学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

A07-4 産業別・企業別視点からみた日本と韓国の生産性比較(2007-2008年度)

 

構成員
代表研究員 宮川努
研究員 細野薫
客員研究員 深尾京司 乾友彦 権赫旭
(1)研究の目的・意義

日本は2005年以降人口が減少しており、この人口減少下で経済的な豊かさを維持していくためには、生産性の上昇を図る方策が不可欠とされている。一方韓国でも日本以上に出生率の低下が深刻になっており、日本と同様の課題が議論され始めている。本研究は、両国のこれまでの生産性向上の要因を産業・企業レベルにおいて観察することにより、お互いの長所を両国の生産性向上策の中に生かしていくことができる。また昨今議論されている東アジアにおける経済連携において、日本と韓国は、中国とともに中心的な役割を果たすことが期待されているが、財・サービスだけでなく資本や労働の移動に影響を及ぼすのは、両国の各産業の生産性格差である。本研究は、両国の経済関係がより密接になった時点において、両国がどのような産業構造をとるのかを考える上でも有益となる。
代表研究員である宮川は、1999年以来深尾一橋大学経済研究所教授と共同で、JIP(Japan Industry Productivity)Databaseを作成し、2006年6月にその2006年版を完成させている。このデータベースは、108の産業について、1970年から2002年までの生産性を測定するためのデータが収録されている(現在は2006年まで更新)。一方表ソウル国立大学教授を中心として同様のデータベースが作成されており、この2つのデータベースは、オランダ・グロニンゲン大学のvan Ark教授が主導するEUKLEMSプロジェクト(EU諸国の産業別データベース)の規準にしたがって、産業分類規準や生産要素の推計方法等を統一する方向で作業が進んでいる。我々は2007年度から2008年度にかけてこの作業を行い、それは共同成果として、EUKLEMSプロジェクトから出版される書物に掲載される予定である。
また客員研究員の深尾教授、乾教授、権講師は、日本経済研究センターの支援を受け、ソウル大学と共同で、すでに日本と韓国の上場企業についてミクロレベルの生産性比較を行っており、産業・企業レベルにおいて日韓の生産性比較を行えるデータが揃っている。

(2)研究内容・方法

産業レベルでの日韓の生産性比較については、両国のデータは完成しているものの、生産性水準を比較するための購買力平価が計算されていない。我々はこのデータを推計することにより、産業レベルでの日韓の生産性水準の比較を試みる。
ミクロレベルの生産性比較については、かなりのデータが集まっているが、以前資本データを中心として、日韓の計測方法について違いがみられる。この日韓の計測方法の違いについて修正を行ったうえで、再比較を試みたい。

(3)研究の成果

『日本と韓国における、全要素生産性、ICTの貢献、及び資源再配分の効果(調査研究報告No.55)』(学習院大学東洋文化研究所、2009年)