宮塚教授は、山梨学院大学にて北朝鮮の研究をなさっています。
今回は、学習院大学の学生に向けてその貴重な研究内容のご紹介をしていただきました。
日本国内では、北朝鮮はその地理的な近さが感じられないほどに遠い存在として多くの人は認識していると思われます。
北朝鮮は、しばしばいわれることですが、多くの日本人にとって「近くて遠い」存在であるといえると思います。
独裁体制をとっている北朝鮮の国内事情は、時々テレビで映し出される断片的な映像や、新聞で見られる関係者の証言などからしかなかなか知ることができません。
また、調べれば情報があるにしても、その「遠さ」から、興味を持つことは少ないかもしれません。
「遠い」北朝鮮は外側から分析されることが多いですが、宮塚教授は、北朝鮮の内部事情に大きな関心を持ち、外部からは勿論のこと、内部からその状況を研究するために地道な調査に基づいて北朝鮮の研究をなさっています。
宮塚教授のお話は、日本と北朝鮮の間に存在する「遠さ」を見つめ直す機会を与えて下さるものでした。
まず、政治や経済のことについては、新聞で報道される軍と党の間での対立、2009年のデノミネーションの失敗などの情報についてのお話がありました。
党の失敗は国民生活に大きく響いているということで、一ヶ月働いても米が一キロも買えないという厳しい状況にあるそうです。
このような政治経済の状況は聞いたことがあっても、米という生活に欠かせないものの不足について聞くと、その過酷さをより具体的に想像することができました。
また、北朝鮮内には社会的な階層が作り出されていて、大きく三つに分けられ、下に行くほど社会的にも経済的にも厳しい生活を送ることになるそうです。
数十年前に格差の無い夢の国として大きくアピールされた北朝鮮ですが、その北朝鮮内で社会的に階層が作り出されているというのは非常に興味深い状況だと感じました。
より日本とのかかわりが強いお話としては、日本と北朝鮮の間のモノの流れについて聞かせていただきました。
現在、日本と北朝鮮の間では経済制裁でモノの流れはありませんが、2006年の段階では日本は北朝鮮から海産物や松茸、天然の砂などを輸入していたそうです。
そして、北朝鮮は、公式な流れではありませんが、現在でも中国を経由して性能の良い日本製の自転車を手に入れることがあるそうです。
中国と北朝鮮の関係はしばしば注目されますが、このようなモノの流れについても、中国の役割が色濃く見て取ることができます。
日本と北朝鮮の間には長く国交がありませんが、その関係は見えづらくなっているだけであり、間接的に、また、影に隠れて存続しているということに実感を持つことができました。
更に、講演の中では、貴重な北朝鮮の日用品を拝見させていただきました。
藁に包まれた鶏卵や、北朝鮮国内では肉が非常に貴重なために、大豆を肉に模して作った人造肉、北朝鮮国内では禁止されている聖書など、北朝鮮の人々の生活を感じることのできる製品を手にとって見ることはあまり無い貴重な経験であると思います。
そのほかにも色々と興味深いお話を聞かせていただきましたが、以上のように日本と北朝鮮の関係を中心に、なかなか知ることのできない北朝鮮のお話を多く聞かせていただきました。
宮塚教授のご講演は、北朝鮮に興味を持ち、この近くて遠い国とどのように向き合っていくかを考える機会を与えてくださるものでした。
このような機会を頂き、非常に感謝しております。