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教員スタッフ紹介

今井 久登 教授 認知心理学

 

<主要論文・著書>
「回転および歪曲変換が知覚プライミングに及ぼす効果」(共著(第一著者):心理学研究, 70巻3号, pp.177-185, 1999)
「記憶の自動想起の生起:日誌法による予定の想起報告に基づいた注意拡散仮説の提案」(単著:学習院大学文学部研究年報, 61巻, pp.141-150, 2015)
「Reward Eliminates Retrieval-Induced Forgetting」(共著(第一著者):Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, Vol.111, No.48, pp.17326-17329, 2014)
「新版 認知心理学 ー知のアーキテクチャを探るー」(第6章「記憶 ー過去・現在・未来の自己をつなぐー」を執筆:有斐閣, 2011)
「記憶の原理」(A・M・スープレナント,I・ニース(共著)今井久登(訳):勁草書房, 2012)

<研究分野>
 研究分野は認知心理学で,人間の認知活動の潜在性と顕在性との関係に関心があり,それらについて,特に人間の記憶能力のしくみや働きに焦点を当てて研究しています。
 認知心理学における記憶というと,長期記憶(意味記憶・エピソード記憶)・短期(作動)記憶・手続き記憶・日常記憶(思い出・顔の記憶・記憶違いなど)が話題の中心になりがちで,私の講義でも重点的に取り上げて解説していますが,私が研究しているのはこのような種類のものとは少し違ったタイプの記憶です。
 私が研究しているのは「潜在記憶」と呼ばれる種類の記憶です。一口に潜在記憶と言っても実際には幅の広い現象・概念であるため,大学院生時代には心理言語学寄りのテーマ(統語プライミング効果)を扱っていました。博士号を取得した後は,知覚心理学(視覚)寄りの潜在記憶(知覚表象システムといいます)に方向転換し,私たちが物を見るときに,頭の中で使っている暗黙的な知識の内容とその獲得のしくみを明らかにしようと奮闘しています。採用する研究方法は「実験法」が中心です。学生のみなさんに研究参加者をお願いすることもありますので,その時にはぜひ協力してもらえるとありがたいです。
 他には,予定(展望記憶)を思い出す時の「思い出しの潜在性」を突き止めようと,どういうきっかけで思い出したのかを調査して,パタンを分類してみたこともあります。加えて,2010年以降は,報酬(ごほうび)が記憶に与える影響についても取り組んでいます(これは,その年にボストン大学で研究休暇を過ごしたときの縁でスタートした共同研究です)。

<私の授業>
 私が担当しているのは,認知心理学/実験演習Ⅰおよび実験演習Ⅱ/学習・認知ゼミナールです(2016年度現在)。
 認知心理学の授業では,認知心理学の全般を1年間かけて解説しています。認知心理学の研究法について概説した後,人間の認知の基礎である感覚・知覚の話に入り,高次認知過程へと話を段階的に進めています。初めて聞くような専門用語が多く出てくると思いますが,それらは,認知心理学に限らず他領域も含め,論文を読んだり卒論に取り組んだりしていく上で必要かつ重要であるので,ひとつひとつ覚えていってもらう必要があると考えています。また,授業内容の理解の助けに少しでもなればと,日常生活に即した具体例やミニ実験をできるだけ取り入れて説明するようにも心がけています。
 また,実験演習ⅠおよびⅡでは,心理学で用いられる基礎的な研究手法の習得に加え,データの分析やレポート・論文のまとめ方の作法を実習形式で進めています。心理学は実証的な学問ですので,実験・調査・観察・測定などの実証的な手法を身につけることは必須ですし,データの統計的分析による理解は避けて通れません。作業量は講義形式の授業の倍以上ありますが,きちんと取り組めば,1年間が終わる頃にはしっかりとした技術が身についているはずと思います。
 学習・認知ゼミナールでは,3年生は翌年度の卒業論文に向けて,4年生は目下取り組み中の卒業論文の提出を目指して,認知心理学の研究を行うためのノウハウを学んでいきます(問いと仮説の立て方,研究方法,データ分析,論文へのまとめ方など)。内容は年度によって違いますが,少なくとも,英語の論文を読むことは多いです。既に履修している「認知心理学」や「実験演習」の授業で身につけた知識や経験を,英語論文を読む際にぜひ活かして欲しいと思います。論文や本を読んで知識をつけることだけで満足するのではなく,お互いの考えを根拠を示しながら出し合って,文献に書かれていることから一歩進んだ発想やより説得力のあるアイディアがメンバー全員で得られるようなゼミを目指しています。

<趣味・特技>
 体力作りと研究の合間のリフレッシュを兼ねて,学内のトレーニングセンターに出没しています。長年のあいだ,運動することを面倒に感じて軽んじてきたために,慢性の運動不足に陥っており,トレーニング中はスマートとはほど遠い動きをしていますが,見かけたらどうぞ声をかけてください。だけど,あまりにも苦戦しているときは少し恥ずかしいので,その時だけはできればそっと見守っておいてもらえるとありがたいです。
 趣味として落語を聴くことが好きでしたが,昨年,機会があって観劇したことでミュージカルの楽しさに目覚め,趣味の座がミュージカル鑑賞に代わりつつあります。帝国劇場や宝塚歌劇の作品を中心に観ています。
 また,英語の勉強の一環で,ペーパーバックを読むようにしています。なるべく読みやすい作品を選んでぼちぼちと読み進めているので,それほどの冊数を読めているわけではありませんが,これまでに読んだ中で気に入っているのは,Jeffrey Archer の "Not A Penny More, Not A Penny Less” と Lisa Genova の “Still Alice” です。前者は,テンポがよく痛快な大衆小説,後者は,心理学の教授が自ら若年性アルツハイマー病にかかり,自分と家族に向き合ってゆくフィクションで,認知心理学の観点から見ても大変考えさせられる物語でした。
 

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