学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

A11-1 近現代日本・ヴェトナム関係に関するアーカイブズ的研究(2011-2012年度)

 

構成員
代表研究員 保坂裕興
研究員 安藤正人 武内房司
客員研究員 宮沢千尋 高津茂 牧野元紀 加藤聖文
(1)研究の目的・意義

本研究は近代に入り緊密の度を増していった日本・ヴェトナム関係を、同時代資料やオーラルヒストリーをつうじて総合的に明らかにしようとするものである。2009~ 2010年度にかけて実施された一般研究プロジェクト「戦時期アジア研究とアーカイブズ」においては、戦中・戦後期にヴェトナムに深く関わった西川寛生氏の残した関係文書の整理と研究を進めたが、その過程でほかにも多くの未公刊文書が存在しかつ関係者がなお多数ご存命であることなどが明らかとなった。そこで、こうした成果を踏まえつつ新プロジェクトにおいては、散逸の危機にあるアーカイブズの収集・整理にあたりながら、新たに、戦中・戦後期の日本・ヴェトナム関係に関与した人々に対するインタビューを実施し、そうしたオーラルヒストリーを将来の近現代日本・ヴェトナム関係史研究のための基礎資料として活用する条件を提供しいてくことを目指したい。年々関係者は減少しており、こうした歴史記録の収集は焦眉の課題であり、アーカイブズとしてそうした関係者の記憶を記録に残していくことは、将来の日越関係史研究、ひいては東アジア近現代史研究にも大きく寄与しうるものと期待される。

(2)研究内容・方法

(1)今回のプロジェクトにおいてとくに重視するのは、とくに関係者へのインタビューである。具体的には、1911年頃、弱冠15歳で天草からヴェトナムにわたり徒手空拳から事業をたちあげた松下光広によって設立され、ヴェトナム民族運動にも深く関わった大南公司、さらにまた、戦時期のサイゴン(現、ホーチミン市)に設立された南洋学院、戦後、 日本・ヴェトナム賠償問題交渉などに関与した日本・ベトナム協会、などの関係者を予定している。戦中・戦後期の日本・ヴェトナム関係には顕著な連続性が見られ、系統的に関係者へのインテンシブな聞き取りを行うことでよりまとまった歴史記録を収集することができるものと予想される。
(2)これと並行して、参加メンバーは、 日本・ヴェトナム・フランス・台湾各地に残るアーカイブズを調査し、上記インタビューによって得られた知見の歴史的な背景を明らかにしていく。
(3)ヴェトナムやフランス・アメリカ等で積極的に日本・ヴェトナム関係史を推進している海外の研究者を招聘し、共同研究会ないしはシンポジウムを開催する。

(3)研究の成果

武内房司・宮沢千尋編『西川寛生「サイゴン日記」』風響社、2015年2月