学習院大学 人文科学研究所 特別共同研究プロジェクト

  ◆活動中のプロジェクト◆

   平成30年度は以下の10件のプロジェクトが活動を行っています。


研究題目
国立歴史民俗博物館所蔵『広橋家旧蔵記録文書典籍類』データベース化の研究
研究代表者
家永 遵嗣/文学部教授(史学科)
目的・内容・
期待される成果など
 標記『広橋家旧蔵記録文書典籍類』は、藤原北家日野家流の広橋(勘解由小路)家に伝来した史料のうち、中世史料の主要部と近世史料の一部からなる。マイクロ写真で23000コマにおよぶ大規模史料群である。現在、現所蔵者である国立歴史民俗博物館で目録の刊行が準備されているが、史料の量が膨大であるところから、目的とする資料を検出できるデータ・ベースの構築には、国立歴史民俗博物館で作成中の目録と異なる価値がある。
 研究代表者らは2003年度から2005年度にかけて、人文科学研究所共同研究プロジェクトとして、表記『広橋家旧蔵記録文書典籍類』を主題とする調査・研究を行った。記録・文書・典籍の一件一件について、作成者・作成時期・内容・特記事項を検討し、調書567通を作成し、エクセル・データの形で集成した。しかしながら、ひとつのキーワードでは対象全てを検出できない問題などが指摘されたたため、集成データの公開に至っていない。
 本研究では上記データをデータベースとして機能させる研究を行い、成果をweb公開する。
研究成果の公表
こちらからダウンロードできます。

『広橋家旧蔵典籍類目録稿』20200326


研究題目
伊達家屋敷跡出土木簡の再検討を中心とした江戸木簡の研究
研究代表者
鐘江 宏之/文学部教授(史学科)
目的・内容・
期待される成果など
 日本近世史は伝存の文献史料により研究が進められてきたが、近年の江戸時代遺跡の発掘調査により出土文字資料も増加している。しかし、江戸時代の出土文字資料については、文献史料の調査に携わる研究者が十分に検討する機会が非常に少なく、あまり利用されずに見過ごされているのが現状である。そのため、本来注目されるべき多数の木簡が出土した遺跡においても、木簡の釈読作業は古代や中世の木簡に比べて比較的簡易に済まされているように思われ、再検討の余地が大きい。
 本研究プロジェクトの中心となっている複数の研究者は、以前の別な機会に調査した近世木簡群において、十分な時間をかけた検討によって釈読の不十分だった点を多数明らかにでき、資料からわかる情報がより有用な形で提供できることを体験した。
 本研究プロジェクトでは、今後の研究に影響が大きいと考えられる資料群に対象を絞り、古代木簡を対象に進展してきた木簡学など複数の研究分野の視点から綿密に検討し、従来看過されてきた江戸木簡の史資料的価値を明示することが期待される。
研究成果の公表


研究題目
前近代ヨーロッパ史における統治システムの研究
研究代表者
亀長 洋子/文学部教授(史学科)
目的・内容・
期待される成果など
 近年、権力のあり方を見直す様々な指標や方法が歴史学では検討されている。その中で現代社会の理解にも通ずる問題意識が前近代史研究の姿勢にも大きな影響を与えている。例えば市民の中を流れる反エリート主義を前提に為政者がポピュリズム(大衆迎合主義)的政策で人心を掌握しようとする意識、為政者が自称する称号の中に見られる統治の意識、またグローバリゼーションの拡大や地域の自治意識の高揚が錯綜する中、異文化間のコミュニケーションや地域特有の論理を前提に地域の自立性と政府との関係を検討する必要性といったテーマである。
 本計画ではこうした問題意識を有する西洋古代史・中世史の研究者が、自身の史資料の解釈を提示し、他時代の成果を知りつつ統治システムを検討することを目的とする。他時代の研究者との交流により個々人の報告の中に類似の現象などを見い出し、自らの研究対象に固有の現象と思われる内容を相対化する貴重な契機を得ることができ、他時代の研究者の発想を自らの研究分野の史料解釈に応用し、研究を深化させることが期待される。
研究成果の公表

