浅野報告「経済協力の国際政治的起源」は、マクロ経済学で著名なケインズが「世界平和維持費用」を敗戦国に分担させるという観点から、第二次大戦初期に、資本・工場設備そのものの移動を意味するところの、資本賠償という概念を手段とした帝国解体論によって、ケインズが経済協力の原型を作り上げていたこと、および、実際にそれがポーレー使節団の構想として占領下に実行されようとしたことを、アメリカの戦後世界への経済協力構想の変遷と関連させて説明することで、技術協力とヒトの交流が制度化され、日米の特殊関係が形成されていった過程を世界史的に検証する。
佐藤報告「経済協力にみる個別性と普遍性」は、1960年代の高度経済成長の前史となる1950年代における奇跡の復興が、それを担った日本人によってモデル化されなかった理由の考察を皮切りに、開発援助における個別性と普遍性の関係を検討する。
具体的には、米国の開発経験をもとにしたTVAモデルの受け入れについて、日本国内で展開された議論などを材料に、今となっては忘れられた開発思想の再発見を試みる。