学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

戦後東アジアにおける国際秩序(2000-2001年度)

 

構成員
代表研究員 磯崎典代
研究員 井上寿一 砂田一郎 村主道美 福本健太郎
客員研究員 若林正丈 若畑省二
(1)研究の目的・意義

米ソ冷戦の終結が欧州において急激な変化をもたらしたのに比べ、中国と台湾、北朝鮮と韓国という二つの分断国家を抱える東アジアにおいてはポスト冷戦への移行は遅れ、新たな国際秩序形成には不安定な要因を抱えたままの状況である。その理由として、第一に、東アジアの地域構成国が政治体制、経済水準、文化風土などあらゆる点で多様であり、こうした多様さ故に、欧州のようにイデオロギーに主導された二大陣営の形成が困難であったこと、第二に、東アジアの冷戦構造は、欧州から持ち込まれた東西対決が地域固有の歴史状況と結びつく形で形成され、分断国家形成の過程も欧州とは大きく異なっていることなど、この地域の冷戦構造が特有の歴史的な背景をもって形成されたことが指摘される。それ故、東アジアの国際秩序を考察するためには、地域各国の視点から、いかにして安定した国内の体制と国際関係を構築しようとしたかを考察する必要がある。
このような問題意識から、冷戦期の東アジアの国際秩序がいかにして形成され、現在どう変化しつつあるかを、地域各国の内政と外交に焦点をあてて考察することを研究の目的とする。この域内の秩序の形成と変遷は上記のように歴史・文化に大きく規定されており、「秩序」という規範の形成を対象とするこの研究は、東洋文化研究所のプロジェクトとしても適切なものと思われる。さらに、この研究は、この地域の今後の新しい国際秩序がどのように展望されるかを考察する手がかりとなる意義を持っている。

(2)研究内容・方法

研究の目的を達成するため、大きく三つの側面からのアプローチを試みる。
第一に、地域各国が戦後どのように国内体制を構築して国際秩序を形成しようとしたか、それぞれの視点から考察する。反植民地闘争を経て建国・分裂した中国と台湾、大日本帝国の植民地から独立する過程で南北に分断された北朝鮮と韓国、敗戦・占領を経た日本、というように異なる背景を持つ各国が、戦後どのようにして安定した国内構造を構築し、域内国とどのような関係を結び、冷戦の影響下で域内にどんな秩序を作ろうとしてきたかを検討する。
第二に、域内各国のみならず、この地域に大きな影響を及ぼした超大国の対アジア政策も検討する。とりわけ、アメリカのアジア政策は重要であり、アメリカが東アジアの情勢をどう認識してどんな政策を展開したのか、アメリカの政策がこの地域の秩序形成にどのような影響を与えたのかを、相互関係の中で捉えることとする。
第三に、この地域の国際関係を、より広い国際政治の文脈からも検討する。また、他の地域で「同時代的」に起こっていた地域秩序をめぐる出来事が、東アジアの秩序形成にいかなる影響を与えたのかについても考察する。
以上のような観点から、域内各国を専門とする研究者、アメリカ政治研究者、国際政治研究者の共同研究によって、東アジアの国際秩序の形成と変遷を総合的に研究する方法を採ることにする。また、構成メンバーのみでカバーできない分野に関しては専門研究者を講師に招いた研究会で捕捉する。

(3)研究の成果

若林正丈「戦後台湾遷占者国家における「外省人」―党国体制下の多重族群社会再編試論・その1―」(『東洋文化研究』5号、2003)
若畑省二「民主化前韓国における「与村野都」の構造」(『東洋文化研究』6号、2004)
福元健太郎「 安保・憲法・アジア―与党内対立と与野党間対立―」(『東洋文化研究』6号、2004)

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