研究題目
ドイツ啓蒙期における知の拠点としての図書館―ヴォルフェンビュッテル・アウグスト公爵図書館を事例に―
研究代表者
伊藤  白/文学部准教授(ドイツ語圏文化学科)
目的・内容・
期待される成果など
 本研究は、北ドイツにあるヴォルフェンビュッテルのアウグスト公爵図書館の17世紀から18世紀にかけて蔵書および運営上の発展を調査することで、ドイツ啓蒙期の思想の発展における図書館の役割を明らかにするものである。同図書館は、16世紀にさかのぼる歴史を持ち、ドイツの仮想国立図書館計画ともいうべき「ドイツ刊行物収集計画」において1601年から1700年までの図書の収集に責任を持つなど、国立図書館級の重要性を有している。その蔵書構築には、ヴォルフェンビュッテルの廷臣であった文法家ユーストゥス・ゲオルク・ショッテルや、1691年から1716年までハノーファー選帝侯図書館長と兼任で館長を務めたゴットフリート・ヴィリヘルム・ライプニッツ、同じく1770年から1781年の間館長であったゴットフリート・エフライム・レッシングが大きく関わったことが知られている。また同図書館は、光を取り入れた建築、先進的な蔵書目録の整備、あるいは宮廷外への蔵書の公開等によって、啓蒙的精神を体現する図書館でもあった。
 本研究では、主に上記三人の主要人物が同図書館の蔵書構築・運営に与えた影響を調査するとともに、その蔵書および図書館の存在が彼らの思想的発展に与えた影響を明らかにすることによって、同図書館のドイツ啓蒙期における位置を考察する。
研究成果の公表

研究題目
旅とフランス文学
研究代表者
鈴木 雅生/文学部教授(フランス語圏文化学科)
目的・内容・
期待される成果など
 旅と文学というテーマは古今東西の文学に見られるが、フランス文学において旅がとりわけ重要なテーマとなるのは、ラ・ペルーズ、ブーガンヴィルなどの太平洋探検の航海が行われたり、また交通手段が発達し、一般人も旅行を頻繁に行うようになる18世紀後半からのことである。19世紀以降になると、オリエント旅行を初めとする国内外の旅行が盛んになる一方、身近な都市を異邦人のように旅する者、自分の書斎という世界を旅をする者、さらに空想的な旅行を想像する者などが現れ、文学における旅のテーマは多種多様な広がりを見せる。
 そこで本プロジェクトでは、旅と文学という抽象的、一般的視点からではなく、個別具体的なテーマや作品、作家において、旅と文学がどのような結びつきを示すかを考察し、それをもとにフランス文学にとっての旅とはどのようなものであったかを素描したい。
研究成果の公表


研究題目
心理療法家育成プログラムにおける集団精神療法の可能性の検討
研究代表者
林  公輔/文学部准教授(心理学科)
目的・内容・
期待される成果など
 公認心理師制度が導入されるにあたり、心理療法家には今後ますますチーム医療の担い手としての活躍が求められる。しかし、大学院における心理療法家育成トレーニングの中心は個人心理療法に置かれており、他職種と連携する際に必要な技能について十分なトレーニングを受けているかは疑問である。
 個人心理療法に対して集団精神療法とは、複数名のクライエントを対象に行われる精神療法である。そこでは、同時に多数の人間の間で生じる心理的力動についての理解を体験的に深める機会を得ることができるため、多職種連携において求められる技能習得に有効であると考えられる。しかし、十分な検討がなされていない。
 本研究の目的は、公認心理師を目指す大学院生を対象として、集団精神療法のトレーニングプログラムを実施し、その効果について検討することである。本研究によって、心理療法家育成過程における集団精神療法の重要性が明らかになるだけでなく、大学院生自身の自己理解が深まり、専門家としての成熟に資すると考えている。さらには本研究の結果を元に、大学院教育プログラムの見直し、改善に役立てることができる。
研究成果の公表


