A critical encounter with Ronald
Inglehart', Cultural Sociology, vol.1, no.3, pp.293-315 (November 2007)
co-authored by Mike Savage.
・'From Haute Couture to High Street: the role of show and fairs in
Twentieth-century fashion', Textile History, vol.39, no3 (forthcoming, 2008).
・'Affluence and the Dynamics of Spending in Britain, 1961-2004', Contemporary
British History, special issue on affluence edited by Shinobu Majima and Mike
Savage, vol.22 no.3 (forthcoming, 2008).
・'Elite Consumption in Britain, 1961-2004: results of a preliminary investigation'
In Sociological Review Special Edition (forthcoming in 2008), co-authored by Alan
Warde.
・'Fashion and frequency of purchase: Womanswear consumption in Britain,
1961-2001', Journal of Fashion Marketing and Management (forthcoming,2008).
・「女性の就労と嗜好形成―日・英における被服消費行動をめぐって」『学習院大学経済論集』第44巻第3号(2007年10月).
・日本ファッション協会助成研究「日・米・英におけるファッションと消費サイクルの経済史
的考察-過去4半世紀の概観と現状分析-」,日本ファッション協会(東京),2004年度.
・英国NCDS/BCS コホートパネル調査 ユーザー・コンサルタント,2006年-
・マンチェスター大学 社会文化研究所 准研究員
・社会経済史学会, 経営史学会
Economic History Society, Social History Society, Association for
Business Historians, European Business History Association.
一般経済史の講義では、まず第1に、皆さんにマクロ・ミクロ経済学の応用編としての経済史学に取り組んでもらいたいと思います。経済学部に進学して、ミクロ・マクロ経済学にはじめて接すると、その理論的抽象性を難しく感じてしまうかもしれません。この講義・演習では、日常的で身近な事象を織り交ぜながら説明するつもりです。経済的に捉えることの面白さを感じてもらいたいと思うからです。経済理論を歴史というコンテクストの中で学び、また新たな歴史的コンテクストへと戻していくという作業を通じて、経済理論の理解を深めていきましょう。
第2点としては、従来の経済史上重要とされてきた歴史的転換点を理解し、歴史的な知識をつけてもらうということが主な目的です。そのため、この講義は先史時代から現代までの人間と経済のかかわりについて、時代を追って概説していく構成となっています。現代の情報化社会では、知識の蓄積よりも、豊富な情報をどう分析しプロセスするかが重要になってきています。歴史という情報の蓄積を解釈する手段として、経済学を利用する方法を学んでもらいたいと思います。
第3点としては、経済理論の普遍性と歴史的事象の固有性・特殊性の間に生ずるギャップをどう埋めるかという問題にも関心を持ってもらいたいと考えています。今日の欧米経済史学は、特に、経済的合理性では捉えきれない、過去の経験・蓄積への依存 (path dependency)を、行動原理のひとつとして提唱してきた点において貢献するところが大きいと考えるからです。その例として「QWERTY」の経済学、つまり合理性を求めた技術革新が進む中で、例えば、パソコン・キーボードの文字配列が、既存の配列に依拠した形で残されてきたというような事例に注目します。経済的合理性では捉えきれない行動原理のもうひとつとして、人間どうしの相互依存関係 (interpersonal dependency) 、換言すれば、ゲーム理論的な考え方を組み込むことも、経済史の新しい視角として認識してもらいたいと思います。
市場経済の進展を考える上で、これらの新古典派経済学の前提を批判的に検討することは、経済理論を歴史理解のために補完的に利用していく過程で重要となってきます。というのは、第4点としてあげるように、経済が社会・文化に与える影響、反対に社会・文化が経済に与える影響を考えるうえで、キー・コンセプトとなってくるからです。講義・演習では、経済・社会・文化的変化を動態的にとらえる際に、ポイントとして市場経済の進展・消費文化の爛熟・そしてグローバル化の3点を特に重視したいと考えています。従来の経済史学が生産(生産力と生産関係)を重視してきたのに対し、消費の動向、とくに個人の趣向のありようが経済にいかに影響しているかを考え、その中で人間のミクロ・レベルでの行動原理を問い直しつつ、経済発展および「グローバル化とは何か?」という問題について、考えてもらいます。そのような理解を進める中で、現代の急速な市場経済化の現象が招いている多くの弊害、すなわち自然環境への負荷や道徳的退廃などの深刻な危機的状況を理解し、皆さん一人一人に「経済人」としての認識・意見を持っていってもらいたいと考えています。