学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

中国前近代の知識人の存在形態(2001-2002年度)

 

構成員
代表研究員 大澤顯浩(2001) 武内房司(2002)
研究員 馬淵昌也 丸川哲史 武内房司(2001) 大澤顯浩(2002) 高柳信夫(2002)
客員研究員 上田信 黨武彦 森由利亜
(1)研究の目的・意義

中国は現在、近代化の過程にあって経済発展を遂げつつあり、将来には東アジアの重要な大国となるだろう。しかし、一方では民族・人権など様々な局面では我々には理解しがたい対応を取ることもある。そこに、人民共和国になってもなお確固として変化しない封建性を見るか否かは別にしても、前近代の中国社会の持つ個性は自ずと現代の中国社会にも受け継がれており、それを中国文明の持つある意味での「厚み」ないし「根強さ」ということもできる。それは、他者が中国を見るときに見落とされがちな点であると同時に、また他者が中国を理解するときには無視できないものでもある。前近代までの中国社会の個性を考える際に重要なことは、儒教が社会的統合の原理になっていたこともあって、知識人が大きな役割を果たしていたことである。そこで、まずは知識人の具体的な存在形態を考えることで中国のもつ個性の理解へと結びつけたい。

(2)研究内容・方法

中国の根底を理解するには、特定の著名人ではなくごく一般的な人々の生活や日常の感覚を解明することこそが重要であると考えられる。そこで、前近代の日記や自伝的史料に見られる当時の社会・風俗・観念や心性を見なおしていきたい。実際の資料としては明末清初期の陳舜系『乱離見聞録』をとりあげ、歴史・思想・宗教等の各方面の専門家を集合して、具体的な形で検討していきたい。『乱離見聞録』の撰者の陳舜系は広東のごく一般的な知識人で、大地主や高級官僚でもなく、ただ明末清初期の動乱の波に翻弄された人物である。そこに表された当時の社会の諸相は、前近代中国の実態を明らかにすることに役立つことであろう。

(3)研究の成果

大澤顯浩「啓蒙と挙業のあいだ―伝統中国における知識の階層性―」(『東洋文化研究』7号、2005)

ページの先頭へ