研究題目
小児科医療における遊戯療法の効果研究
研究代表者
吉川 眞理/文学部教授(心理学科)
目的・内容・
期待される成果など
 国家資格公認心理師の誕生を受けて小児科医療の現場においても心理専門職の活用がますます盛んになることが予想される。小児科医療の現場において、発達途上の困難を抱える子どもたちに対し、子ども達の自発性を尊重しつつ、人間関係を形成しながら遊びの場を発生させる遊戯療法は、すぐれた発達促進機能を持つものとして期待されている。
 本研究では、遊戯療法の効果について、事例研究に基づいて検証することを目的としている。特定の時期に行われた小児科医療現場で行われた遊戯療法過程について、言語発達と情緒発達の二軸より概観しつつ検討することによって、遊戯療法の効果を説得できる資料の獲得を期待している。  
研究成果の公表

研究題目
シティズンシップ教育のカリキュラム開発に向けた国内実践事例の調査・分析
研究代表者
長沼  豊/文学部教授(教育学科)
目的・内容・
期待される成果など
 本研究はシティズンシップ教育の国内における実践事例について調査・分析・考察し、日本におけるシティズンシップ教育の先進的・発展的な取り組みの実現を企図し、新たなカリキュラム開発を目指すものである。
 今日までに国内で行われているシティズンシップ教育の取り組みとしては、お茶の水女子大学附属小学校、埼玉県桶川市立加納中学校、埼玉県上尾市立上尾東中学校(グローバルシティズンシップ科)、琉球大学教育学部附属中学校、東京都品川区(市民科)、神奈川県高等学校群、青森県三戸町(立志科)、京都市八幡市立小・中学校群、宮崎県(こすもす科)などが存在する。個々の先行研究を踏まえ、実地視察調査を通じて、
 これらの教育実践について横断的に分析・考察を深めることは、地域的・文化的背景を基軸としたカリキュラムの理論的枠組みを構築し、新たなカリキュラム開発につながる成果が得られる。このような横断的な事例研究はシティズンシップ教育研究では先行するものがなく学界として意義がある。また、国内複数箇所におけるシティズンシップ教育の実践事例を協働的に分析・考察するため共同研究の必要がある。
研究成果の公表


研究題目
近代日本・ベトナム関係とアーカイブズ
研究代表者
武内 房司/文学部教授(アーカイブズ学専攻)
目的・内容・
期待される成果など
 本研究は,日本・ベトナムに残る近現代日本・ベトナム関係に関する歴史アーカイブズを日本・ベトナムのアーカイブズ学関係者で共同で調査したうえで,その所在・概要・意義等を記述した目録を作成し,さらにその過程で得られた得られた知見を日本・ベトナムの歴史学・アーカイブズ学関係の研究者のあいだで共有することをめざすものである。
 20世紀以降,日本とベトナムは政治・文化・経済等の面でさまざまな交流の歴史を持っているが,アーカイブズ資料についてはいまだ系統的な掘り起こしと紹介がなされているとはいいがたい情況にある。とりわけ戦時期のアーカイブズについては,終戦時に破壊されたものが少なくない。そこで,ベトナムおよび近代においてベトナムの宗主国であったフランスにおいて所蔵されているアーカイブズ資料と相互に参照させることで,日本・ベトナム関係にかんするアーカイブズ資料の全体像をとらえることをめざしたいと思う。
研究成果の公表


研究題目
娯楽産業における社会的弱者表象
研究代表者
中野 春夫/文学部教授(英語英米文化学科)
目的・内容・
期待される成果など
 本研究は、娯楽産業において社会的弱者がどのように表象されるのか、現実世界での実態と比較してその表象の特性を6名の共同研究として分析する。
 本研究では現実世界での社会諸制度という政治経済的コンテクストを重視し、現実世界での社会弱者とフィクションのそれとの比較によって,「社会的弱者」のステレオタイプ的イメージがなぜ、どのように形成されるのかを具体的かつ横断的に検討する。娯楽産業と一口に行っても時代差、地域差、ジャンル差があるので、専門対象の異なる6名の共同作業によってより広範かつ具体的な分析が可能になる。
研究成果の公表



