学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

A12-2 「制度改革」をめぐる政治の日韓比較(2012-2013年度)

 

構成員
代表研究員 磯崎典世
研究員 野中尚人
客員研究員 村松岐夫 大西裕
(1)研究の目的・意義

本研究の目的は、日韓両国の「制度改革をめぐる政治」を比較研究し、①改革の内容の比較、のみならず、②それを規定した政策過程の相違を、日韓の政治構造の比較も含めて明らかにすること、および、③改革の経過・影響などに関する評価も行うことである。
1980年代以降の日本政治のキーワードは「改革」だとも言われ、とりわけ、1990年代後半以降、「地方分権改革」「中央省庁再編」「財政構造改革」「金融改革」「公務員制度改革」などが相次いで実施されてきたが、これは決して日本に特有の現象ではない。それぞれ固有の国内要因に規定されながらも、多くの国々が、グローバリゼーションの進展の下で、もはや有効に機能しなくなった既存の国内制度の改革に迫られたからである。韓国においても、同じような「改革」が実施されている。日韓両国の制度は、例えば、従来の公務員制度のように非常に類似したものも多いが、この「改革」の過程と結果は、かなり異なるものとなっている。なぜ、どのように「改革」の相違が生じたのか。「改革をめぐる政治」を比較することで、上記の目的を達成すると同時に、改革の背景にあるとされるグローバリゼーションとは何かという問題にも迫りたい。
ここで留意しているのが、現在の改革が、コア・エグゼクテイヴの構造変容のもとでなされているという点である。この構造変容は、政権交代(韓国では1998年と2008年、日本では2009年)が契機となった部分もあるが、必ずしもそれのみに還元されるわけではなく、何がどのように変化しているかということ自体、そしてその変化が政治過程にどんな影響を与えているのかという点が、解明される必要がある。そのことによって、日韓の改革をめぐる政治過程やその帰結が、何に規定されているのかを明らかにすることが可能となる。
以上のような研究は、単なる日韓両国の改革内容の比較に留まらず、その違いの要因を解明することで、改革の推進要因、さらにはそれを規定している両国政治構造の違いを明らかにする意義がある。このことは、今後の改革のあり方・方向性を検討する際にも、有益な視点を提供することが期待できる。

(2)研究内容・方法

本研究は、日韓における「改革をめぐる政治」を比較研究することである。上述のように、「改革」自体の比較ではなく、改革が争点化し、具体的な内容が決定され、遂行に至る政治過程を比較するものであり、その背景にある両国のコア・エグゼクティヴ自体の構造変容の解明も視野に入れている。さらには、改革の実施によって、何がどう変わったのかという点も明らかにして、その「改革」の影響および評価も検討することを目指しており、改革という対応を求めているグローバルレベルの問題を把握し、それへの対応を根本的に考察する。こうした問題に対して政治学と行政学の両分野からの検討を行い、共同研究のメリットを生かして進めていく。
研究方法は、以下の通りである。
メンバーは、日本と韓国をそれぞれ専門とする、政治学・行政学の研究者で構成されている。よって、研究は、日韓それぞれ同じ事例を取り上げて個別に調査を進め、最後に総合的な比較を行う形で進める予定である。分析方法については各自の専門分野で設定するが、適宜、研究会などで進展具合を報告し、比較の視点を設定したうえで、各自の調査結果から日韓の比較が可能な形になるよう調整を行う。とりわけ、同じ事例を扱っているメンバーは、連絡を密にする。
また、重要なインタビュー調査は、最後の比較検討のためにも、メンバー多数が参加する形で行う。
事例としては、「公務員制度改革」と「地方分権改革」を考えており、後者においては、近年注目されている地方議会の動向も研究対象となる。ただし、会合の結果、もしくは研究の進行の過程でよりよい事例があれば、変更・追加も行う。

(3)研究の成果

磯崎典世「グローバル化時代の成長と福祉をめぐる韓国政治」(『東洋文化研究』17号、2015)
野中尚人「日本の議会における時間リソースと審議パターン—国会・高知県議会とフランス国民議会の比較を通じて—」(『東洋文化研究』17号、2015)
大西裕「委縮した社会民主主義—韓国福祉国家の市民社会的基盤」(『東洋文化研究』17号、2015)