2002年以降、韓国の選挙ではITCが選挙結果に大きな影響を与えるようになり、またそこにおけるネティズンの役割の重要性も増したとされている。
特に2007年大統領選挙では、候補者のホームページ、ブログ、ミニHP、UGC等を活用するオンライン選挙運動が非常に活発に行われ、また2010年の統一地方選挙ではTwitterやFacebook等のSNS(Social Network Service)がインターネット選挙運動の主役となった。
上述の2007年大統領選挙では、候補者の「ファンクラブ」活動が非常に活性化し、それによる選挙運動が行われた。
「ファンクラブ」は数も多く、政治参加を促進させる役割を果たしており、大統領選挙における重要な要因となってきている。
「ファンクラブ」の会員はオンライン世論を形成・主導しており、そのためオフラインの世論に対する影響力も大きい。
他方2010年の統一地方選挙では、SNSによる選挙運動や参加への動員が積極的に行われた結果、下降傾向が続いていた投票率が上昇し、またそれが選挙結果にも大きな影響を与えた。
韓国の選挙では、有権者と候補者がインターネットを双方向・多元的な政治コミュニケーションの手段として利用している。
こうしたインターネットによるコミュニケーションは、自発的な政治参加を増やし、それがさらに参加の質的な変化を引き起こすという側面もある。
またインターネットは情報流通権力の民主化、政治・社会的な透明性の拡大、政治参加の平等性確保にも貢献した。
その一方で、インターネットを利用した候補者「ファンクラブ」中心の選挙運動は、従来の政党による選挙運動を代替する役割を果たすことにより、政党機能の弱体化をもたらす可能性もある。
また「ファンクラブ」は会員の候補者個人に対する忠誠心をもとにして形成されているため、選挙が「私事化」する恐れもある。
さらに少数の積極的な会員(Twitterian)がオンライン世論形成過程を通じて過大な代表機能を果たす危険性もある。
このような問題は、代表機能や政治的な影響力の格差(democratic divide)を生み出す恐れがあるので、その対策は不可欠である。
以上のような講演に続き質疑が行なわれ、インターネット選挙が持つ負の側面、e-Democracyの時代における政党の役割、ポピュリズムとの関係などについて積極的な議論が交わされた。
全体として、民主化のプロセスと情報化のプロセスの相互作用という視点からも極めて興味深い研究会であった。