「現代物理学」2014 年度

物理におけるスケール不変な現象

月曜日 2 時限目(10:40--)、駒場キャンパス 723 教室(第一回は 4 月 14 日)

レポートについての情報は、別の「レポートについてのページ」にまとめました。

講義への補足

回り転がるコインの発する音

河川のサイズ分布

今回、ぼくが覗いたのは次の論文。誰でも無料で pdf が読めます。
A. Rinaldo et al., "Evolution and selection of river networks: Statics, dynamics, and complexity"
ここではエネルギー散逸を最小にする流れを考えていますが、実は、そっちはちゃんと読んでません。イントロをざっと見ただけ。というわけで、この論文がどれくらい重要なのかはコメントできません。

voter model

表面張力のある通常の 2 次元の coarsening の動画

The Metropolis Algorithm for the Ising model in action (by Razor Sharp )

最初、急激に小さい構造が消えたあとは、なかなか変化しないので飽きる(音楽は Kraftwerk ですね)。 \(\rho(t)\sim t^{-1/2}\) なので(指数緩和に比べると)なかなか界面は消えない。 voter で見られる対数的な緩和というのは、もっと遅いということだ。

講義内容の紹介(シラバスより)

多くの物理現象には、その性質を表わす(時間や長さの)「特徴的なスケール」がある。 たとえば、振り子がゆれていれば、周期と振幅が特徴的な時間と長さのスケールである。

しかし、(なんらかの近似的な意味で)「特徴的なスケール」を持たない物理現象もある。それらはスケール不変な物理現象と呼ばれる。 スケール不変な現象は(系の細かい特徴に依存しない)強い普遍性を示すことが多く、物理的にも数理的にもきわめて魅力的な研究対象である。

スケール不変な物理現象は、相転移に伴う臨界現象の文脈で精力的に研究された。 近年では、非平衡系の臨界現象の研究が、実験・理論の双方向か大きく進んでおり、スケール不変な現象の理解がより深まりつつある。 また、物理を離れた社会現象にもスケール不変な現象が見られることも明らかになっている。

この講義では、高校物理と高校数学以上の予備知識は仮定せずに、スケール不変な物理現象の魅力を伝えることを目指す。

まず、スケール不変な現象の数理的な雛形であるランダムウォークの問題を丁寧に解説するところから始め、徐々に具体的な問題に踏み込んでいきたい。


上で述べたように,高校の知識を越える予備知識は仮定しないつもりだ。新しい物理的概念や数学的道具は丁寧に解説していこうと思う。ただし、それでも、1 年生にはやや敷居の高い講義になるだろうことは承知しておいていただきたい(と言われても迷わす受講するのが「四月病」なんだろうけど・・(←いいことだと思います))。

さらに、この講義では、必修の物理や数学に飽きたらず、それらを越えて物理学(や関連する分野)を学びたい学生を想定していることを強調しておきたい。講義の内容を含むような教科書や参考書は(おそらく)存在しないので、しっかりと出席して学習する必要がある。レポート問題も自分で理解してしっかりと考えなければ解けないはずだ(そもそも大学で「調べれば解ける」ようなレポートを出題することが問題なのだが)。


単に「レポートだけで単位が取れる」というつもりで履修すると後で後悔する可能性がきわめて高いことを注意しておきたい(実際、以前の履修者で「ひどい目にあった」という率直な感想を書いてくれた人もいた)。

また、この講義ではレポートだけで評価を行なうので、いわゆるレポートの「丸写し」には厳しく対応する。「丸写し」を行なうことはもちろんだが、その原因を作る行為(たとえば、解答を配布したり、ネットに公開すること)にも同様に対応する。


言うまでもないことかもしれませんが、私の書いたページの内容に興味を持って下さった方がご自分のページから私のページのいずれかへリンクして下さる際には、特に私にお断りいただく必要はありません。
田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
田崎晴明ホームページ

hal.tasaki@gakushuin.ac.jp