  ◆過去のプロジェクト◆

   平成24年度は以下の6件のプロジェクトが活動を行いました。活動の記録・成果などは、
   『学習院大学人文科学研究所報』2012年度版 をご覧ください。


研究題目
中世文化の世界像と古典知―東日本の造形をめぐって―
研究代表者
佐野 みどり/文学部教授(哲学科)
目的・内容・
期待される成果など
 本研究は、東日本の中世造形文化を対象に、@それらがどのように古典を契機、枠組みとしているか、 あるいは古典をどのように読み換え再生させていくのか、古典の規範性をいかなる戦略としてきたかを具体的な作品解析から考察し、 さらにA東日本における様式の展開もしくは選択が、中央の造形の単なる周縁化に位置づけられるのではなく、 東日本の文化圏・政治圏・宗教圏が要請する解釈のかたちであろうことを検証し、それらが形作る世界観を明らかにすることを目指す。 東北在住の研究者との積極的な共同研究は、東日本の造形文化の研究視点を活性化することともなろう。 古典知を諸カテゴリー分析の通時的共時的座標軸に据える考察の枠組み、宗教儀礼の背後にある信仰と呪術的認識の型を考える人材、 世俗美術の受容にみる地域性への照射、古典知と同時代志向の把握など、東日本の造形文化の理解にとどまらず、 広く中世人の心性の解析にも議論は展開する筈である。
研究成果の公表
平成25年7月11日開催特別共同研究プロジェクト成果報告会

研究題目
自己・他者・「世間」に関する心理学的研究
研究代表者
外山 みどり/文学部教授(心理学科)
目的・内容・
期待される成果など
 日常場面において、人は周囲の他者と相互作用を行い、社会的環境から様々な影響を受けながら生活している。個人の側から見るならば、 自己の動機や意図と、他者からの要請あるいは社会的環境の制約とをいかに調整し、適切に行動するかが重要な課題となる。その際には、実在の他者 や集団だけでなく、いわば表象としての他者や集団が大きな心理的意味をもつ。本研究では、「抽象化された他者の集合」に対する表象と考えられる 「世間」の概念を用いて、自己と他者、自己と社会的状況の関係の諸相を明らかにすることを目的とする。現代社会は、人間関係の希薄化、価値観の多様化、 社会的規範の機能低下などの問題をかかえている。集団や他者の意向を考慮して自己制御を行うことは、社会生活を営む上で適応的であるが、 過剰に他者の目を意識することは臨床的な問題にもつながる。「世間」概念を用いた研究は、対人関係を中心とした心理学研究に新たな展開をもたらすと 期待される。
研究成果の公表
『自己・他者・「世間」の心理学』(世間心理学研究会編)

研究題目
東日本大震災の被災をめぐる「語り」の機能に関する学際的検討
研究代表者
吉川 眞理/文学部准教授(心理学科)
目的・内容・
期待される成果など
 本研究の意義と目的:東日本大震災と原子力発電所事故の被災、そして現在も継続中の復興への支援の経験は、私たちのひとりひとりに社会への コミットや連帯の重要性を実感させる継起となっている。今回、東日本大震災の支援として、住民の交流の場の設定の試みが多く行われてきた。 本学臨床心理専攻の大学院生その「場」の運営にボランティアとして参加してきた。そこで営まれた住民相互の「語り」は、どのような機能を有していたのだろうか? この「語り」の機能や意味づけの検討を目的とするこの学際的アプローチは、被災や支援の当事者の経験の共有を可能にする「語り」の意義について、 新たな視野を提供する可能性を持つものである。
 本研究の内容:現地の支援担当者を対象に、「語り」の場がはたしてきた役割や、そこでの支援者としての経験について聴き取り調査を行う。 彼ら自身も被災しているが、彼らは職務上、自身よりも、住民や生徒の支援を優先する1年余を過ごしてきた。住民の「語り」を育み、聴き取ってきた彼ら自身の 「語り」から、被災や支援の体験を共有し、「語り」の機能について考察を深める。

