学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

A08-1 インドネシアの司法制度(2008-2009年度)

構成員
代表研究員 草野芳郎
研究員 長谷部由起子 佐瀬裕史
客員研究員 角田多真紀
(1)研究の目的・意義

①インドネシアは人口2億4000万人(世界第4位)を要するASEAN最大の国で、日本との関係も深く、日本のODAの累積供与額は世界第1位である。300あまりの民族集団と約250以上の言語に分かれた多民族国家である。国民の90%がイスラム教徒で、イスラム教徒の人口では世界第1位の国である。人種、宗教、風土、文化、国民性などが全く異なるが、法制度面においても立法、司法、行政の3権以外に軍とイスラム教が力を持っている点が日本と大きく異なっている。これだけの差がある国の司法制度を研究することは比較法の観点からだけでも有益である。これ以外にも、現在インドネシアの司法制度を研究することは、インドネシアの経済や日本政府が行う後記の法支援のためにも有益である。
②インドネシアの人口や領土規模から考えると、インドネシアの司法制度の現状及び現在行われている司法改革の状況を比較研究することは、日本の司法制度の為に有益であるだけでなく、インドネシアにかかわる諸外国の為にも有益であると思われる。また、現在、インドネシア経済が停滞している原因の1つに法システムの未整備および不公正な法の運用が、諸外国から指摘されている。経済の発展には他国が安心してインドネシアに投資できる環境が整備されなければならないが、そのためには法システムを整備し、公正に法を運用することが不可欠だからである。
③インドネシアにおいても、司法改革が現在進行中であり、2002年度から日本政府も法支援をしている。そして、2007年3月から「インドネシア和解・調停強化支援プロジェクト」が開始された。代表研究員の草野は、専門家として、上記プロジェクトにおいて規則の改正の助言や技術指導に当たることになった。職務上、インドネシア側の関係者(裁判所、弁護士、大学、ADR機関)と接触することになるが、上記プロジェクトを成功させるためには、インドネシアの司法制度を本格的に研究し、理解することが不可欠となっている。
④現在、日本とインドネシア間の研究者に接点がなく、インドネシアの司法制度を研究し、日本の研究者とインドネシアの研究者との間で交流できる道を開くことは、本研究を越えて、日本の学会にとっても意義のあることだと考える。

(2)研究内容・方法

以下の項目について文献調査と関係者に対するインタビュー調査を行う。
①インドネシアの司法制度の現況
②現在進行中のインドネシアの司法改革の状況および問題点
③日本政府の法支援の状況および問題点、インドネシアの和解調停強化のためのワーキンググループの状況
④法支援のありかた
⑤他のドナーの状況

(3)研究の成果

草野芳郎「日本のADR(和解・調停)のアジアへの発信~インドネシア和解・調停制度強化支援プロジェクトの実施について」(『東洋文化研究』13号、2011.3)
角田多真紀「インドネシア法整備支援和解・調停制度強化支援プロジェクトの概要~現地滞在長期専門家の視点から~」(『東洋文化研究』13号、2011.3)

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