Answer
学習院の良いところは?
他の大学との違いは?
- 少人数教育、学びやすい環境、 自分に合った学習ができます。
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経験が豊富な教員から、きめ細かな指導が行われます。
授業時間以外でも親身に個別指導に対応します。
Answer
Columnコラム
私は、他の法科大学院は経験していませんが、本学の修了生として、在学中、本学が小規模であり、学生の数が少ないことのメリットを感じていました。そのメリットとは、教員との距離が非常に近く、極め細やかな指導を受けられることです。私は、未修入学だったのですが、未修1年生のときの同学年は5名、2年生となり既修生を迎えても10名程度でした。このように学生が少なったので、授業は教員と一緒に大きなテーブルを囲み、双方向でのやり取りで進行されるものが多かったです。大教室で、教員が一方的に話すのをただただ聞く、という授業はひとつもなかったと記憶しています。双方向での授業においては、教員から頻繁に質問が飛ぶので、適度な緊張感を持って授業に臨むことができます。そして、双方向での授業の最も良い点は、教員と学生がお互いに議論をしながら法律の理解を深めることができる点です。司法試験において重要判例の理解は不可欠ですが、判例の解釈は簡単ではありません。法律全体の体系的、歴史的理解に造詣が深い学者の間でも解釈が分かれるところも多くあります。そして、学界的に熱い議論が交わされる部分についての理解が問われるような問題が、過去の司法試験においても問われることが多いように思います。司法試験委員の先生方は学者が多いですから、学界的に関心の深い箇所に焦点が当てられるのは、むしろ当たり前かもしれません。どのような箇所が学界的に関心の深い箇所なのかは、所謂参考書を通り一遍に読んだとしても学生には容易に分かりません。教員から問われて、初めてその奥深さに気付かされるという経験を私は何度もしました。
この授業は、教員一人に対して、学生が二人というとても贅沢なものでした。薬局距離制限事件判決(最大判昭和50・4・30)や泉佐野市民会館事件判決(最判平成7・3・7)、在外日本国民選挙権事件判決(最大判平成17・9・14)といった重要判例を読み、教員とともにその読み解き方を議論するという内容でした。どの判例の読み解きにおいてもいつも新たな発見があり、とても刺激的でした。たとえば非嫡出子法定相続分差別事件判決(最大決平成25・9・4)の読み解きにおいては、その先例とされる平成7年大法廷決定の合憲判決との読み比べを行いました。平成7年大法廷決定において、概して言えば、憲法24条1項と民法739条1項に基づき法律婚という法制度が採用されていることを前提に、その「結果として」、婚姻関係のある夫婦とその嫡出子が、憲法上の1ユニットを形成し「婚姻関係から出生した嫡出子と婚姻外の関係から出生した非嫡出子との区別が生」ずるのはやむを得ず、本件規定は「法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される」から「本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一としたことが、右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法一四条一項に反するものとはいえない」という論理展開です。以上の合憲判決に対して、非嫡出子法定相続分差別事件判決(最大決平成25・9・4)は結論において違憲ですが、平成7年大法廷決定の「婚姻関係のある夫婦とその嫡出子が、憲法上の1ユニットであるので『嫡出子と嫡出でない子との間に差異が生ずるのはやむを得ず』」という部分が修正されているのかと言えばそうではありません。この論理展開を維持しつつも、「家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきた」といった時代の趨勢によって、家という1ユニットの構造に個の尊重という別の視点も加えることで、「遅くとも平成13年7月当時において」本件規定の「合理的な根拠は失われていた」という結論を導き出しているのです。このような判例の読み解きは時代とともに移り変わる価値観をもって、平等原則適合性の判断をすべき事案を解決するときに大いに参考になります。このような気付きは、判例の規範部分だけをつまみ食いのように丸暗記するような学習を積み重ねても得られるものではありません。自分で判決文を読み、自分なりの考えを教員に聞いていただき、議論を深めることでこそ得られる気付きであると思います。このような授業を各科目いくつも受けることによって、司法試験の論文答案作成上も、判例の根底を流れる体系的、歴史的な問題意識まで考慮に入れることを目指せるようになりました。
それは、小規模校のデメリットと言えるでしょう。しかし、私は、法科大学院での3年間は、司法試験の合格のために勉強に打ち込むと決めていたので、学生同士の飲み会等の付き合いがなかったことは、むしろ良かったと思っています。そして、学生数が少なく、学習方法についても学生同士で情報交換を活発にできなかったという面もあります。私が在校生だった頃は、たしか正規授業が一日当たり平均2コマから3コマあったように思います。一コマが90分(令和6年度から一コマ105分となるようです)、正規授業の予習復習に各60分ずつ使うとすれば、平日は正規授業関連で一日7時間から10時間程度使うことになります。その他、司法試験の学習に使える時間は、平日の3時間から5時間程度と休日ということになろうかと思います。この時間の使い方について、私は学校から何かの活動に参加するように求められたことは一度もありません。課外講座はありましたが、2年生になっても本試験の論文過去問演習をやらせてもらえず、インプットや簡単な事例問題演習を内容とするものだったので学習が進んでいる者にとっては物足りないものでしたし、本試験の論文過去問演習をやらないと司法試験最終合格に必要な課題が見つからないので私には不十分な内容でした。そこで私は、自分で本試験の論文過去問演習にいち早く着手し、自分で自分の課題を抽出し、自分に合った学習方法を見つけるべく努めました。本学は、このように正規授業以外の時間を自由に使うことができました。私にとっては、他人流の学習方法に惑わされることがなく、マイペースに学習できる本学の環境はとてもありがたかったです。本学の特徴はメリット・デメリットが裏腹ではありますが、教員との深い議論による学問的喜びを求めつつ、自分のペースで学習を淡々と進めることができるような方には、とても向いているのではないかと思います。