研究題目
近現代の国際(東西)交流から生み出される「日本(人)」のイメージ
研究代表者
中野 春夫/文学部教授(英語英米文化学科、身体表象文化学専攻)
目的・内容・
期待される成果など
 本研究プロジェクトの目的は16世紀以降東西文化の接触から生み出されてきた「日本」あるいは「日本人」のステレオタイプ的なイメージの研究である。 古くはジパングの食人種・黄金伝説から19世紀の「フジヤマ・ハラキリ・ゲイシャ」、1970年代の日本企業と眼鏡をかけた小柄な中年戦士などなど、「日本(人)」に 関してさまざまなストックイメージが生み出され、その中には『ヘタリア』等において今日でも通用しているものがある。この種のステレオタイプ的イメージは 何を契機としてどのように生み出され、何を媒体としてどう流通し、歴史的にどう変化しているのか?本プロジェクトは身体表象文化学専攻の専任教員2名と演劇学、 舞踊史、表象史、ジェンダー研究などそれぞれに異なる専門領域を持つ博士課程大学院生・科目等履修生9名との共同研究であり、「日本(人)」のイメージ生成に 関する総合的な研究を目指す。多様な領域にわたる共同研究であることにより、「日本(人)」のイメージに関する情報が幅広く収集され、共有化されることが期待され、 そのイメージ生成に関して再逆輸入現象など複雑な地域的、ジャンル的相互影響関係が判明する可能性も見こめる。
研究成果の公表
『近現代の国際(東西)交流から生み出される「日本(人)のイメージ』

研究題目
震災原発等による避難生活が言語形成期の児童生徒に及ぼす影響に関する調査研究
研究代表者
安部 清哉/文学部教授(日本語日本文学科)
目的・内容・
期待される成果など
 住民の大規模移動は、周辺も含む地域言語と文化の大規模な変容を生み出す要因となる。古くは応仁の乱による京都消失と東国人流入による京都方言の東国語化、 データがある近年では、東京大空襲による伝統的東京弁の衰退、第2次大戦時白河市への学童疎開による関東児童500名の東京アクセントの消失調査、等の報告がある。東日本 大震災による避難・移動生活が、地域言語(方言)にどのような影響を及ぼすかということは、地域言語研究としても、地域語がその一部を担っている地域文化史の問題としても、 極めて注目される問題である。本研究では、原発事故のために大規模避難を強いられた南相馬市の若年層を対象に、集団・分散などの種々の避難生活状況が、今後の地域語を担う 言語形成期の特に児童・生徒の言語意識と言語行動へ及ぼす影響を、聞き取りやアンケート等によって、言語変容に関する社会言語学的資料として記録することを目的とする。 極めてデリケートな調査対象であるが、当該地域で長年に児童生徒への教育と方言調査に従事してきた共同研究者・小林氏の協力を得ることで、同じ避難生活者という視線からの、 外部者では容易に調査し得ない面や見落しやすい心理的局面も考慮できる有意義で貴重な調査と考える。
研究成果の公表
小林初夫、安部清哉「避難生活(震災原発等)による小中学生の日常言語への影響―福島県南相馬市小高区における言語意識調査―」(『人文』12号、173-225頁)


研究題目
ボランティア活動と社会とのつながり意識
研究代表者
伊藤 忠弘/文学部准教授(心理学科)
目的・内容・
期待される成果など
 東日本大震災以降、「絆」がキーワードとして取り上げられ、人々が人間関係や社会とのつながりを再考するようになったと言われるが、 これは青年期の学生においてより顕著かもしれない。多くの市民ボランティアが被災地に赴いたが、ボランティア経験は自分と社会に対する意識を変える 契機となると言われる。本研究では、ボランティア活動に参加している学生を対象にして、ボランティア経験がもたらす変化を、ボランティアに対する意識 、社会ないし社会問題に対する考え、自己ないし将来の自分に対する意識を中心に明らかにする。またボランティアを行っていない学生に対しても、 日頃から人と人のつながりについてどのように考え感じているかについて、対人的な感情(例えば、感謝や共感)を中心とした主観的な感情と、生活満足度や幸福感、 自己概念や将来の目標(例えば、社会貢献)への意識の関係を検討し、震災以降の大学生の意識について検討したい。